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2021-10-08

スペシャル親子対談 相撲を愛し、相撲とともに生きて―。(後編)【BBMフォトギャラリー74】

2014年6月15日=代々木体育館 元白鵬(間垣親方)にとってももちろんムンフバルトさんは子供の頃から憧れた大ヒーロー。親子での対談とはいえ、うれしそうな表情が浮かぶ。

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9月30日に引退して、20年の現役相撲人生に幕を下ろした元横綱・白鵬の間垣親方。今回のフォトギャラリーは、2014年に行われた父の故・ムンフバルトさんとのスペシャル親子対談の後編です。
そこではモンゴルと日本の相撲で第一人者にとなった2人の相撲への愛と帝王学についてじっくり語り合いました。(取材・文=ワンダン・ダワー インタビュー写真=椛本結城)

マゲをつけてる限り日本人も外国人もない

2014年6月15日=代々木体育館 相撲への愛と帝王学についてじっくり語りあった。
2014年6月15日=代々木体育館 相撲への愛と帝王学についてじっくり語りあった。NikonD4s 24-70mm f5.6 1/250秒 ISO800

――この夏場所(平成26年7月)は、お父さんは千秋楽、優勝シーンをご覧になったんですよね。

 人がやってきたことはね、最終的に「ここだ」というときにすべて出る。精神も、体の力もね。息子は今、それができていることを証明してくれた。心・技・体がそろっていると言えるのじゃないかな。

――今場所は特に、お子さんのことなどもあって、つらい状況でしたけれども。

白鵬 まあいろいろ、ご心配、ご迷惑をおかけしましたけどね。でもある意味、場所中だからこそ立ち直れた気もしますね。もし場所後にそういうことがあったら、今も立ち直ってないだろうし、次の場所にも響くかもしれません。今は、やはり大事な家族がいますし、まずそのことだと。そして自分の全うすべき仕事もありますしね。

――千秋楽では、稀勢の里関と優勝決定戦を期待するファンから、相手を応援する「日馬富士コール」も起きました。

白鵬 去年の11月にも稀勢の里関に負けて「万歳」されましたよね。まあいろんな考え方があるでしょうが、私は、外国人とか、日本人とか、そういう思いは全くないんですね。マゲをつけてる限りは、日本人のサムライとしての魂がみんなあるはずですから。やはりそこで頭に浮かんできたのは、双葉山関も先輩から聞いたという「勝って騒がれる力士でなく、負けて騒がれる力士になれ」という言葉で、そうなりつつあるのかなと。だから、それで心乱されることは全くありませんでしたよ。

 私も何とも思わなかったですよ。賢くて、モチベーションが高ければ、そこに勝てるんですよ。一流だったら。それぐらい乗り越える能力と、精神力はあるだろうと。それで負けるようだったら、その程度のものだよと。

ムンフバルトさんに抱かれて笑う、幼年時代の白鵬(右・2歳頃)左は三姉のバースンジャルガルさん。
ムンフバルトさんに抱かれて笑う、幼年時代の白鵬(右・2歳頃)左は三姉のバースンジャルガルさん。



「コイツになら」と思ってもらいたい

――先場所29回目の優勝をされ、30回、さらに大鵬さんの32回も視界に入ってきました。

白鵬 前に、63連勝して、双葉山関の69連勝という大記録に近づいた時も、「超えてはならない」とか、「当時は年2場所。1年足らず(の結果)で破っていいのか」とか、いろんな意見がありました。「記録は破られるためにある」という人もいた。そのとき、大鵬親方に「超えられるものなら超えてほしい」という、力強いメッセージをいただいたことがあります。きっと優勝回数についても、大鵬親方は「白鵬ならば、32回に並んでくれるんじゃないか」と思ってくれるでしょう。ただ、最近、思うんです。新記録達成とか、数字どうこうの問題ではないんじゃないかと。私は大鵬親方には、数年の間ですけど、いろいろアドバイスをいただいたり、かわいがってもらい、食事もよくご一緒させてもらった。相撲界で言う、「恩返し」ですよね。数字どうこうよりも、教えていただいた相撲道というものを踏まえ、人間として、ちゃんとして生きていくと。そういうものが大事じゃないかなと思うんですよ。

