米プロフットボールNFLは、現地10月3日(日本時間4日)、全米各地で第4週の14試合が開催された。マサチューセッツ州フォックスボロ―で開催されたサンデーナイトゲームは、タンパベイ・バッカニアーズとニューイングランド・ペイトリオッツが対戦。バッカニアーズが僅差で勝って3勝1敗とした。ペイトリオッツは1勝3敗となった。(写真はすべて Getty Images )
タンパベイ・バッカニアーズ○19-17●ニューイングランド・ペイトリオッツ(2021年10月3日、ジレットスタジアム) スーパーボウル7回優勝の「GOAT(グレート・オブ・オール・タイム=史上最高)」、バッカニアーズのQBトム・ブレイディが、昨年の移籍後初めて、NFL選手としての「故郷」ジレットスタジアムで行われるペイトリオッツ戦に臨んだ。ブレイディは、2001年9月30日(対インディアナポリス・コルツ)にNFLで初先発して以来20年という節目のゲーム。対するのは、師だったビル・ベリチックヘッドコーチ(HC)が、後継QBとして白羽の矢を立てた、21歳下のルーキーQBマック・ジョーンズと、話題にあふれていた。
試合後のベリチックとの会話「明かすことはできない」 17-16とペイトリオッツのリードで迎えた第4Q残り4分34秒からのバッカニアーズのオフェンス。
ブレイディが、3回連続でパス成功をさせ敵陣に入るが、エンドゾーンまで30ヤードの地点から、2ndダウン、3rdダウンで、TDを狙ってWRアントニオ・ブラウンに投げたパスが決まらない。特に3rdダウンで投じたパスは、一瞬、ブラウンがキャッチしたかに見えたが、確保しきれなかった。
結局、Kライアン・サカップが登場。この日4本目となる48ヤードフィールドゴール(FG)を決めた。19-17と、バッカニアーズが逆転した。
ペイトリオッツの最後のオフェンス、自陣25ヤードから残り時間1分57秒、タイムアウトは1回、点差は2点。
ジョーンズのQBとしての真価が問われる場面だった。バッカニアーズの反則に助けられ、ペイトリオッツは敵陣まで進むが、ジョーンズのパスがなかなか決まらない。バッカニアーズディフェンスが、引いて守ることをせずに、インサイドからブリッツを入れていたのが、パスを狂わせていた。
敵陣37ヤード、3rdダウン3ヤードでジョーンズが投げたパスが叩かれた。バッカニアーズは6人がラッシュしていた。4thダウン3ヤード。ギャンブルはできなかった。
56ヤードのFGトライ。ペイトリオッツKニック・フォークの蹴ったボールは、左のアップライト(垂直のバー)に当たり跳ね返った。この瞬間、バッカニアーズが事実上勝利を決めた。そしてブレイディが史上4人目※となる、全球団から勝利したQBとなった。また、ブレイディはこの試合で269ヤードを投げ、通算80,560ヤードで、ドリュー・ブリーズ(元セインツなど)を抜いて、パス獲得距離史上1位となったのだった。
その一方で、この試合のブレイディは、決して良い出来ではなかった。パスは43回投げて22回の成功にとどまった。成功率は51%、最後までTDパスを取り切れず、インターセプトは無かったが、パサーズレーティング70.8は、相手のQBジョーンズを30以上も下回った。
ブレイディは、宇宙人でも神様でもない。特別な場所での特別な相手との試合で、ナーバスになっていたのは間違いない。加えて、この試合は肋骨を骨折した盟友のTEロブ・グロンコウスキーが欠場していた。逆転FGの直前に、WRブラウンをターゲットに2本続けてTDを狙ったパスのうち、少なくとも1本は、グロンコウスキーがいれば彼に投げていたのではないだろうか。
米スポーツ専門局ESPNによれば、ブレイディは試合後の記者会見に数十分遅れて現れた。試合直後にベリチックHCの訪問を受けて20分ほど話をしていたという。その内容についてはブレイディは「個人的な話をたくさんしたが、内容については(公開せずに)そのままにしておくべきだと思っている。とてもプライベートな話だから」と話したという。
「あえて言わせてもらえば。我々の関係については、多くのことが語られてきた。私が目にしてきた限り、本当に正確なものは何もない」とブレイディは語ったという。
※ これまでに、ドリュー・ブリーズ、ブレット・ファーブ、ペイトン・マニングが達成している。
19回連続パス成功 新人ジョーンズが見せた実力 ブレイディの話ばかりになってしまったが、ジョーンズについても触れておきたい。
ジョーンズは、この試合でパス275ヤード。成功率77.5%、2TD、1INTとルーキーとは思えないクオーターバッキングを見せた。少なくともパスに関しては、ブレイディ以上のパフォーマンスを見せた。
ジョーンズにとっては、全米注目のサンデーナイトゲームということを差し引いても、NFL入り後で最も厳しい戦いだった。ペイトリオッツのランは、わずか8回で-1ヤード。ランの援護が完全にない状態で、あのパトリック・マホームズでさえ苦しんだバッカニアーズディフェンスと渡り合った。激しいプレッシャーにさらされ、4サックを喫しながら、最後まで試合を壊さなかった。
圧巻だったのは、第3Q、バッカニアーズに13-7と逆転された直後のペイトリオッツのオフェンスだった。
このドライブのプレーはすべてジョーンズのパス。7回連続で成功させ、逆転TDを奪った。
仕上げのTDパスは、ゴール前1ヤードから。ファーストダウンだったので、RBのダイブに備えて、前陣強調ディフェンスのバッカニアーズをからかうように、素早くきちっとプレーアクションフェイクをいれ、エンドゾーン奥に走り込んだTEジョヌ・スミスに完璧なタイミングとコントロールのパスを決めた。ルーキーQBとは思えない熟練の技だった。
ジョーンズはこのドライブを含めて、19回連続でパスを成功させた。
ベリチックHCが、アラバマ大の盟友ニック・セイバンHCが育て上げたQBを、「ポスト・ブレイディ」として1巡指名した。その決断の正しさを、ジョーンズは証明した。

