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2021-08-05

【TOKYO2020 ボクシング】田中亮明、準決勝で敗退も61年ぶり男子フライ級銅メダル

パーラムの右はシャープで正確だった

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 3日、両国国技館で行われた東京五輪フライ級準決勝は、日本選手で唯一残っていた田中亮明(27歳=中京学院大中京高教諭)が、カルロ・パーラム(23歳=フィリピン)に0-5(27対30、27対30、28対29、27対30、27対30)でポイント負け。決勝進出を逃したものの、銅メダルを獲得した。

文_本間 暁 写真_ゲッティ イメージズ Photos by Getty Images

 下がりながら、しかもうるさく攻めてこないパーラムに、田中はこれまでの3戦とは違い、ある程度落ち着いた攻撃を仕掛けていけるように見えた。速いワンツーストレート攻撃から、左ボディアッパーを、これまでのような圧力をかけずにスムーズに繰り出す。パーラムは間合いを築き、ゆったりとしたテンポながら、放つ右ストレートだけは“間”を切り裂く。
 ラウンド中盤に田中の左フックがクリーンヒットして足をもつれさせたが、パーラムの右が徐々に田中の顔面を浅くだが捉えていく。

今大会、常にカギを握ってきた田中のボディブローだが、この日は前3試合よりの少なかった
今大会、常にカギを握ってきた田中のボディブローだが、この日は前3試合より少なかった

 田中のワンツー、ボディが評価されるか、パーラムの右が印象に残るか、ジャッジの採点が注目されたが、出されたポイントは全員が10対9でパーラムを支持。この結果がパーラムを乗せ、取れていたと思っただろう田中に焦りを生んだ。

 2ラウンド、パーラムはフットワークのテンポを上げていく。田中は今大会のカギを握ってきた左ボディアッパーを放つ。が、パーラムの右カウンターが飛んでくる。顔面へのストレート攻撃をメインに仕掛けていかざるをえなくなるが、パーラムの距離づくりが上手く、なかなか届かない。終了間際、ようやくコーナーに詰めて連打を繰り出したものの、パーラムのボディワークに左右フックは空を切り、バランスを乱してしまった。

 立て続けに0-5と取られてしまった田中は、最終3ラウンド、逆転KOを狙って渾身の左ストレートを繰り出す。だが、ステップと体のずらしが巧みなパーラムを捕まえることはできなかった。

 これまでハイテンポの圧倒的前進とボディブローで勝ち上がってきた田中。が、結果的にこの日は初回に築いたパーラムのテンポに引き寄せられ、付き合ってしまったことが裏目に出てしまった。序盤からボディを攻められなかったことで、パーラムのスタミナを削ることができず、ペースを変えることもできなかった。

健闘を讃え合う両者。ボクシングの美しいシーンのひとつだ
健闘を讃え合う両者。ボクシングの美しいシーンのひとつだ

 しかし、1960年ローマ五輪の田辺清(銅メダリスト)以来、61年ぶりに男子フライ級にメダル(銅)をもたらしたのは、大変な偉業だ。そして、女子の入江聖奈、並木月海と合わせて日本チームが3個のメダルを獲得したのも史上初。田中にはもちろん決勝に進んでほしかったが、彼が男子唯一の砦として孤軍奮闘してきた戦いの軌跡は素晴らしかった。心にしっかりと刻み込まれる熱い戦いぶりだった。

 勝利したパーラムは、もう一方の準決勝を勝ち上がったガラル・ヤファイ(28歳=イギリス)と、7日に決勝戦を行う。テクニシャン・パーラムと、元WBA世界スーパーフライ級王者カリドの弟で、荒々しい攻撃が威力を発揮するヤファイとの激突も注目だ。
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