――数字だけでなく、人としての在り方というか。

白鵬 大鵬親方の前に、千代の富士関の31回もありますし。そういう意味もあって、夏場所前には初めて九重部屋に出稽古に行ったんです。先人に対する尊敬の念がなければ、黙っていくのは、自分の中では許せないという気持ちがあるのでね。稽古を見てもらって「ああ、ここまでやったのか。コイツにならば超えてもらいたい」という、そういう気持ちになってもらわなければいけないような気がするんですね。

 大鵬親方については、私は現役時代の細かいことは知りませんが、偉大な力士だと聞いているし、息子にも相撲道に導くいろんなアドバイスをしてくれたと聞いている。息子はまだ若いし、時間もある。それ(優勝32回)を達成してくれると思っています。

――お父さんも、モンゴル相撲を背負って立つ存在だったわけですが、「第一人者の心構え」とはどんなものでしょう。

 相撲が国技としてあり、ここまで一般的であり、盛んなのは日本とモンゴルだけでしょう。その中で、私も力士の一人として、横綱として頑張ってきました。そこに必要なのは、「信じる心」と「努力」。それがあったからこそ、モンゴルの力士の先頭として頑張れたんじゃないかな。

白鵬 強くなる、頑張るという信念ですね。

 日本でも、モンゴルでも、民族として、国民が応援している。その信頼に応える、それを受け止める、背負っていくということが一番大事です。

白鵬 大関のときは、「横綱の気持ちは、なった人にしか分からない」と言われても、よく分からなかった。「番付、1枚しか変わらないじゃないか」と軽く思っていましたが、昇進してみたら、もうホントに違う。力的にはそんなに差はないかもしれませんけれども、精神的なところがね。私、今もし大関だったら横綱狙いませんよ(笑)。でもまあホントに、今、父が言った通りの気持ちで頑張っていきたいと思います。私、最近大事にしているのが、「夢」「運」「心」という3つの字なんですね。「豊かな心で、一生懸命やって運をつかんで、夢がかなう」という、この三角形なんですね。


2008年4月横審総見=国技館 大砲親方からアドバイスを受ける白鵬。横綱としての在り方を直接教わったという意味では、大砲親方は、白鵬にとって「心の師」ともいえる。
2008年4月横審総見=国技館 大鵬親方からアドバイスを受ける白鵬。横綱としての在り方を直接教わったという意味では、大鵬親方は、白鵬にとって「心の師」ともいえる。


――お父さんは、今後の白鵬関には何を期待されますか。

 横綱になり、長年やってきて、日本でもモンゴルでも、息子の強さだけでなく優しさもたくさんの人の心に染みついていると思う。だから温かい声援がもらえる。それをこれからも、引退しても持ち続けてくれることを願います。

――白鵬関は、将来は親方として指導される考えは……。

白鵬 私、最近つくづく思うのは、こんな幸せ者はいないということです。モンゴルの大草原で生まれて、日本で相撲のお蔭で成長できた。両国の懸け橋となっていくことももちろん目標ですし、また、1300年にわたる伝統文化の中に名前を刻ませてもらい、成長させてもらった相撲というものを離れることはできないと思うんですね。そこでやはり、何かしらの形で相撲道発展のために貢献していきたいと思っています。今は、言えるのはそれだけですね。

2014年5月25日=国技館 夏場所千秋楽を観戦して白鵬の優勝を見届け、支度部屋で記念撮影に加わるムンフバルトさん。その右は母タルミさん。
2014年5月25日=国技館 夏場所千秋楽を観戦して白鵬の優勝を見届け、支度部屋で記念撮影に加わるムンフバルトさん。その右は母タルミさん。NikonD4s 70-200mm f5.6 1/250秒 ISO800

 今、息子は相撲を頑張っている。モンゴルにも相撲がある。だから相撲を愛し、そのために尽くしてほしい。私たちには相撲に恩返しするという責任があります。今、目の前にあることをまず一生懸命やってほしい。心から愛を持ってね。そうすれば結果はついてくると思います。

※BBMフォトギャラリーは毎週金曜日更新予定です。

 


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