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2021-09-10

【ボクシング】中谷潤人に挑むアコスタ 悲劇乗り越え勝利を誓う

アコスタとアレリー夫人(右)。夫人も元世界王者だ(写真/宮田有理子)

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アメリカ・アリゾナ州ツーソンで現地明日10日(日本11日)にゴングが鳴るWBO世界フライ級タイトルマッチ。日本の最も新しい世界チャンピオン、中谷潤人(M.T)に挑む指名挑戦者アンヘル・アコスタ(プエルトリコ)は、WBO世界ライトフライ級王座に続く2階級制覇へ「これまでの経験を生かす」と決意を語る。

 新型コロナのパンデミックに、どんなことも一筋縄ではいかない状況が続いている。このWBOフライ級戦も当初は5月末に日本で行われる予定が開催不可能となり、アメリカのトップランク社興行に迎え入れられた。昨秋の王座決定戦も含め、幾たびもの変更を乗り越えた中谷。そして挑戦者アコスタも、逆境を耐えてここに来ていた。

 計量の日。プエルトリコ初(男子)の世界4階級制覇者でアコスタのプロモーターであるミゲール・コット、夫人で元IBF、WBO、WBA(暫定)、WBCの女子フライ級王座を制したアレリー・ムシーニョ(メキシコ)らと姿を見せたアコスタは、この戦いに賭ける思いを語った。

「チャンピオンと戦えることをとてもうれしく思います。彼のことは尊敬していますが、私は勝つためにここに来ました。中谷は距離感がよく、よく動ける選手だと感じます。しかし彼は私のような選手と戦ったことがないはず。私の経験値をこの試合で生かします」

 日本のファンには、2017年5月、全KO勝ちの強打者として来日し、当時WBOライトフライ級王者だった田中恒成(畑中)に防御の穴を突かれ初黒星を喫した姿が記憶に残っているだろう。約半年後の再起戦で、田中が返上した同王座を獲得し、3度防衛。V4戦でメキシコのパワーパンチャー、エルウィン・ソト(メキシコ)に最終回逆転ストップ負けを喫して王座を失っている。その後、フライ級に上げてきた。

「112ポンドは、とても自分に合っていると思います。108ポンドでもいい時間を過ごしましたが、つねにぎりぎりではありました。今の方が自分の体にエネルギーを感じられます」

 コットの縁でアメリカ進出後は名匠フレディ・ローチに師事した時期もあったアコスタは、ムシーニョとの結婚後、彼女の実父ファンの下でトレーニングに励んでいた。ところが7月中旬、ファンが新型コロナに感染し、急逝。悲劇のなか、新たにジョエル・ディアスを指南役として、調整を続けてきたという。アコスタをコットと共同プロモートするゴールデンボーイ・プロのロベルト・ディアス副社長は、「たった4週間ではありましたが、ジョエルとまるでずっと前から師弟であったように、すぐにいい関係を築き、たいへんよいキャンプになりました。それが今回、アコスタ自身の自信の根拠になっています」と明かす。

 今回の勝利を目指すアコスタは、ゆくゆくは、バンタム級までを視野に、英雄コットと同じ世界4階級制覇という夢を持っているという。

「私の目標は、112ポンドの最強を証明すること。のちのちには115、118ポンドでもチャンピオンになることが目標です」。

 ディアス副社長によれば、9月1日に行われたWBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ、井岡一翔(志成)対フランシスコ・ロドリゲス(メキシコ)戦を見たというアコスタは、「もし今回、中谷に勝てたら、いずれは井岡と戦いたい」と意欲を示したという。

「1ラウンド1ラウンドしっかりとること。そして、長い試合の準備も、KOの準備もできています」と宣言する30歳のチャレンジャー。得意の距離でもインサイドでも戦術の包囲網を持つ23歳のチャンピオンを突破できるのか、明日、あきらかになる。

文/宮田有理子

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