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2021-07-15

【陸上】法大の元エース、佐藤敏也が2年ぶりの実戦で上々の実業団デビュー「まずは目の前のことを大切に」

トヨタ自動車の一員としてデビューを飾った佐藤 写真/トヨタ自動車提供

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7月3日、佐藤敏也(トヨタ自動車)が日体大長距離記録会に出場した。実戦は実に約2年ぶりとなる。13分58秒15で復帰初戦を終えた佐藤は「やっと戻ってこられました」と安どの表情を見せ、静かに喜んだ。

「“本当に戻れるのだろうか”という
不安はずっとありました」

 法大4年時の2年前、2019年の春は佐藤が急成長を遂げたシーズンだった。5月の関東インカレでは5000m4位、10000m3位とともに日本人トップを取り、7月には5000mで13分38秒22とこの年の日本人学生リスト3位の好記録を出した。それまではロードを得意としていた佐藤がトラックのスピードに開眼したのがまさにこの数カ月だった。

 しかしその後、右脚付け根を痛めるアクシデントが佐藤を襲う。大学最後の年だったが、完治させるために同年10月には手術に踏み切った。そこからはリハビリに専念する毎日。最後の箱根駅伝は5区、青木涼真(現Honda)の付き添いを務めた。卒業のタイミングになってもジョギングすらできず、走れない状態でトヨタ自動車に入社した。

「佐藤敏信監督からは“入社1年目は走れないことは分かっている。焦らずにやっていこう”と声をかけていただきました。ただ長い期間、走れなかったので“本当に戻れるのだろうか、続けるのは難しいのかな”という不安はずっとありました。同期入社の選手が結果を出しているのを見て焦りもありましたが、”あいつができるのならばいつか自分もできる“と信じて、なるべく気にしないようにしていましたね」

 苦しい日々ではあったが、“やめたい”と思ったことは1度もなかったという。

 ジョグを開始したのは手術から1年後の昨年10月から。12月から徐々にスピードを上げた練習も入れていった。だがここからも困難は続く。1年のブランクは佐藤の走りのベースを崩しており、1月末には左脚シンスプリント、3月には股関節の故障を起こし、どちらも3週間ほど、練習から遠ざかった。しかし昨年までの苦しい時間に比べれば、乗り越えられないものではなかった。じっくりと復帰へ向け、焦らずに鍛錬を続けた。

文/加藤康博

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