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2021-05-21

【ボクシング】強打の中嶋が判定で王座獲得。千葉の奮闘許し「倒したかった…」

中嶋の左ストレートが千葉を襲う

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 井上拓真(25歳=大橋)の返上により、空位となっていた東洋太平洋バンタム級王座決定戦12回戦が21日、東京・後楽園ホールで行われ、5位の中嶋一輝(27歳=大橋)が10位・千葉開(28歳=横浜光)に116対112、117対111、119対109の3ー0判定勝ち。新チャンピオンとなった。

 両目上にガーゼを貼って会見に現われた中嶋は、まるで敗者のようにうな垂れていた。
「倒して勝ちたかった」。消え入るような小さな声が、その心中をさらに表す。

 スタンスを広く取り、後ろ重心のサウスポースタイル。たっぷりと貯めたウェイトを、左ストレートとともに一気に吐き出す。それが国内バンタム級屈指の強打を生み出すのだが、この日は、やや不発に終わってしまった。「相手がタフだった」(中嶋)。それも一理あるが、“強い左を防ぐ”その想定の下に準備してきた千葉の対策が功を奏した。


 中嶋は、前の手(右)を大きく上下に揺らしてリズムと間合いを計り、左を打つと見せかけてプレッシャーをかけていく。序盤4ラウンドは、その大砲をほとんど打ち込まなかった。

 一見、プレスをかけられていると見える千葉だが、ロープを背負い、サイドへすり抜けていく動きには、余裕が感じられた。そして時折放たれる中嶋の左にはよく反応した。中嶋が手数を増やさないことで、タイミングとリズムを体に入れ、対応していった。

中嶋の強打に臆することなく、左を打ち込んでいく千葉
中嶋の強打に臆することなく、左を打ち込んでいく千葉

 千葉は右を伸ばして左フックを巻き込む。いわゆるリードブローを放たない中嶋の右腕の上に。威力はなかったが、これをコツコツと集められた中嶋は、嫌な気分になったろう。内、外と左足を出し入れする千葉の足に、右足を再三絡められてキャンバスに倒れ込んだのも、リズムを崩す要因となった。

 だが中嶋は、左ストレートと左ボディアッパーを徐々にハードヒットしていく。右を打ちながら飛び込んでくる千葉に、右フックを引っかける。「(千葉の)距離に惑わされた」という中嶋だが、強打の効果で常にポイントをピックアップ。ボディブローでダメージを少しずつ蓄積させていった。

 中嶋同様、これが初の王座挑戦となった千葉は、しかし粘り、奮闘する。10ラウンドには逆転KO寸前の猛攻も見せた。中嶋にロープを背負わせ、右ストレートから右アッパーをクリーンヒット。ガクっとヒザを折った中嶋に、連打を降り注ぐ。「あと一発貰っていたら危なかった」と大橋秀行会長に言わしめるほど。だがその一撃を決められない。中嶋も単打だが、左を上下に差し込んで跳ね返した。

 ともにダメージと疲労の色濃い状態のまま打ち合う。双方、最後の最後までダウンは拒否。中嶋は左目上をパンチで、右目上をバッティングでカット。千葉は左目下を腫れあがらせた激戦となった。

「あと1年は防衛戦」と大橋会長。自他ともに“KO”が命題の中嶋だが、これほどの苦境をしのいだこと、右リードの使い方、前後ステップなど課題も浮き彫りになったことは収穫だろう。
 大方の予想を覆し、大奮闘を見せた千葉は悔しい敗戦となったが、株を上げた。ステップをベースとした柔軟な戦い方は大きな武器だ。そのレベルアップが成れば、ますます楽しみだ。

 中嶋の戦績は11戦10勝(8KO)1分。千葉の戦績は15戦13勝(8KO)2敗。

初のベルトを獲得した中嶋。「これはもちろん通過点」
初のベルトを獲得した中嶋。「これはもちろん通過点」

“ミライモンスター”松本が鮮やか初回KO/保田がライト級ランカー対決制す

松本の鮮やかな右カウンター

松本の鮮やかな右カウンター

松本は、タフな室田を2度もキャンバスに這わせて初回で終えた

松本は、タフな室田を2度もキャンバスに這わせて初回で終えた

 フェザー級の“ミライモンスター”松本圭佑(20歳=大橋)が、プロ3戦目で真価を発揮した。デビュー戦、2戦目とも初回に一発もらってヒヤリとした松本。いずれも強気が招いた不覚だったが、この日は開始早々スピード、威力に満ちた左を突いて、室田拡夢(25歳=T&T )につけ入る隙を与えない。
 室田は元日本王者の岡田誠一(大橋)と引き分けたパワフルなファイター。松本にとってはプロ入り以来最強の相手だったが、打ち返してくるところに強烈な右を合わせて横転させると、再開後も右を爆発させてフィニッシュした。
「危ないシーンがなくて、ホッとしています」と、安堵の笑みを見せた松本。「先輩の井上尚弥さんのように、自分もいつかモンスターと呼ばれる日が来ることを目指します」と、未来に向けて目を輝かせた。

保田の長い右リードがヒット
保田の長い右リードがヒット。高田は保田の長い距離を崩せなかった

 元国体王者のサウスポー、17位の保田克也(29歳=大橋)と、2戦連続初回KO男の9位・高田朋城(27歳=ワールドスポーツ)による日本ライト級ランカー対決(8回戦)は、慎重に距離を取る保田が、高田に強打を当てさせず、4回にワンツーで右目上を切り裂いて5回2分12秒、レフェリーストップのTKO勝ち。ショート連打が武器の高田だが、右ロングを強引に振って距離を潰しにかかり、それをかわされてしまった。保田の慎重さは、彼のストロングポイントであり、マイナスをも併せ持つ。独特の角度で放つフリッカージャブ、相手の入り際に突き刺す左ボディカウンターをもっと多用すれば、よりインパクトある戦い方ができただろう。

文_本間 暁(中嶋対千葉、保田対高田)、藤木邦昭(松本対室田) 写真_菊田義久

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