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2021-07-14

【ボクシング】“ライト級ウォーズ”の星、無敗・宇津木が大苦戦。中井にダウン奪われ薄氷勝利

得意の右を打つ宇津木。しかし、ハードヒットは奪えなかった

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 14日、東京・後楽園ホールで行われたセミファイナル、ライト級8回戦は、デビュー以来8勝(7KO)無敗の日本同級6位・宇津木秀(うつき・しゅう、27歳=ワタナベ)が、ノーランクのサウスポーで、これが初の8回戦となる中井龍(なかい・りょう、23歳=角海老宝石)にダウンを奪われる大苦戦。終盤にポイントを逆転して76対75、76対75、77対74の僅差3-0判定勝利となった。

文_本間 暁 写真_小河原友信

 計量後のリカバリーでどれほど戻したのか分からないが、宇津木の体は中井より一回り大きく見えた。パワー重視の戦い方を想定してのものだったろうか。しかし、2018年のデビュー以来、順調にキャリアを重ねてきた宇津木を、“伏兵”中井が手玉に取る。

 名門・花咲徳栄高、平成国際大でアマキャリア100戦を超える宇津木に対し、中井も著名選手を輩出する西宮香風高時代に50戦近く戦った経歴がある。正面から潰しにかかる宇津木を、ショートの右ジャブ、右フックで何度も捉え、サイドへサイドへと回り込み、宇津木の間合いを徹底的に外していった。

中井は初回終了間際、左ストレートで効かせ、さらに左ダブルで宇津木をダウンさせた
中井は初回終了間際、左ストレートで効かせ、さらに左ダブルで宇津木をダウンさせた

 衝撃的なシーンは、初回終了間際に飛び出した。両者が近い間合いで交錯すると、左ショートをヒットさせたのは中井だった。これで瞬間、動きを止めた宇津木の左サイドから背後に回り込んだ中井が、左アッパーを立て続けにヒット。宇津木はストンとその場に落ちてヒザを着いたのだ。

 辛くも立ち上がった宇津木は、ゴングに救われる。1分間のインターバル後もダメージを窺わせたが、中井は自身が決めた戦い方を遂行していく。右から入る宇津木の攻撃を徹底して外し、距離を取る。宇津木の中途半端な左に右を重ねる。宇津木の入り際に左右ショートを合わせる。飛び込んで左を当てる。それらでパチンパチンと顔面を弾かれた宇津木は、自身の空振りも相まって、どうにもリズムをつかめない。そうなると自然、強打を当てたくなるから、なおさら振りもモーションも大きくなる。完全に負のループに迷い込んだ感。ホープがズルズルと回を重ね、敗戦への道を辿る典型的パターンだった。

宇津木の左ボディブロー。これが、逆転勝利を呼んだ
宇津木の左ボディブロー。これが逆転勝利を呼んだ

 だが、中井の足が止まり気味になってきた中盤、宇津木は思い切って距離を縮め、左ボディブローを叩き込み始める。5回にはさらに右アッパーでもボディを狙う。これをローブローと主張する中井陣営、本人のアピールで中断となるが、宇津木はお構いなしに攻め立てる。空振りではなく、ヒットを奪えれば、ステップのリズムも出てくる。宇津木らしい動きが見えたのはようやく6回だった。

 気力を絞った中井は7回を、勝負をかけた宇津木が最終8回を取る。ジャッジは宇津木の逆転を支持。あの展開でボディブローに活路を見い出し、勝利を手繰り寄せた粘りは見事だった。
 一方、中井は実にうまく戦った。サウスポーの特性を生かし、宇津木の“穴”を丹念にこじ開けていった。サイドへサイドへとポジションをずらしていき、死角から確実にヒットを奪うボクシングは、結果に表れなかったものの、自身のボクシングを深めた。さらに磨きをかければ、再浮上のチャンスは十二分にある。4戦2勝(1KO)1敗1分。

 ともに8回をフルに戦えたことも、今後に生きる。
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