陸上競技からの引退、結婚、出産、7人制ラグビーへの挑戦を経て、陸上界に復帰した女子100mハードルの寺田明日香選手。東京オリンピックでは日本女子短距離で57年ぶりのファイナルを目指しています。7月31日の女子100mハードル予選まで、陸上競技マガジンに掲載された寺田明日香選手の連載を毎日公開!
※このコラムは『陸上競技マガジン』2020年10月号に掲載されたものです。
過敏だった以前の私。冗談ではなく人が変わった まだまだコロナ禍から抜け出せていない状況のなか、多くの方々のご尽力のおかげで、私たちは試合に出場できるようになってきました。
私は8月後半に2連戦(ゴールデングランプリ、アスリートナイトゲームズin福井)を終え、しばしの休息を経て次のレースに向けた強化期間に突入していきます。試行錯誤しながら苦しむ期間は意外と好きで、陸上競技という、全力で自分と向き合える競技の醍醐味ですね。
さて、本来であれば先月号で終了だったはずのこのコラムも、オリンピックの延期に伴って継続して書かせていただけることになりました!(わーい!)
第一次陸上選手期から現在までの“寺田明日香”を振り返りながら、少しでも選手の皆さんとコーチの方々の“選択肢のヒント”にしてもらえるようなことを書いていけたらと思っています。引き続き、よろしくお願いいたします!
昨年、日本記録を更新してから、「6年間のブランクがあって、しかも30歳を目前に、なぜ自己ベストで走れるんだ?」と、誰かに会うたびに聞かれました。
私は専門家ではないので、エビデンスに基づいた回答はできませんし、最先端技術を駆使したトレーニングをしているわけではないので、「う〜ん、人(考え方)が変わったからですかねぇ」と、冗談めかして言っていましたが、これは冗談ではなくて、本当に一つの大きな要素になっていると思っています。
以前のコラムでも触れていますが、若い頃の私は他人からの評価をものすごく気にしていました。
「他人から良く見られたい」
「弱いと思われたくない」
二十歳前後の一人の女子なので、当たり前の心理ではあるのですが、今考えると少し過敏になっていたように思います。
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