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2021-06-24

【ソフトボール】 「正直に言って勝つ気まんまんです!」東京五輪日本代表・峰幸代×後藤希友対談(2)

北京五輪以来2度目の五輪となる峰幸代(左)と代表最年少として初出場を果たす後藤希友(写真/斎藤豊)

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五輪でのソフトボール競技は2008年の北京大会を最後に正式種目から除外されていたが、2020年東京五輪で追加種目としての採用が決まり、強化を進めてきた。ソフトボール・マガジンWEBでは、3大会ぶりとなる東京五輪で金メダル獲得を目指す15名の選手たちを、順々に紹介していく。

峰 幸代(トヨタ自動車/捕手)
後藤希友(トヨタ自動車/投手)
師弟バッテリーで世界に挑戦(2)

2008年の北京五輪に20歳で出場し、再び東京五輪日本代表候補となった峰。チーム最年少の20歳で初めての東京五輪に挑むことになった後藤。トヨタ自動車でもバッテリーを組み、先輩である峰が3年目の後藤の教育係も務めているという。そんな師弟コンビの息の合った対談をお届けする。(取材は3月31日、全文はソフトボール・マガジン6月号掲載)

「めちゃくちゃ厳しく教育しています(笑)」東京五輪日本代表・峰幸代×後藤希友対談(1)
https://www.bbm-japan.com/article/detail/20696


ライバル・アボットとは「お互い五輪を楽しもう」

──チームでの日本代表候補発表記者会見にて、峰選手は五輪について「怖い者知らず精神じゃないと立っていられなかった」と話されていましたね。

 やっぱり本物じゃないと結果が出せない舞台。日本リーグでどれだけヒットを打てたり、バントができても、それが本物じゃなければオリンピックでは通用しないと感じました。ただ、当時の私はそれを知らなかったので怖いものがなかったし、失うものもなかったので、当たって砕けろ精神でしたね。特に捕手なので投手の活躍のためにどうするかだけに集中して、そのほかのことは本当に頭になかったので、それが良かったのかなと思います。

──北京五輪の決勝トーナメントはダブルヘッダーの翌日にアメリカとの決勝戦という厳しい日程でしたが、どのようなことを意識していましたか。

 上野(由岐子)さんが連投で球の勢いではアメリカを抑えられないと感じていたので、コントロールや球のキレで勝負するようにシフトチェンジが必要でした。なので、前の試合よりも打球が出やすくなってくるのでこういうポジション取りをしてほしいとか、より打球が速くなるといったことを野手に事前に伝えました。ただかわしてばかりではいつか捕まってしまうので、試合では攻めるところとかわすところをうまく配分するように気をつけていました。

──後藤選手は、その北京五輪の映像を繰りかえし見ていたそうですが。

後藤 開催時は小学2年生で、まだソフトボールはやっていなくてルールも分からなかったんですが、すごいなあと思って見ていました。繰りかえし見ていたのは高校生のときですね。勉強というよりも、かっこいいなと思って。

──北京五輪の話をすることは?

 ないですねえ。

後藤 聞きたいこともありますけど、目の前のことで手いっぱいなので。

──この機会に聞いてみませんか。

後藤 私は2018年の日米対抗に初めて出て、観客席が埋まった東京ドームで投げてすっごく緊張したことを今でも鮮明に覚えています。オリンピックはそれ以上に緊張感がある場所だと思うと、自分がおかしくなってしまうんじゃないかと心配なんですけど、そういったときどうしたらいいのか……。

 大丈夫だよ、緊張していたら私が蹴りを入れてあげるから。

後藤 お願いしますね!

