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2021-10-31

【ボクシング】鈴木雅弘が激しい追い上げをかわし、2階級制覇に接近

序盤戦、鈴木(左)の巧みなボクシングが光った

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日本ライト級チャンピオン、吉野修一郎(三迫)への挑戦権をかけた最強挑戦者決定戦8回戦は30日に東京・後楽園ホールで行われ、同級2位の鈴木雅弘(26=角海老宝石)が1位の利川聖隆(25=横浜光)をダウン応酬の混戦の末に2-1の判定で退け、挑戦権を手に入れた。6月に獲得した日本スーパーライト級王座を返上してこの試合に臨んだ鈴木は、来年のチャンピオンカーニバルで2階級制覇に挑む。

 この試合はおそらく日本では初めてペイパービュー(PPV)によるオンライン・ライブ配信されたもの。組まれた4試合はそれぞれ熱戦となる。メインイベントもまた途中から熾烈なシーソーゲームとなった。

 プロ転向からわずか6戦(全勝4KO)で日本王座を手に入れた鈴木が、持ち前の技巧を駆使して先行する。2ラウンドにはダウンを奪うなど、さしたる波乱もなく戦いを進めていたが、6ラウンドにダウンを奪い返されたことで、試合は大きくもつれる。結果的に最終回、鈴木が決死の攻めで優位に戦っていなければ、勝負はどう転んでいたかわからない。

 序盤戦の鈴木はとてもうまかった。長身の利川を自分の距離に固定してコントロールしていく。ことさらに左フックは絶妙で、角度を違え、ときに軽打、さらに上体を大きく振ってハードヒットを強調したり。1ラウンドにして若き老練の味わいを見せた。2ラウンドに奪ったダウンも、利川の下がり際を右フックをダブルで追いかけてのもの。ダメージはそれほどでもなかったが、流れは確実に掌中にした。
利川が逆襲のダウンを奪う。これで試合の流れは一気に乱れた
利川が逆襲のダウンを奪う。これで試合の流れは一気に乱れた

 順風のうちに戦っていた鈴木だが、6ラウンド、利川の長い右ストレートを浴びて倒れ、レフェリーにカウントを数えられる。「自分ではダウンと思わなくて、それも初めての経験だったので気負ってしまいました」。鈴木の余裕はとたんに削がれる。7ラウンドは乱れたところを、利川に追い詰められ、逆転の予感さえ漂った。最終回、鈴木はようやく気持ちを立て直して攻撃的に戦い、そのまま逃げ切った。

「判定は割れるとは思っていました」ときわどい判定にも笑顔で答えた鈴木は、アマチュアの先輩でもある吉野戦に腕を撫す。「吉野先輩は日本チャンピオン以上、世界のランキングボクサー。憧れの選手でもあります」。吉野は主要4団体すべてのトップ15に名前があり、ことにWBOでは5位にランクされる。確かに鈴木としては日本王座の2階級制覇以上に重みのあるタイトルマッチになる。

文◎宮崎正博 写真◎小河原友信

2-1判定ながら勝利を手にした鈴木。次戦で日本王座2階級制覇に挑む
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