close

2021-08-13

【しゅりんぷ池田のカード春秋】嗚呼、哀しき無観客試合

SHARE

  • twitter
  • facebook
  • line
何か違和感が…

 なかなか2020年のスケジュールが決まらない中、12球団個別のカードシリーズ、5タイトル目となる広島東洋カープのそれが発売されました。

 同球団の2020年の注目の新戦力と言えば週刊ベースボール2020年4月20日号の表紙を単独で飾った森下暢仁投手。オープン戦では防御率4.20も、15イニングで12球団最多の16三振を奪い、2020年の新人王の最右翼と目されている、期待のドラ1投手です。今回はその森下投手のカードですが、何か違和感が…。そう、同投手の後ろのスタンドに誰も座っていません。この写真は2020年3月8日に本拠地・マツダスタジアムで無観客試合で行われたオープン戦で撮影されたものでしょう。

 私は、これと似た写真を見たことがあります。現在も続いているカルビーのプロ野球チップスが発売を開始したのは1973年夏のことですが、その初年度の中の1枚、太平洋(現西武)の石井茂雄投手の背景のスタンド(おそらく後楽園球場)がほぼ無人。写真の下のほうに少し観客の頭がのぞいているので、まったくの無人ではないのですが、そのガラガラぶりに衝撃を受けました。

 このころのパ・リーグはまさにどん底時代。この73年に西鉄が太平洋、東映が日拓に、さらに翌年には日本ハムに変わり、経営不安がささやかれていました。75年にはパの観客動員数はセの3分の1にまで落ち込んでしまいます。後年、森下投手のカードを見たコレクターたちも、その異様な写真に驚くのでしょうか。「彼のデビューイヤーは新型コロナウイルスがはやった年で観客を入れない試合があったんだ」と彼らに説明できる日が来るといいのですが。
(週刊ベースボール2020年5月18日号 掲載記事再編)


BBM広島東洋カープ ベースボールカード2020 C07 森下暢仁

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事