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2021-06-22

【陸上】男子“サンショー”三浦龍司の「世界で戦うためのこだわり」

大学入学以降、勝負、記録の両面で結果を残し続ける三浦 写真/田中慎一郎(陸上競技マガジン)

第105回日本選手権(ヤンマースタジアム長居・大阪)における注目選手の一人として挙げられるのが男子3000m障害の三浦龍司(順天堂大2年)だ。高校時代から止まるところを知らないその成長曲線は、真っすぐに東京五輪へと向かっている。

 男子3000m障害でただひとり、東京五輪参加標準記録(8分22秒00)を突破している日本記録保持者だ。今回の日本選手権では3位以内で東京五輪代表が内定する。大学入学以来、トラックでは日本人に負けなしという実績を考えても、三浦龍司(順大2年)が日の丸を胸につける可能性は極めて高いといえる。

「タイムを気にしないで勝負に徹することができるので気持ち的には楽な面もあります。後半に上げる展開でも前半からグイグイいっても対応できるので、勝負には自信があります。日本選手権ですから出るからには優勝を目指します」

 8分17秒46の日本記録を樹立した5月9日の東京五輪テストイベント、「READY STEADY TOKYO」ではスタート直後から先頭に立ち、集団を引いて見せた。これはこれまでの三浦が見せてこなかった展開だ。1000mを2分45秒9のハイペースを自ら作ると、課題としていた2000mからも途中、大学の先輩にあたるリオデジャネイロ五輪代表、塩尻和也(富士通)に一時、前を譲る形でペースを預け、この1000mのラップの落ち込みを最小限に抑えた。そして2000mを前に再度、先頭に立ち、残り2周からの2周から切り替えての段階的なスパートでラスト1000mは2分40秒7にまとめてみせた。19年ぶりの日本記録樹立という快挙はもちろんだが、三浦が序盤からほぼ自分でレースを作り、勝ち切った強さこそ、「勝負には自信がある」とのコメントの裏付けだろう。

 ちなみにテスト大会の11日後に行われた関東インカレ1500m、5000mでは集団の流れに乗ってレースを進め、どちらもラスト200mを切ってからのスプリント力も発揮している。どんな展開にも対応する力を備え、かつ勝ち方のバリエーションが増えたことは明らかだが、「それぞれにレースの中で適した勝負の仕方ができた」と三浦はこともなげに振り返る。

 この冬はクロスカントリーでのファルトレク(ペースの強弱を交互につけながら行う走練習)を中心に脚筋力を強化し、またスピード持久力の強化にも成功。冬季に右足ふくらはぎを故障し、1カ月ほど強度を上げた練習ができなかったが、その間も下肢の筋力トレーニングに励んできた。三浦自身は“瞬発力の向上”を今季の最大の変化に上げる。

「自分はスパートをかける時、ピッチではなく、ストライドで引き離すタイプ。ただストライドは疲れている後半は間延びしてしまいがちです。しかし脚筋力が上がってフォームにしっかり(力を)乗せていける実感がありますので、一歩の差が大きくなったと思います。1、2歩でスッと上げていけるようになりました」

 それがロングでもショートでもスパートの切れ味につながり、勝負を決める一太刀になっている。

 日本選手権は確実に3位以内を取らなければならない大会。だがその先で世界と戦うこともすでに視野に入れている。課題は2000mからの走りだ。

「世界レベルの大会ではここからのペースアップのキレが違いますので、引き続き脚筋力の強化とスピード持久力をつけていきたいです。あとはハードリングですね。障害を足をかけずに跳んでいけるように目指します」

 障害に足をかけないハードリングはスピードを殺さずに越えていけるメリットがあるものの、レースを通して続けるにはスタミナも必要だ。今のところ三浦もレースのラストでしか使っていないが、東京五輪に向けてはそれで最初から押し切れる走りにチャレンジしたいと考えている。

 目前に迫った日本選手権。今の調子は良くもなく、悪くもないという。5月からずっとこの状態で安定していることがいいのだと三浦はポジティブに考えている。

「あとはいいプレッシャーを感じながら、緊張感を持つことだけだと思っています。この大会にかける思いをしっかり作り、心を整えていくだけです」

 日本選手権男子3000m障害決勝は6月26日、16時05分スタート。19歳の世界への挑戦はここからスタートする。

文/加藤康博

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