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2021-06-23

【ソフトボール】 「めちゃくちゃ厳しく教育しています(笑)」東京五輪日本代表・峰幸代×後藤希友対談(1)

所属のトヨタ自動車でも師弟関係にある峰幸代(左)と後藤希友(写真/福地和男、斎藤豊)

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五輪でのソフトボール競技は2008年の北京大会を最後に正式種目から除外されていたが、2020年東京五輪で追加種目としての採用が決まり、強化を進めてきた。ソフトボール・マガジンWEBでは、3大会ぶりとなる東京五輪で金メダル獲得を目指す15名の選手たちを、順々に紹介していく。

峰 幸代(トヨタ自動車/捕手)
後藤希友(トヨタ自動車/投手)
師弟バッテリーで世界に挑戦(1)

2008年の北京五輪に20歳で出場し、再び東京五輪日本代表候補となった峰。チーム最年少の20歳で初めての東京五輪に挑むことになった後藤。トヨタ自動車でもバッテリーを組み、先輩である峰が3年目の後藤の教育係も務めているという。そんな師弟コンビの息の合った対談をお届けする。(取材は3月31日、全文はソフトボール・マガジン6月号掲載)

アドバイスでメンタル面が成長

──対談ということで、まずはお互いについて紹介してください。

後藤 最初はオリンピックの金メダリストという印象が強かったので、近づける存在じゃないと思っていたんです。でもいざトヨタに入ってみたら、イメージと逆というか、チームのお母さん的な存在で、ソフトボールの面だけじゃなくいろいろなことを教わっています。あと、お菓子作りがすごく上手で、みんなにバレンタインのチョコを作ってきてくれたこともありました。めちゃめちゃおいしかったです。

 後藤は、色が黒くて背も高いし、マウンドでは投げっぷりが良くて、すごくかっこいいんですけど、中身はすごく慌てんぼうさんで集中力がない(笑)。でも、ここっていう本当に大事な場面で最強の集中力を発揮して、持っているすべての力を出し切ることができる。そのギャップが激しいですね。

──峰選手は後藤選手にアドバイスを送ることが多いんですか。

 私は後藤に対してはめちゃくちゃ厳しく教育しています(笑)。チームを代表する投手ですし、国を代表する投手にもなったので、「こんなんじゃダメだぞ」と毎回口うるさく言っています。

──どんなことについてでしょうか。

後藤 プレーのことが多いですけど、試合の前の考え方や取り組み方についてもアドバイスをいただいています。私は気持ちの面であまり強くないので、打たれるとすぐにショボーンとなって、また次も打たれてしまうことが多くて。去年は知り合いや同世代の選手に打たれることも結構ありました。そういうときにどうするべきかなどについて教えてもらっています。

──同世代の若い選手に対しては油断してしまうということですか。

 逆です。打たれたくなさ過ぎて力が入り過ぎちゃう。気を抜いているわけではないんです。

後藤 意識し過ぎて、力み過ぎて、甘いボールが入ってしまうことが多かった。その都度、峰さんに「またやってる」と注意してもらっていました。

──峰選手が後藤選手に今教えたいことは気持ちを安定させることですか。

 そこはうるさく言ってきたので、だいぶ落ち着いて(笑)、成長も見えてきました。去年はコンディショニングがうまくできずに悩みながら投げていたことが多くて、勝ってはいても気持ちよくガンガン投げて抑えられたゲームはあまりなかったんですけど、今年はどうすれば調子が良く試合に臨めるかを考えているようですし、去年と同じことをしてはいけないんだという意識も高くなっていると感じています。今は技術的な部分でもっと高いところを目指してほしいので、投球の質を高めるといった話をすることが増えています。

後藤 去年はこんなに悩むことあるのかというくらい悩んでいましたね。投げていて勝てると感じる試合がなかった。打たれて学んだシーズンでした。

──悩みはどういうことについて?

後藤 1年目は私のデータもない状態で、好きなボールを思い切り投げられていました。でも去年はモニカ(・アボット)のいない中での試合で、チームとしても決勝トーナメントに行かなければならなかったので、不安を抱いていた部分もあって気持ちが安定していなかったんです。なので、モニカが合流したときはホッとしました。

──後藤選手はアボット選手のすごさをどのようなところに感じていますか。

後藤 ストイックさがすごい。練習に取り組む姿勢もそうですし、試合前の気持ちのつくり方、打たれたときの気持ちの切り替えなど、すべて安定しているから、それが自信につながっている。モニカがいることで私にはそういった部分がないと感じることができましたし、彼女の姿から学んでいます。

──チームではアボット選手、代表では上野由岐子選手(ビックカメラ高崎)と、一国を代表するエースを身近に見てきていますが、エースとはどんな存在だと思いますか。

後藤 周りの選手からの絶対的な信頼がある投手。「この人が投げたら大丈夫」と思えるような人がエースにふさわしいと思います。

──峰選手はアボット選手、上野選手ともにチームでバッテリーを組んだ経験がありますが、お二人の特徴はそれぞれどんなところでしょうか。

 試合に向けてしっかりと準備をするところは共通していますけど、アボットは自分自身の良いものをしっかりコンディショニングして試合に出していく練習の仕方をするんですけど、上野さんはそのときのコンディションに合わせてどういう投球をするかを考えるという点に違いがあると思います。

──峰選手はエースの素質をどのようなものだと考えていますか。

 大事な試合で勝つことですね。いくら大事な試合を任されても、勝てなければそこまでの投手になってしまう。そこで勝ち切れる強いものを持っているかどうか。エース対決でさらに上をいく選手というのは、ほかの投手とは違う芯の強さを持っていると思います。あとはコンディションが悪くてもチームを勝たせられる投手であること。コンディションが良くて抑えるのは当然なので、悪い状態でも良くないなりにゲームをつくるのが真のエースだと思います。ね、後藤?

後藤 ハイ!


「正直に言って勝つ気まんまんです!」東京五輪日本代表・峰幸代×後藤希友対談(2)
https://www.bbm-japan.com/article/detail/20699


【峰幸代PROFILE】
みね・ゆきよ/ 1988年1月26日、福岡県生まれ。165cm65kg。右投右打。捕手。木更津総合高-ルネサス(2006 ~ 14年)-トヨタ自動車(16年~)。08年北京五輪では決勝トーナメント3試合で捕手を務め金メダルに貢献。10年、12年、14年の世界選手権、10年、14年のアジア大会にも出場。今季リーグ成績(5節終了時点):11試合、28打席、5安打、0本塁打、2打点、打撃率.294

【後藤希友PROFILE】
ごとう・みう/ 2001年3月2日、愛知県生まれ。174cm68kg。左投左打。投手。東海学園高-トヨタ自動車(2019年~)。19年のU19ワールドカップに出場し準優勝。同年からTOP代表に選出される。日本リーグでは20年に新人賞を獲得。今季リーグ成績(5節終了時点):9試合、41回2/3、3勝2敗、33奪三振、自責点8、防御率1.34

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