12月9日、関西大学が27-20で明治大学を破ったアメリカンフットボールの東西大学対抗戦、TOKYO BOWL(トーキョーボウル)。19-7とリードを奪った関西大学のペースだったが、第3クオーターに明治大学が意地の反撃。終盤にかけて逆転、再逆転と展開する好勝負となった。ドラマを演出したのは、中学時代からフットボールを続ける両校QBの「先輩・後輩」対決だった。
関東学生TOP8で過去2シーズンは連続で7位に甘んじチャレンジマッチ出場を余儀なくされた明治が、今季2位に躍進した原動力となったのがQB#4西本晟(2年)のパスだった。パスの獲得距離1204ヤード、成功率は64.3%でともに1位と、関東屈指のトップパサーに躍り出た。
この日も、明治の攻撃の1プレー目でWR#5九里遼太(3年)に18ヤードのタッチダウン(TD)パスを決める最高の滑り出しだったが、試合が進むにつれて「関大DLが関東では見たことのない動きで焦ってしまった」と、初めて経験するプレッシャーに困惑し、苦戦を強いられた。
リーグ戦6試合でインターセプトは4本、被インターセプト率2.5%は、TOP8の7人の先発QB中最少という安定した成績を残してきた西本が、この試合だけで4本のインターセプトを喫した。大半の時間帯で、明治がリードされて追う展開。「リーグ戦以上に攻める姿勢を貫いた上でのインターセプトだったので、悔いはない」と、パスを40回投げて205ヤード、2TDを奪った試合を振り返ったが、来季へ向けて大きな宿題を貰った形だ。
大阪府出身で関西大倉中学、箕面自由学園高校出身の西本は「この2週間はリーグ戦以上の気持ちで準備してきた」と話す。関大の#3入佐一輝は、関西大倉中のフラッグフットボール部で2学年先輩。単に関西勢とのゲームという以上に「入佐さんとの対決に勝ってシーズンを終わりたい」と先輩との対戦を心待ちにしていた。入佐も、関東で活躍している西本の噂を耳にしており、「晟とのパス対決を楽しみにしていた」と振り返った。
苦い試合となった西本とは対照的に、入佐はパス34回で25回成功、261ヤードを獲得した。TDは1本にとどまったが、インターセプトはなく、成功率は73%と正確なパスでオフェンスを引っ張りMVPを受賞した。今秋のリーグ戦では、パス獲得距離こそ1位だったが、成功率は54.6%で、9インターセプトだった入佐は、「リーグ戦では思うような結果を出せていなかったので、最後に気持ちよくプレイできた」と振り返った。西本は「めちゃくちゃ上手かった」と先輩に脱帽した。
入佐にとっては、西本以外にも明治のLB#1徳茂(3年)が中学の後輩だった。「(徳茂は)ほぼすべてのプレーに絡んできて、かなりやられた」と、こちらの後輩の活躍にも嬉しそうな表情を見せた。東西に分かれて活躍する元チームメイト同士、ボウルゲームで再会・対戦できたことに、大きな喜びを感じていた。
西本は、小学2年生の頃にチェスナットリーグの大阪タイニィベンガルズでフットボールをはじめた。関西大倉中に進んでからは、平日の放課後は学校のフラッグフットボール部、日曜はベンガルズでの活動を掛け持ちし、ベンガルズでチームメイトとなった現日大の林大希、池田ワイルドボアーズに所属していた現関学の奥野耕世ら、同学年QBのライバルとしのぎを削ってきた。
林とはRBとQBを交互にプレー、二人で切磋琢磨しながらチームを引っ張った。一方で、奥野がQBを務めたワイルドボアーズには負け続け、悔しい思いをしたという。奥野が進学した関学高等部とは、箕面自由学園高2年の秋季関西大会で対戦したが、このときは西本はスターターだったが、奥野が控えだったために、直接対決とはならなかった。
学生日本一を決める甲子園ボウルには林は1年生で出場、奥野も今年、関学のエースとして出場する。西本は一段上の大舞台で活躍する二人には大きな刺激を受けている。「来年は甲子園で耕世に、昔の借りを返したい」という。そのためにも今年積んだ経験を糧として「自分に不足している『決め切る力』を鍛え上げ、結果を出す」と、力強く語った。
【写真・文/北川直樹】
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