──峰選手は緊張しないんですか。

 国際試合でも強い相手でも、あまりしないですね。特に若いころは根拠のない自信があったので、失敗するかもとかも考えませんでした。それに周りの先輩方はすごい選手ですし、「峰は思い切りやればいいよ」と言ってくださっていたので、私は“私のことに集中する”ということに集中できました。だから、意外と大丈夫だよ。

後藤 本当ですか⁉ でも、私って本当に緊張しいじゃないですか。リーグ戦でもやばいんです。

 プレーボールがかかって一球目を投げるまでがひどいよね。ソワソワソワソワしているから、肩をつかんで落ち着け! 動くな! って(笑)。

後藤 動いていないと無理なんです。どの試合でも先発と言われた日は落ち着かない。でも一球投げたらコロッと変わります。自然と緊張を忘れられる。

 去年は準備不足でコンディションが落ちたこともありましたけど、良い準備をすれば変な緊張をしないと学んでいると思うので、今年は大丈夫だと思います。大丈夫だよね?

後藤 はい……。

──東京五輪への意気込みを聞かせてください。峰選手は会見で「外国人打者の意表を突く配球をしたい」と言っていましたが、北京五輪前のインタビューでも同じことを話していました。

 外国人選手には特有の弱点、小さい穴が必ずどこかにあるんです。でも、その穴に何発も打ちこんでいたら効果がなくなってしまうので、一番有効なときにそこに突っ込めるよう、ワンチャンスをつかむような感覚で配球しています。日本人のように苦手なところを粘って甘いところに来るまで待つのではなく、自分の鋭いスイングをしっかりしてくるので、あえて好きなところに投げたりと不意を打つことが有効になると思います。今回捕手が3人入りましたけど、それぞれ違う配球で打ち取りにいくことが大事だと思うので、私は私らしく、攻めを中心に考えて我慢するときは我慢するといったバランスの良い配球を心掛けたいです。

──後藤選手はワンポイントでの起用が予想されますが、先発とはまた違う難しさがあると思います。

後藤 ワンポイントは意外と得意なんです。試合の始まりの一投目には苦手意識がありましたけど、試合の中で展開に合わせていくことは嫌ではないし、むしろやる気が増しますね。どんなプレーができるかは想像できませんが、思い切って相手にぶつかっていくことが大事だと思うので、自分の力をすべて出し切れるようにしたいです。また、同世代でこんな素晴らしい経験ができるのは私だけなので、将来のオリンピックで生かせるような経験を積みたいと思います。ガンガン投げます!

──アメリカ代表のモニカ・アボット選手(トヨタ自動車)とはライバルになりますね。

 トヨタをすごく愛している選手なので「日本代表とアメリカ代表がいるチームなんてかっこいいじゃん!」と祝福してくれて、お互いオリンピックの舞台を楽しもうという話をしました。北京オリンピックでは私は日本の最年少でしたけど、アボットもアメリカ代表の最年少だったんです。最年少コンビがトヨタでバッテリーを組んで、また13年後のオリンピックで対戦することになるなんて、お互いソフトボール大好きだねという感じですね。

後藤 モニカは私のことをすごく心配してくれていて、これまでも「代表合宿はどう?」と連絡をくれていたんですけど、代表候補発表の会見もたぶんYouTube で見ていて、会見中にcongratulation に!がたくさんついたメールが来ていました。前から「いつかオリンピックの舞台で投げ合えたら」と言ってくれていたので、実現するかは分からないけど、それに一歩近づけたことをすごくうれしく思っています。

 投げ合うことはどう思う?

後藤 ワクワクしますし、正直に言って勝つ気まんまんです!


【峰幸代PROFILE】
みね・ゆきよ/ 1988年1月26日、福岡県生まれ。165cm65kg。右投右打。捕手。木更津総合高-ルネサス(2006 ~ 14年)-トヨタ自動車(16年~)。08年北京五輪では決勝トーナメント3試合で捕手を務め金メダルに貢献。10年、12年、14年の世界選手権、10年、14年のアジア大会にも出場。今季リーグ成績(5節終了時点):11試合、28打席、5安打、0本塁打、2打点、打撃率.294

【後藤希友PROFILE】
ごとう・みう/ 2001年3
月2日、愛知県生まれ。174cm68kg。左投左打。投手。東海学園高-トヨタ自動車(2019年~)。19年のU19ワールドカップに出場し準優勝。同年からTOP代表に選出される。日本リーグでは20年に新人賞を獲得。今季リーグ成績(5節終了時点):9試合、41回2/3、3勝2敗、33奪三振、自責点8、防御率1.34

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