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2021-07-18

【ボクシング】元日本王者・大場浩平、ラストファイトは2-1判定勝利

ロープを敢えて背負ったように見えた大場。かつての“片鱗”を見せる防御を繰り返した

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 昨年9月、6年ぶりにリング復帰を果たしたものの、2回TKO負けの惨敗を喫した元日本バンタム級チャンピオン大場浩平(36歳)が、名古屋大橋ジムに移籍して臨んだ“ラストファイト”──。18日、愛知県・刈谷市産業振興センターあいおいホールで行われたフェザー級6回戦で、中村龍明(なかむら・りゅうめい、20歳=市野)のプレスを終始受ける厳しい戦いだったものの、2ー1(58対56、58対56、56対58)の判定勝利。途中、長期ブランクはあったものの、2002年6月以来、慣れ親しんだリングに別れを告げた。

文_本間 暁 写真_石井愛子

「バンタム級でも小さかったくらい」と苦笑いする大場は、中村と比べればやはり体格差は歴然だった。ひと回り以上若い中村は、若さと勢いに任せて初回からプレスをかけていく。大場は、引いてフリッカージャブ、右ストレートと返していくが、20歳の勢いはまったく止まらなかった。

フリッカージャブを伸ばす。さすがに、かつてのような効果を上げることはできなかった
フリッカージャブを伸ばす。さすがに、かつてのような効果を上げることはできなかった

 元来が、ダメージを与えて展開するボクシングではない。ひらりひらりと相手の攻撃をかわし、リング内を縦横無尽に動き回るスタイル。しかし、「すべての面で、落ちていることは自覚している」と言うとおり、かつての輝きはない。だが、ロープを背負っての攻防には、“大場らしさ”がちらりと浮かび上がった。ロープの反動を利用したスウェーバック、敬愛するフロイド・メイウェザーばりのL字ガード、「ほとんど勘で動いていた」というダッキング、ウィービング、そして右カウンター……。中村の攻撃を完全にかわすことはできないまでも、ハードヒットは許さない。ジムを移籍し、攻撃的ボクシングにシフトした時期もあったが、「これが僕の理想のボクシング」と、“原点回帰”した姿を示したかったのだろう。

右カウンターを決める大場。「行こうとしたが、セコンドが“行くな”と。それで自分のボクシングを貫けました」(大場)
右カウンターを決める大場。「行こうとしたが、セコンドが“行くな”と。それで自分のボクシングを貫けました」(大場)

 昨年9月、湊義生(JM加古川)に、いいところなく2回で打ち倒された。この試合ののち、地元・名古屋に戻り、ジムを変わっての“最終戦”である。
「この試合までの日々は苦しかった。勝ちたかったから」と振り返り、「見応えのない試合」と自虐的に語ったが、ロープを背負ってのやり取りは、中村のプレスに加え、自ら望んだ“居心地の良い場所”にも見えた。必死だったが、楽しそうにも見えた。

 互いにクリーンヒットを奪えず、圧倒的にアグレッシブに攻めた中村に軍配か? と思われたが、大場のボックスが支持されたかたちだ。これはジャッジの温情だろう。

試合後、リング上で引退式が行われ、別れのテンゴングが鳴らされた。後方は、かつてスパーで鍛え合った大橋弘政会長
試合後、リング上で引退式が行われ、別れのテンゴングが鳴らされた。後方は、かつてスパーで鍛え合った大橋弘政会長

 今後は、「毎週土曜日に、名古屋市内でボクシング教室を開きます。Instagramであらためて告知します」と、さっぱりした表情で語る。

 現役にこだわり続けた者だからこそ、いったん身を退く決断をすれば、想いを断つために、敢えて関係を断つ──そういう生き方もある。だが、この競技に憑りつかれた男らしい選択だ。

「僕、たぶん、教えるの上手いですよ」。自信満々に語る表情は、全盛期の彼を思い出させた。

 大場のプロ通算戦績は42戦37勝(14KO)4敗1分。中村の戦績は7戦3勝(1KO)2敗2分。
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