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2021-07-24

競泳日本代表インタビュー 佐藤翔馬 「メダルを取ることで水泳界が盛り上げればうれしい」

レース展開、気持ちのコントロール、そして出した2分6秒40という記録。どれをとってもお家芸の代表にふさわしいそれだった。トップ戦線で名が知れ始めてわずか2年という快進撃。佐藤翔馬(慶應義塾大3年/東京スイミングセンター)にとってはそれでもこれはまだ序章。この先に、運命ともいえる尊い使命が待ち受けている。頂点への大きな期待――。ハタチの新エースは、世界最高の舞台でも自分らしさを貫くつもりだ。
※スイミングマガジン2021年7月号掲載記事より抜粋


――東京五輪ではどのような展開を考えていますか。また対アントン・チュプコフ(ロシア)はいかがでしょう。

佐藤 僕は先行型なので、誰かをターゲットにすることは考えず自分の泳ぎをする、というのが大前提としてあります。世界記録保持者なので仕方ないですが、みんな、対チュプコフのことばかりを考えすぎなんじゃないかな、とも思うんです。チュプコフのラスト50mの強さはもちろん頭には入れておきますが、仮に僕が1分0秒前半で折り返したとしたら、もちろん僕との距離感は測っているんでしょうけど、焦って何かが狂い始めるかもしれないじゃないですか。

――主導権は自身にあるからこそ、チュプコフに狂いが生じる、と。

佐藤 そうです。だから、僕は僕のレースをします。チュプコフがラスト、どれくらいで泳げば勝てると踏んでいるかはわかりませんが、僕も逃げきる自信、あるんで。それに、チュプコフばかりを見ていてはいけないと思っています。昨年11月に2分6秒85で泳いだオランダのアルノ・カミンガ選手は、100mを57秒90で泳ぐので2分6秒前半の力はあると思います。国の代表選考会がさほど厳しくない選手は、オリンピック本番まで力量が見えないので、持ちタイムは関係なく、挑戦者のままで臨みたいと思っています。それに僕の方も、今回の2分6秒40はまだまだ伸びしろを残した記録だったと思っているんです。前半の100mのスピードは絶対に速くなっていますし、キツい練習を頑張っているのは、50mずつのラップを少しでも上げて、さらにラスト50mで粘って逃げきるためですから。

――「金メダルを獲りたい」とおっしゃっていますが、私たち報道の者が重圧をかけてはいませんか。

佐藤 いいえ、そんなことはないです。金メダルを狙える位置にいるのですから、獲りたいと思いますし、あとはその期待を自分の中でどうとらえて力にしていくか、だと思っています。獲ることで、水泳界が少しでも盛り上がるのであればうれしいです。

佐藤翔馬のシーズンごとの主な競技成績(2013年度以降/平泳ぎ)

PROFILE さとう・しょうま
◆2001年2月8日生まれ、東京都出身。身長177cm、体重77kg。慶應義塾高→慶應義塾大3年在学中。専門種目は平泳ぎ。0歳から水泳に親しみ、小学3年時に東京SCに移籍。初めて全国JO杯に出場したのは中学1年時の夏季大会(11~12歳区分50m平泳ぎ12位、同100mはフライングで失格)。中学3年時の全国中学は100m平泳ぎ4位、同200m5位。高校3年時にジュニアパンパシフィック選手権代表に選出され、大学1年時(2019年)には世界ジュニア選手権に出場し200m平泳ぎで銀メダルを獲得した。2020年1月、KOSUKE KITAJIMA CUPの200mで2分7秒58をマークし一気に日本のトップ戦線に躍り出ると、翌2021年の同大会では初の2分6秒台に突入(2分6秒78)。4月に行なわれた日本選手権(五輪選考会)で100、200mを制し2冠、200mでは2分6秒40の日本新をマークし東京五輪の代表権を獲得した。

◆自己ベスト(すべて平泳ぎ):50m27秒98(2020年度ジャパンオープン)、100m59秒10(2021年日本選手権)、200m2分6秒40(2021年日本選手権/日本記録)

聞き手◎桜間晶子(スイミングマガジン編集長) 写真◎馬場高志(特撮)、小山真司(試合) 

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