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2018-12-13

【2018ジャパンXボウル プレビュー】 IBMのケビン・クラフトHCインタビュー 「No.1QBは政本。我々は選手たちのチーム」

12月17日(月)、アメリカンフットボールの日本社会人選手権「JAPAN X BOWL(ジャパンXボウル)」で対戦する、富士通フロンティア―ズとIBMビッグブルー。両チームのヘッドコーチに、インタビューした。

まずは、オフェンスコーディネーターとQBも兼任するケビン・クラフトヘッドコーチ(HC)の話から。今春、山田晋三前HCの後を受けて昇格した。昨年のこの大会で23-63と記録的な大敗、今季開幕戦でも6-41で完敗した、富士通との戦いをどう考えているのか。そしてHCとして今季新たに取り入れたのは、単純だが大切なことだった。

ジャパンXボウルでは、3度目の対戦となる宿敵・富士通を倒し、悲願の初優勝を目指すIBMのケビン・クラフトHC=撮影 Yosei Kozano

◇過去に何が起きたか、問題ではない

Q,去年のジャパンXボウルの大敗を覚えているか。

クラフトHC
もちろん、覚えている。そんな昔のことではないから。しかし、この質問が、私が今年の試合に向けて何を考えているのかということを意図しているのであれば、それはまったく違う。
私も我々のチームも心構えとして、あれは短期間の記憶でなければならないし、昨年起きたことは、すでに起きてしまった過去のできごと。だから忘れなければならない。 我々は、いま再びこの場所に来るために、数多くのゲームを勝ち抜いて来なければならなかった。どのゲームもとても重要だった。
我々がこれからプレーできることを保証されているのは次の1試合だけだ。過去に何が起きたかということは問題ではない。
今あるのは、今季の基準によってプレーを保証された(ジャパンXボウル)1試合だけだ。だから、我々の心構えはただ一つしかない。次の1試合に焦点を合わせる。どのゲームも必ず異なったものになるのだから、何が起きてもアジャストしなければならない。

Q,同じ質問になるかもしれないが、富士通とは今季の開幕戦でも、大敗している。どうやって戦うのか。

クラフトHC
我々のチームは、本当にチームのためにフットボールをプレーすることに深くコミットしている選手であふれている。
昨年、このフィールドで敗れて、その後、新しいコーチングスタッフ、新しいディフェンスがチームにもたらされた。そしてご存じの通り、春シーズンにさえいなかった選手も多くいる。
どのシーズンも、どのゲームも、我々のアプローチは同じだ。それは常に前に焦点を合わせること。そして我々ができることは、本当に選手たちにかかっている。
そういう選手たちの1人が、キャプテンの中谷(祥吾)。そして今季リクルートできた、もっと若い選手たちだ。
彼らは本当に才能に恵まれていて、自分たちの肉体を(トレーニングで)変えるためだけでなく、我々が何をやりたいのかを理解するために時間を費やしている。彼らは本当にそれをやり遂げてきた。
私は、我々のチームがユニークなのは、このマネジメントの非常に大きな部分が、(誰かに強制されるのではなく)選手たちの手中に委ねられているということだと考えている。どのポジションにおいてもそうだ。
そうでなければ、ここまでは来られなかっただろう。

◇大きかったカウマイヤーDCの存在

Q,ディフェンスコーディネーター兼アシスタントヘッドコーチの、トム・カウマイヤーの加入は大きかったのか。

クラフトHC
トムは、我々のディフェンスにとても大きなインパクトをもたらした。今春、トムはこのチームにやって来た。そして、私は彼を以前からよく知っていたから、彼が何をできるのかが良くわかっていた。
彼は新たなディフェンスをインストールし、多くの選手たちに新しいテクニックを教え、プレースタイルを変えた。
春シーズンには、チームにまだLBやDL,DBの多くが揃っていなかった。秋シーズンに向けて、彼らが合流してきてから、新たなディフェンスのシステムを導入したが、開幕戦前わずか6回の練習しかなかった。
だから私たちのチームは、シーズンと時間が進むことによって、(システムの習熟度が上がって)恩恵を受けてきた。
我々のチームは集まって練習をする機会が決して多くない。だから時間は本当に貴重だった。

Q,今のIBMのエースQBは、あなたではなく政本悠紀なのか。

クラフトHC
そうだ。彼がNo.1QBで、スターティングQBだ。ご存知かもしれないが、彼は自分の仕事(本業)が本当に忙しい。素晴らしい仕事をしている。フットボールとビジネスライフのバランスを取っている。彼は凄いアスリートで、本当に賢い選手だ。
今季も1試合、仕事の都合で出場できないことがあった。それで私がQBとしてプレーをしたが、その後、彼は再び戻ってくることができたし、上手くプレーすることもできた。
やはり彼がまだスターターでいるべきだと感じた。それは直近の(パナソニックとの)試合でも同じことだった。彼はNo.1でなければならない。

