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2021-07-05

【ソフトボール】東京五輪ソフト代表の山本優×森さやか対談(1)「打線が“線”となるよう、 自分の役割を果たしたい(山本)」

東京五輪では、打力に期待が懸かる山本優(写真左)、森さやか(撮影/桜井ひとし)

五輪でのソフトボール競技は2008年の北京大会を最後に正式種目から除外されていたが、2020年東京五輪で追加種目としての採用が決まり、強化を進めてきた。ソフトボール・マガジンWEBでは、3大会ぶりとなる東京五輪で金メダル獲得を目指す15名の選手たちを、順々に紹介していく。

山本優(ビックカメラ高崎/内野手)
森さやか(ビックカメラ高崎/外野手)
その一振りで流れを変える(1)

入社年は違えど、1988年生まれの同級生。2007年の世界ジュニア選手権には投手、内野手で出場し、銀メダルを獲得している。チームメイトとして再会を果たしたのは、森が入社し野手に転向した11年。以降、日本代表のヘッドコーチを務める宇津木麗華氏の下で打撃技術を磨いてきた。間もなくやってくる五輪本番を前に、二人の打撃論をお届けする。(取材は5月3日、全文はソフトボール・マガジン8月号掲載)

天才肌の森、ち密な山本
真逆な二人の打撃論
 
──日本代表でもチームメイトのお二人に、今回は打撃をテーマに語り合っていただきたいと思います。お互いの打撃についての印象は?
  優は体勢を崩されても片手で打ったり、どんな球でもホームランにしちゃうので化け物だと思います。
山本 森は天才!
  ウソつけ!
──理想のバッター像とは?
山本 来た球をすべて打てたらベストですよね。速い球でも、遅い球でも、 回転が上でも下でも横でも斜めでも、どんな球も打てるようになりたいです。
  私も、どんな球でもヒットにできるバッターが理想。それができればチャンスもつくれるし、点も取れます。
──そのために心掛けていることは?
山本 タイミングを崩そうとしてくる相手ピッチャーに対して、崩されないように、崩れても打ち返せるようにすることです。たとえ崩されても崩れない、自分のバッティングができたらいいなと思っています。
  私はボールの見方ですね。ボールを長く見ること。
山本 私はあまり見てないな。(一般的に)指導を受けるとき、「ボールをよく見ろ」と言われるけど、私の場合は見過ぎると差し込まれる。だから、基本はよく見てない。
  私とは真逆だね。
山本 一般的には、森みたいな見方をしている人のほうが多いと思う。もちろん目をつぶっているわけではないし、見てるんだけどね。長く見るって感覚ではない。たぶん、森が見ている時間の半分くらいしか見ていないと思う。
──森選手が長く見る理由は、ボールを線でとらえるためにですか。
  うーん、そう言われてみると線じゃなくて点でとらえてますね。どうしてかと言うと、線でとらえたら反応が遅くなるんです。ストレートでも変化球であっても打つポイントに来た瞬間に振る。だから、線ではなく点です。
山本 私も線ではとらえてないな。でも、こんなふうにあらためて言葉にしてみると面白いね。私はボールを見ていないと言ったけど、ボールの回転を見て判断して打っているから、厳密に言うとやっぱり見ているんだよね。
──インパクトはどうですか。
山本 私は、バットにボールが「クイ ンッ」と食い込むイメージです。よくマンガでもそういう描き方をされてますよね。身体の前で押し込む感じです。
──前で押し込むというのは、どんな球であっても?
山本 自分の身体の調子とか、相手ピッチャーの球の速さによって変わります。例えばストレートを打つときに、今日は前で打ちたいけど、次の日になったらもう半個分身体の近くで打ちたいこともありますし。
  私の場合、切るようなイメージで、基本はボールに対してバットを縦に入れてる。もちろん球種にもよるけどね。例えば、チェンジアップの低めをそうやって打ったらゴロになっちゃうので、そういう打ち方はしないけど、 基本は縦に入れて切る。
