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2021-07-15

【陸上】法大の元エース、佐藤敏也が2年ぶりの実戦で上々の実業団デビュー「まずは目の前のことを大切に」

トヨタ自動車の一員としてデビューを飾った佐藤 写真/トヨタ自動車提供

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「大切なのは焦らないこと。
それでも2024年には夢をかなえたい」

 6月下旬に行われた日本選手権では法大時代の盟友、青木が3000mSCで東京五輪参加標準記録を突破して3位に入り、東京五輪代表の座をつかんだ。そして復帰戦前日には法大のひとつ上の先輩、坂東悠太(富士通)も5000mでの代表入りを決めた。佐藤も含め法大時代、「三本柱」と呼ばれ、卒業後は“いつか3人でオリンピックへ”という思いを抱いていた仲間だ。

「青木の日本選手権は見ましたし、坂東さんが決まったのも知っていました。もちろん、うれしいですし、おめでとうという思いです。ただ今の自分は周りを気にする余裕はありません。目の前のことを見据え、自分のやるべきことをやっていくことに集中しています」

 佐藤の夢はマラソンでの日本代表。その座は佐藤の大学4年時にすでに決まっていたため、ここで置いていかれたという感覚はない。冷静に仲間を祝福し、そして自分の走りへの力に変えられた。


法大時代の盟友の活躍に刺激を受けながらも自身のやるべきことに集中しているという 写真/トヨタ自動車提供

 日体大記録会の復帰戦は2分48秒ペースで集団のなかに付いた。3000mを8分25秒で通過した際には「かなりキツかった」と言う。だが、そこから粘った。ラスト1周は62秒台までペースを上げて13分58秒15でフィニッシュ。2年ぶりのレースとしては見事なタイムでまとめて見せた。

「ようやく戻ってこられたという思いと同時に、まだまだ走り込みが足りないということも痛感しました。これでは10000mまでは走れません。ここから夏合宿に向けてしっかり走り込みます」

 想定以上の走りができたことに浮かれる様子はなく、次の目標を見据えるのは走れる喜びを実感できたためだろう。10000mのベストは大学3年時に出した28分35秒98。これを28分10秒切りまで持っていきたいと話す。「駅伝メンバーを目指すうえではそれでも足りないくらい」と佐藤。トヨタ自動車は全日本実業団駅伝(ニューイヤー駅伝)で常に優勝争いを義務づけられた名門。メンバー争いは熾烈だが、これからそこにも加わっていく意思を示した。

 オリンピックへの思いは当然、持ち続けており、やはりマラソンで狙いたい。ただまだ走りだしたばかり。今はその初挑戦までの道のりも現実的なプランは立てられない状態だ。

「大切なのは焦らないこと。ケガを繰り返すようではまた遠回りになるので、目の前のことをまずは大切にします。それでも2024年、パリ大会では夢をかなえたいですね」

 止まっていた佐藤の時計の針が今、動き出した。ここから夏に向け、再度、鍛錬の季節に入る。秋にはさらに逞しくなった姿を見せてくれることだろう。

●Profile
さとう・としや◎1998年3月11日、愛知県生まれ。166cm、56kg。愛知学院愛知高(愛知)→法政大→トヨタ自動車。法大時代は1年時から駅伝で主力として活躍し、箱根駅伝では1,2年時は6区に出走し、共に3位。3年時は1区を任され、区間5位と、チームの3連続シード権獲得に貢献。4年時春の関東インカレでは5000m4位、10000m3位と共に日本人トップの成績を残したが、その後、ケガのため、秋以降の駅伝出場はなかった。今年7月2日の日体大記録会5000mで2年ぶりの実戦、実業団でのデビューを飾った。

文/加藤康博

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