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2021-07-02

【ソフトボール】東京五輪ソフト代表の市口侑果(2)「守るのではなく、攻めた中で確実にプレーをしていくことが大事」

攻めの守りは大事だという市口侑果(撮影/牛島寿人)

五輪でのソフトボール競技は2008年の北京大会を最後に正式種目から除外されていたが、2020年東京五輪で追加種目としての採用が決まり、強化を進めてきた。ソフトボール・マガジンWEBでは、3大会ぶりとなる東京五輪で金メダル獲得を目指す15名の選手たちを、順々に紹介していく。

市口侑果(ビックカメラ高崎/内野手)
ひたむきにコツコツと(2)

これまでは堅実な守備とシュアな打撃を持ち味としてきたが、今ではそこに長打力も加わった。2019年の夏から課題として取り組んできた成果が表れた形だ。実業団で真面目にコツコツと取り組んできた11年間。あこがれでしかなかったオリンピックの舞台が、間もなく現実のものとなる。(取材は4月23日、全文はソフトボール・マガジン7月号掲載)

「1本で試合を変えたい!」
本気で取り組んだ長打力UP
 
──2、3年前、本塁打の数を増やしたいとおっしゃっていましたね。
市口 それまでは本塁打の数を意識したことがなかったんです。もともとヒットをたくさん打つことがうれしかったので、長打には魅力を感じていませんでした。でも、日本代表に選ばれて、1本で試合を変えられるような バッターになりたいと意識するようになって、いろいろな人に聞いたりするようになりました。
──具体的にはいつごろですか。
市口 本格的に本格的に取り組みだしたのは2019年の夏。6月の日米対抗、アメリカ遠征(USAインターナショナルカップ)を経験してからですね。宇津木監督からも長打力は必要と言われていました。それまでは目の前の結果を出すことを大事にしていたので、挑戦しようとは思えなかったんです。でも、そのときは(フォームを変えて)打てなくなってもいいからチャレンジしようと思えました。気持ちに余裕が出てきたというのもあるかもしれません。
──長打を打つために取り組んだことは何ですか。
市口 上半身のトレーニングを多めにするようになったのと、山田恵里(デンソー)さんのバッティングを見てバットの入れ方を勉強しました。山田さんは特別パワーがある身体ではないのに、何でこんなに簡単に打っているんだろうと不思議で、すごく研究しました。もしかしたら私にもできるんじゃないかって思えたんです。
──手応えを感じたのは?
市口 その年の後半戦でバッティングがどんどん分かってきたんです。私は、長打を打つにはバットの入れ方が大事だと思っているんです。どれだけパワーがあっても、角度が上がっていかなればホームランにはならないので。その感覚が分かってきたのが19年の後 半戦。そしてその年の決勝トーナメントで(モニカ・)アボット選手(トヨタ自動車)からホームランを打ったときに、取り組んできたことが間違いではなかったと思えました。
──翌年も継続して成績が良かった。
市口 そうですね。1年を通して戦えていないので、自分の中ではそこまでいい評価ではないけど、打撃率が高かったので納得はしています。出塁率が良かったのもうれしかったです。
──守備面はいかがでしょうか。今では”堅守”の市口選手ですが、以前は守備に自信がなかったとか。
市口 あまり得意ではなかったですね。でも、いろいろな方に教えてもらって、今は普通です(笑)。
──守備面で不安がなくなったのは?
市口 18年の世界選手権のときは、そこまで不安はありませんでしたね。昔、西山(麗)さん(現日立コーチ)と2年くらい全日本でご一緒させていただいたんです。部屋もキャッチボールもずっと一緒で、すごく勉強になりまし た。あとは宇津木監督にも基本から高度なテクニックまで教えてもらいまし た。スライディングしながら捕球したり、斬新なアイデアをくださいます。
──理想の守備を教えてください。
市口 守るのではなく、攻めた中で確実にプレーをしていくことが大事だと思っています。国際試合になると、外国人選手は打球も足も速いので、普通に守っていてもアウトにできないことがある。攻めの守りは大事です。
──7月に開催予定の東京五輪。思い描いていることはありますか。
市口 まだぜんぜん想像できていませんね。観客を入れるかどうか分かりませんが、歓声をプレッシャーに感じてしまうこともあるかもしれないので、 歓声の中でも自分のプレーがしっかりできるようなメンタルや技術力を持って臨みたい。練習からプレッシャーを かけて取り組んでいきたいです。
──プレッシャーには強いほうですか。
市口 強くないです(苦笑)。  
──期待に応えて、いいところで決めている印象です。
市口 いや、たまに決めたりしたら、「神様ありがとう」って思います(笑)。
──最高の舞台が待っています。
市口 レベルの高い海外の選手たちと最高の舞台で戦えることってなかなかないので、ワクワクします!(おわり)

【市口侑果PROFILE】
いちぐち・ゆか/1992年7月3日、 大阪府生まれ。163cm57kg。右投 左打。内野手。木更津総合高-ルネ サス・ビックカメラ高崎(2011年 ~)。堅実な守備とミート力のある打 撃を武器に1年目から出場機会を得 ると、同年の世界ジュニア選手権で 準優勝。13年からはトップ代表にも 定着し、14年から3大会連続で世界 選手権出場を果たす。今季リーグ成 績(5節終了時点):11試合、44打 席、12安打、2本塁打、3打点、4 盗塁、打撃率.256

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