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2021-10-08

【NFL】「緊急登板」QBスミスに勝利の女神は微笑まず・・・第5週サーズデーナイトゲーム

◇ラムズ26-17シーホークス◆ 第4Q、シーホークスQBスミスのパスをインターセプトして喜ぶラムズの選手たち。手前は転倒したWRロケット=photo by Getty Images

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米プロフットボール・NFLは、現地10月7日(日本時間8日)、ワシントン州シアトルで第5週のサーズデイナイトゲームがあり、シアトル・シーホークスとロサンゼルス・ラムズが対戦。後半にオフェンスが復調したラムズが、粘るシーホークスを振り切って、4勝1敗とした。シーホークスは2勝3敗となった。(写真はすべて Getty Images )

ロサンゼルス・ラムズ○26-17●シアトル・シーホークス
(2021年10月7日、ルーメン・フィールド)

【得点経過】
シーホークス 第2Q 残り9:04 WR D.K.メトカーフ19ヤードTDパス←QBラッセル・ウィルソン(キック成功) 
(3プレー83ヤード1:37 [0-7]
ラムズ 第2Q 残り1:08 Kマット・ゲイ 31ヤードFG 
(14プレー63ヤード7:56 [3-7]
ラムズ 第3Q 残り7:56 RBダレル・ヘンダーソン5ヤードTDラン(キック失敗) 
(8プレー96ヤード3:07 [9-7]
ラムズ 第3Q 残り4:46 TEタイラー・ヒグビー13ヤードTDパス←QBマシュー・スタフォード(キック成功) 
5プレー82ヤード2:05 [16-7]
シーホークス 第4Q 残り 9:16 WRメトカーフ23ヤードTDパス←QBジーノ・スミス(キック成功) 
10プレー98ヤード5:26 [16-14]
ラムズ 第4Q 残り6:08 RBソニー・ミッシェル2ヤードTDラン(キック成功) 
 6プレー73ヤード3:08 [23-14]
シーホークス 第4Q 残り 2:45 Kジェイソン・マイヤーズ 32ヤードFG
 11プレー46ヤード3:23 [23-17]
ラムズ 第4Q 残り0:24 Kゲイ47ヤードFG
 4プレー3ヤード1:38 [26-17]

◇ラムズ26-17シーホークス◆ 後半、調子を取り戻したラムズのQBスタフォード=photo by Getty Images

ラムズ、後半にオフェンス復調、シーホークスを振り切る

 ラムズのスタフォード、シーホークスのウイルソン、決定力と経験を兼ね備えたQB同士の対戦だが、前半は意外にもロースコアーの展開となった。シーホークスが7-3とリードして折り返した第3Qから試合は動き始めた。

 ラムズが、スタフォードからベテランWRデショーン・ジャクソンへの68ヤードのパスで攻め込むと、RBヘンダーソンのランでTDを奪って逆転した。
 ラムズは次のドライブでも、WRロバート・ウッズへの2本のパスと、ヘンダーソンの29ヤードランで攻め込むと、スタフォードがエンドゾーン右ギリギリのTEヒグビーにパスをヒットして、16-7とした。
◇ラムズ26-17シーホークス◆ 第3Q、ラムズのTEヒグビーがTDパスをキャッチ=photo by Getty Images
 追うシーホークスには問題が発生していた。QBウィルソンが利き腕の右手中指を脱臼したのだった。ウィルソンはほとんどパスを投げられない状態だった。

 第4クオーターに入って、ウィルソンを下げたシーホークスは、控えのジーノ・スミスを投入した。スミスは、ラムズの反則に助けられた面はあるが、6本連続でパスを成功させTDを奪った。緊急事態にも関わらず落ち着いて、しっかりとパスを投げ込んだ素晴らしいドライブだった。

 ラムズもRBミッシェルのTDで加点し再び9点差としたが、シーホークスの次のドライブでもQBスミスのプレーは冴えた。RBアレックス・コリンズのランアフターキャッチを生かしたパスで、レッドゾーンに侵入。次の1stダウンでWRロケットへのTDを狙った。コントロールは完ぺきだったが、ラムズCBロバート・ロッシェルが手の中のボールをかきだした。

 結局このドライブではTDならず、FGで6点差に詰めたシーホークス。ラムズのオフェンスを3&アウトに抑え、タイムアウト3回をすべて使って時計を止めた。残り2分9秒からのオフェンスで、代役QBスミスがヒーローになれるかどうか懸けた。

 スミスはプレッシャーを受けて右に流れながらパス。ラムズのDBニック・スコットがインターセプトした。本来スミスがターゲットにしていたWRロケットが、ラムズの選手と接触して転倒したかのように見えたが、イエローフラッグは飛ばなかった。シーホークスとスミスのつかの間の夢は終わった。

 ラムズはこの後FGで差を再び広げたため、試合終了直前にシーホークスに回ってきたオフェンスには意味は無かった。終わってみれば、ラムズが後半6回のオフェンスシリーズで3TD、1FG。NFCトップ級のオフェンスが本領を発揮したゲームとなった。

不運続きだったスミス、勝利をつかみ損ねる

 QBスミスは、不運な選手だった。

 強豪ウェストバージニア大で、3年間エースQBとして活躍し、3年、4年時は連続してパス4200ヤードを超え、TD73本に対してINT13本という好成績を残した。

 2013年ドラフトでは2巡全体39位指名でジェッツに入団。QBとしては2番目の評価で、ジェッツでは開幕戦からスターターとなった。ルーキー年は8勝8敗、この年のパス3046ヤードは、今でもジェッツのルーキー記録として残っている。
 
 2年目はチームは大きく負け越しながら、スミスのパス成績は改善された。そして、3年目の2015年シーズン開幕前に事件が起こった。スミスがサマーキャンプ中にロッカールームで味方守備選手から殴打され、あごを骨折するという事態となった。

 殴った選手は即解雇されたが、スミスは手術、復帰まで2カ月以上と診断された。この間に、ジェッツがスターターQBに昇格させたライアン・フィッツパトリックは、自身のベストシーズンを送り、ジェッツは10勝6敗という好成績を上げる。
 
 翌2016年、控えとなったスミスだが、フィッツパトリックの不調で第7週のゲームから先発に復帰する。しかしそのゲームでスミスは前十字靭帯断裂という大けがを負ってシーズンアウトとなってしまった。スミスはシーズン後、ジェッツからFAとなった。

 スミスはその後2チームを経て、2019年にシーホークスの控えQBとして契約していた。過去3シーズンはパス5/9で61ヤードという選手だった。
◇ラムズ26-17シーホークス◆ 第4Q、QBウィルソンを好リリーフしたシーホークスのスミスだったが=photo by Getty Images
 毎週、劇的なゲームが続いてきたサーズデーナイトだけに、この日も大逆転劇があるのかと見ていたファンが多いだろう。しかし、スミスは目の前に転がってきた大きなチャンスをつかみかけ、そして放してしまった。

 シーホークスの次のゲームは10日後の10月17日。ウィルソンの負傷は、それまでに回復するだろうか。
◇ラムズ26-17シーホークス◆QBウィルソンを守るため、ラムズDTドナルドをダブルチームするOL陣だが、ほとんどホールディング=photo by Getty Images


◇ラムズ26-17シーホークス◆ 厳しい表情を見せる、シーホークスのキャロルHC=photo by Getty Images

【小座野容斉】

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