Q,富士通の藤田HCもQB出身。両チームのヘッドコーチがQBというのは、ジャパンXボウルでは珍しいことだが。

そうですか。コーチは様々な人生を経てなるもの。
そして私は、皆さんがクオーターバックのように考えて、誰か他の人たちと(フットボールについて)話せるのなら、とても良いことだと思う。彼らQBは、ゲームの中でどんな事態を通り抜けているのか、どのようにゲームを見ているのか、理解してほしいから。
だから、私は……。エキサイティングなゲームになるように願っている。ユニークで素晴らしいゲームに。

Q,少し難しい質問でしたか。

クラフトHC
はい。

今季は開幕直前に右腕を負傷したが、秋季リーグ戦では第6節のエレコム神戸戦でQBとして登場したクラフトHC。クイックリリースからのパスは健在だ=撮影 Yosei Kozano

◇我々は完ぺきなゲームをしなければならない。

Q,富士通のQBマイケル・バードソンについてどう思うか

クラフトHC
彼は、大きくて強い。走れるし、パスも投げられる。
あなたも知っている通り、昨年までのコービー・キャメロンも本当に良いQBで、同じことができた。走れたし、パスも上手かった。多くの試合を勝ってきた。
マイケル・バードソンも、ここまで正しい歩みで来た。本当にパスもランもとても良い。パナソニックのディフェンスに対しても多くのことを成し遂げた。

Q,バードソンを止めるために、味方のディフェンスに何かアドバイスは?

クラフトHC
我々のディフェンスに? グッドラック。とにかくベストをつくせ。
ご存じの通り、富士通のオフェンスは全体がスキルの高いプレーヤーばかり。OLも良いし、レシーバー陣も本当に良い。そして良いランニングゲームもある。だから、我々のディフェンスはベストゲームをやり抜く必要がある。

Q,彼らはオービックの強力ディフェンスも破ったが。

クラフトHC
オービックディフェンスも本当に良い。その彼らに勝ったのだから、富士通相手にプレーすることの困難さが分かると思う。我々は完ぺきなゲームをしなければならない。

◇英語を通訳し、選手たちの理解を求める

Q,クオーターバックとヘッドコーチを同時にやるのはどんなチャレンジだったのか。

クラフトHC
去年まで、私がオフェンスコーディネーターとして(QBを兼任して)やっていたことと、それほど大きな違いはなかったと考えている。
特に、フットボールのゲームの中での意思決定は、非常に攻撃的なマインドによるものだ。だから、簡単な移行だった。
とりわけ、トム(・カウマイヤー)の存在が大きかった。私がやりたいことを言えば、彼は望むようにそれをやってくれる。特に試合の日には、我々は常に一緒に働き、本当にスムーズに仕事をすることができた。

ただ、私が(ヘッドコーチとして)本当に、最も重要だと考えていたのは、我々の選手たちだった。彼らが行うことは彼ら自身にすべて降りかかるから。
すべてのことを理解し、正しい方法で練習をするためには、彼らが真にフットボールにコミットしていなければならない。それは、(このチームが)本当に(指導者ではなく)プレーヤーのチームだから。
それを選手たちに起こすために、私にとって一番困難なことは、単純に、私が英語で話しているということ、そして選手全員が理解できるようにする必要があるということだった。
私も、そしてトムも英語で話す。選手たちはそれを理解しなければならない。
彼らの理解力は本当にアメージングだった。私が話している中で、何を言わんとしているのか、伝えること。本当に重要だった。私はこれが最も重要な問題だと思う。
だから、その時々で、通訳を入れた。私が話すのを止めて、通訳をする必要があった。
(注、ハドルの際、オフェンスはQB政本、ディフェンスはLBケビン・コグランや、DB神津大地が、クラフトHCやカウマイヤーDCの言葉を通訳していることが多い)。
テキスティング(音声の文字起こし)も本当に良いやり方で、きちんと翻訳ができた。

Q,通訳が今季の新しいやり方だったのか。

その通り。 だからGoogle(翻訳に)にとても感謝している(笑い)。

【取材・撮影:小座野容斉】

IBMの中谷主将(右)、山田シニアディレクター(左)と共に、初優勝を目指すクラフトHC=撮影 Yosei Kozano

対戦相手富士通の藤田HCインタビュー

IBMの2018シーズン戦いの軌跡

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