山本 私は、バットの入れ方はそのときどきで違うけど、球種によって縦に入れることもある。
  引き出し多いよね。
──バットを縦に入れるとは?
山本 やったことはないけど、刀でボールをパカーンと割るイメージですかね。回転が速かったり、強い球の場合は、バットを横に入れると負けてしまうけど、縦だと負けないので。
──体重移動はどうでしょう?
山本 私は、軸がブレるからあまり体重移動をしたくないですね。でも、体重移動をしないとブレる人もいるので。
  私は体重移動をするタイプ。たとえばチェンジアップがきたとき、身体が止まっている状態から一気に力を出そうとすると、バットが出て空振りをしてしまう(バットが泳ぐ)。なので、体重移動をゆっくりしながらボールに合わせていくようにしている。変化球も同じ。体重移動をすることでヒザを使って低めを拾ったり、打席の中で止まらないようにしている。
山本 たぶん森の打ち方のほうが一般的だよね。
──体重移動の役割は、下半身の力を 上半身に伝えてパワーを生み出すこととされていますが、山本選手はどのようにパワーを生み出していますか。
山本 いただく感じです。
  いただく?
山本 お借りします。ピッチャーのボールの速さを。
  あぁーっ、そういうことか!
山本 車で例えると、ブレーキをかけることで、熱が発生するよね(運動エネルギーが熱エネルギーに変換)。たぶん、私のバッティングはその原理だと思う。
──体重移動をせず、止めることで生まれたパワーをボールに伝えていく?
山本 はい。だから飛んでいくんだと思います。
──フォロースルーはどうでしょう?
  (投げる動作をしながら)フォロースルー?
山本 打ち終わった後のほう! 急に投げ始めないでよ(笑)。
  あぁ……。私は、前を大きくしています。巻き付けるとファウルやボ テボテのゴロになってしまうので、 ボールを切った後は前を大きく。
山本 私は、フォロースルーって、そのバッティングの答えだと思っているんだよね。
  ???
山本 打とうとしている球に対して正しくない打ち方(スイング)だと正しいフォロースルーができない。だから、答えなの。ボールとバットが掛け算をして、答えがフォロースルーになる。だから、フォロースルーはこういう形で、という意識がない。
──正しいスイングができていればおのずと正しいフォロースルーになっている、と。
山本 だと思います。ただ、場合によっては、フォロースルーという答えを先に求めてから、その過程(スイング) をつくっていくこともあります。
──逆算して導き出す?
山本 はい。試合ではしませんが、練習でやることはありますね。今こういう身体の使い方をしている。でも、それだと出したい答えが出ないから、その答えを出すためにここをつくっていこうみたいなことは考えます。(つづく)

【山本優PROFILE】
やまもと・ゆう/ 1988年8月20日、北海道生まれ。164cm 65kg。右投右打。内野手。当別高-ルネサス・ビックカメラ高 崎(2007年~ 11年、13年~)。これまで首位打者賞1度、本塁打王1度、打点王1度、ベストナイン賞6度受賞。日本代表では主軸打者として、14年から3大会連続で世界選手権に出場。今季リーグ成績(5節終了時点):11試合、40打席、8安打、2本塁打、9打点、0盗塁、打撃率.267

【森さやかPROFILE】
もり・さやか/ 1988年9月29日、埼玉県生まれ。163cm63kg。 右投右打。外野手。星野高-東京女子体育大-ルネサス・ビック カメラ高崎(2011年~)。これまで首位打者賞1度、ベストナイ ン賞3度受賞。日本代表としては投手として出場した07年世界ジ ュニア選手権で銀メダル、14年世界選手権で金メダルに輝いた。今季リーグ成績(5節終了時点):8試合、21打席、7安打、0本 塁打、3打点、0盗塁、打撃率.412

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