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2021-07-24

競泳日本代表CLOSE UP 入江陵介 「表彰台で笑って終われるように頑張りたい」

4月の五輪選考会を経て33人が選出された東京五輪の競泳日本代表。3人の選手をクローズアップする。2回目は背泳ぎの入江陵介(イトマン東進)。※スイミングマガジン2021年7月号掲載記事より抜粋


 カナダで開催の2006年パンパシフィック選手権で初の日本代表ジャージに袖を通した日から、入江陵介は15年も留まることなく日本のトップを走り続けてきた。

「自分自身、今は辞めどきが分からないんですよね」

 日本選手権で100、200mの背泳ぎを制し、4度目の五輪切符を獲得したあと、苦笑いを浮かべながらそう話した。それは決してネガティブなものではなく、水泳が純粋に楽しいから、自分で終わりを作る必要はないという思いがあるからだ。

「正直、レース前はプレッシャーがあったり、早く終わりたいなあって思ったりします。でも、やっぱり終わったとの達成感だったり、代表を決めたあとにおめでとうって声をかけてもらえたときだったり、そういう瞬間に『やっぱりやってて良かったな、楽しいな』と思います」


 そう思えるまでには、かなりの時間を要した。

 3度目のオリンピックとなったリオ五輪。100m背泳ぎで銅メダル、200mで銀メダルを獲得したロンドン五輪以上の結果を、と意気込んだものの、100mで7位、200mで8位という結果に終わった。

 現役に終止符を打つかどうか……。約3カ月間悩んだのち、決めたのは米国への単身武者修行だった。

 米国での生活はすべてが新鮮だった。オンとオフの切り替え、気楽に考えること…。

 気持ちに余裕ができたとき、あらためて周囲を客観視することができた。そこで見えたのは、日本代表チームが、自分ですべてを背負わなければならないチームではなくなった、ということだった。

「ずっと、『僕が金メダルを目指さなきゃいけないんだ』と思っていたのですが、今は金メダルを狙う選手が増えてきました。僕はその中のひとりに過ぎない。そう思うととても気持ちがラクになりました」

 入江は、自分が本当に目指しているものと、周囲が入江にかける期待とのズレに苦しめられてきた。それでもエースとして、ズレのある目標もクリアしなければならないという『使命感』にとらわれてきた。

「でも今は、本当に自分が目指しているものを心から素直に言えるようになりました。今なら、素の自分で東京五輪に臨めるのかな、と感じています」

 呪縛から解き放たれた今、入江はようやく水泳を心から楽しめるようになった。やっと自分がやりたいように、自分が目指すもののために泳げるのだ。その日々は純粋に楽しい。

「前回は苦しんだオリンピックでしたから、今回はやっぱり表彰台に上りたい。それだけではなく、応援してくれた方への恩返しも込めたいし、30歳を超えてもまだまだできる、というメッセージも伝えたい。そのためにも、自分自身でできることを最大限やって、表彰台で笑って終われるように頑張りたいと思います」


PROFILE いりえ・りょうすけ
◎1990年1月24日生まれ、大阪府出身。身長178cm、体重67kg。血液型はA型。近畿大附高→近畿大。現在、㈱ナガセ勤務、イトマン東進所属。担当コーチは石松正考(イトマンSS)。
【自己ベスト】50m背泳ぎ24秒79(2009年世界選手権)、100m背泳ぎ52秒24(2009年日本学生選手権)、200m背泳ぎ1分52秒51(2009世界選手権)
【2021年日本選手権成績】50m背泳ぎ24秒90/1位、100m背泳ぎ53秒13/1位、200m背泳ぎ1分55秒52/1位
【日本代表歴(長水路主要国際大会)】2008、2012、2016、2021年オリンピック、2009、2011、2013、2015、2017、2019年世界選手権、2006、2010、2014、2018年アジア大会、パンパシフィック選手権、2009、2011年ユニバーシアード大会

文◎田坂友暁 写真◎小山真司

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