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2021-07-14

【ソフトボール】東京五輪ソフト代表の山田恵里(2)「いろいろな人たちの思いを背負って戦う。それが自分の使命」

間もなく開幕する東京五輪で、日本代表の主将としてチームを牽引する山田恵里(撮影/桜井ひとし)

五輪でのソフトボール競技は2008年の北京大会を最後に正式種目から除外されていたが、2020年東京五輪で追加種目としての採用が決まり、強化を進めてきた。ソフトボール・マガジンWEBでは、3大会ぶりとなる東京五輪で金メダル獲得を目指す15名の選手たちを、順々に紹介していく。

山田恵里(デンソー/外野手)
使命を全うする思いで(2)

北京五輪の決勝でアメリカのキャット・オスターマンから値千金の本塁打を放った。 あれから13年、山田もまた日本代表の歴史を紡ぐために、ただひたすらにソフトボール選手としての道を歩み続けてきた。 集大成となるであろう東京五輪は、多くの人の思いを背負って挑む。(取材は5月12日、全文はソフトボール・マガジン8月号掲載)

たくさんの人の思いを背負い
恩返しのつもりで挑む五輪
 
──今季は「楽しむ」をテーマに掲げています。
山田 一昨年や昨年は、不安しかありませんでした。プレッシャーを抱えていたので、結果が出なかったのもある意味当たり前だなと、今振り返って思います。
──不安を、どのようにして吹っ切ることができたのでしょうか。
山田 そうやってマイナスなことを考えているから結果が出ないということに気付いて、「楽しむ」ということをテーマにしてみたんです。過去のオリンピックを振り返ってみても、不安なんて抱えていなかったし、とにかく楽しくて仕方がなかった。北京オリンピックでもプレッシャーや不安はなくて、みんなと「楽しまなきゃ損だよね」 なんて話をしていたんですけど、そういう雰囲気だからこそアメリカに勝てたんじゃないかな。自信を持つことは大事だと思いましたね。いいときって余計なことを考えていないし、普段からそういう気持ちで取り組むことが大事だという境地にたどり着いたので、今は不安がないんだと思います。
──「楽しむ」の定義とは?
山田 ソフトボールに真摯に向き合うことだと思っています。今年入ってそれができるようになってきましたし、 だからこそ今はプレッシャーを感じてなくて、自分たちのプレーができれば勝てると思っています。宇津木(麗華) 監督の出すサインに対して、「おお、そうきたか!」と思えれば結果もついてくると思います。逆に、サインを出されたときに少しでも不安があれば、 結果はついてこない。本番で楽しめるような心の余裕があれば最高ですよね。そういう選手が一人でも多ければ多いほど、チームは強い。「よし、大丈夫だ!」と思って試合に入りたいです。
──そのために、1日1日の練習をしっかりやり切るわけですね。
山田 そうですね。本番まであっという間だと思うんです。こうしておけばよかったという後悔がないように、1日1日やり切ることが大事です。
──あらためて、どのような思いで東京五輪に臨まれようとしていますか。
山田 身近で代表に選ばれなかった選手もいて、そういう選手の姿を見るとやっぱり頑張らなきゃって気持ちになります。もちろん選考に落ちた選手だけでなく、ロンドン、リオと正式種目として採用されていれば代表になっていた選手、オリンピックの夢をあきらめて違う道に進んだ選手も見てきました。そういう中で、私自身がソフトボールを続けて来られたのは、やはり周りの人たちがいたから。私はこれまで、人の心を動かせる選手になりたいと思ってきましたけど、結局は周りの人に心を動されてここまで来ることができた。だからこそ恩返しをしたいですし、いろいろな人たちの思いを背負って戦う。それが自分の使命だと思っています。
──ソフトボールの五輪における歴史は北京後に一度途切れてしまいましたが、山田選手や上野由岐子選手がつなぐ役目を担ってこられたと思います。
山田 私自身、選手として先は長くないと思っていますし、代表活動も最後という思いでやっています。これまでは、ほかに任せられる選手がいなかったので、その役割を担ってきたようなところはあるのですが、今は任せても大丈夫だと思える選手がたくさん出てきました。ただ、私の中では今までやってきたことを継続してほしいという思いはなくて、新たな日本代表をつくっていってもらえればいいかな、と。もちろん強い日本は継続していってほしいですけどね。つなぎ役はこれまで精いっぱいやってきたので、これからの未来は後輩たちにたくしたいと思います。
──その前に、集大成となる東京五輪があります。ソフトボールファンの皆さんにも一言お願いできますか。
山田 こういった状況で開催できるのか分からない部分もありますが、こういうときだからこそスポーツの力を信じたいと思います。ソフトボールの試合を見て「明日から頑張ろう!」と思ってもらえたら、私たちも頑張ってきた意味がある。応援は選手の力になるので、たくさん応援していただきですし、 皆さんからいただいたものを最高の結果で返せたらと思っています。(おわり)

【山田恵里PROFILE】
やまだ・えり/1984年3月8日、神奈川県生まれ。165cm59kg。左投左打。外野手。厚木商業高-日立(2002年~20年)-デンソー(21年~)。日本リーグでは、これまで首位打者に4度輝き、19年には前人未踏の400安打を達成。日本代表ではアテネ、北京と2度五輪の舞台に立ち、北京では金メダル獲得に貢献。 東京五輪に挑むチームの主将を務める。今季リーグ成績(5節終了時点):11試合、37打席、11安打、1本塁打、4打点、1盗塁、打撃率.344

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