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2021-07-18

【ボクシング】丸木は冷や冷やの逆転KO/新人王・能嶋は速攻勝利

丸木に集中力があれば、打たせず倒すこともできたはずだ

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 18日、愛知県・刈谷市産業振興センターあいおいホールで、メインイベントとして行われたスーパーウェルター級8回戦は、日本同級5位の丸木凌介(30歳=天熊丸木)がノーランクの畑上昌輝(29歳=長崎ハヤシダ)に大苦戦。ストップ負け寸前の状態から、辛くも逆転KO勝ちを収めた(タイムは4回3分)。また、セミファイナルのウェルター級6回戦に登場した昨年度同級全日本新人王で日本20位の能嶋宏弥(25歳=薬師寺)は、同じくノーランクの岡田翔真(24歳=姫路木下)に初回1分2秒TKO勝ちを収めた。

文_本間 暁 写真_石井愛子

“昭和”の香りプンプンの気合を入れたガウンと形相どおり、畑上はスタートからガンガンと丸木に迫った。左右フックが当たらずとも、とにかく手数を繰り出して叩きつける。対して丸木は余裕しゃくしゃく、悠然と押されるがままにロープを背負い、どこか横着なブロッキングでやりすごしにかかる。だが、間隙を突いて左ボディブローを合わせると、畑上の動きは一瞬止まってしまう。顔面への左フックのタイミングもつかんでおり、これが決まれば、試合はすぐにでも終わる雰囲気があった。

痛烈な丸木のボディブロー
痛烈な丸木のボディブロー

 パンチの正確性で歴然とした差が感じられた。けれども、丸木はエンジンをかけない。依然として悠長に畑上に連打させるがまま。すると、次第にこれが顔面を捉えだし、丸木の顔面は左右に振られ、アゴを跳ね上げるようになっていった。

 3回にはニュートラルコーナーで乱打。はっきりと丸木にダメージが窺えるようになった。ストップの早いレフェリーならば割って入るレベルだ。続く4回も、畑上は空振りしようともお構いなしで攻めまくる。もう、丸木はKO負け寸前の状態だった。

「会長(兄・和也さん)に、『左フックをもっと下めに打て』と言われていた」と、手負いの丸木がそれを実行するとこれがどんぴしゃり。背中からキャンバスに落ちた畑上は、後頭部も強打していたが、レフェリーはカウントを止めずに10まで読み上げた。

「相手が格下だったので、ケガをしないように60%ぐらい(の力)で勝てると思った。(畑上の)スタミナが切れると思って打たせていたが切れなかった」と丸木。さらに、「毎回打たれるけれど、今日は初めてダメージがあった」とも。
 前戦も実力差のある相手に打たせるシーンが気になった。集中力のなさがはっきりと見て取れる。流行り言葉の“モチベーション”の問題ならば、相応の相手と必死に戦える試合をすべきだ。このままの心理状態で戦い続けるほうが、かえって危険度は増す。

 呆然と控室に佇む畑上は、「オレ、負けたんですか?」と記者に逆質問する状態。瞬間的に記憶が飛んでしまっていたのだろう。聞けば、SNSをとおして自ら対戦を希望したという。理由は「同じ年(2012年)の新人王戦に出ていたから(丸木は全日本決勝で敗戦。畑上は西部日本決勝で敗れた)」。念願の対戦で惜しくも金星を逃したが、敵地に乗り込んで、観衆の心を確実につかんでいた。

「新幹線が走るようにビュンと打つ」。能嶋が大場浩平から伝授されたストレートの打ち方だ
「新幹線が走るようにビュンと打つ」。能嶋が大場浩平から伝授されたストレートの打ち方だ

“かつての師”大場浩平に続いてリングに上がった能嶋は、筋骨隆々の元新人王西軍代表・岡田に伸びやかな左ジャブを打ち込んで、右ストレートをガード間に通す。これでガクっとなった岡田へ、さらにワンツーをフォロー。すると岡田はたちまちにヒザを着き、レフェリーが即試合を止めた。
 昨年度新人王が軒並み、敗戦、苦戦を繰り返している。例年、前年の新人王は、ランク獲りに必死の中堅選手に食われることが多いのだが、コロナ禍の影響で、対戦選手を選り好みできない状況もそれに拍車をかけている。この日は快勝した能嶋も、決してうかうかとはしていられない。
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