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2021-11-11

【アメフト】警視庁「X1スーパー」昇格へ体制整う チアリーダーとピーポくんも後押し

【警視庁 vs 富士フィルム】富士フイルムディフェンスのパスラッシュをかわしてパスを投げる警視庁QB斎藤=撮影:小座野容斉

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アメリカンフットボールのXリーグ、「X1エリア」で警視庁イーグルスが快進撃を続けている。11月7日の富士フイルムミネルヴァAFCとの対戦では、第4Q最終盤の劇的な逆転で4勝目(1敗)を挙げ、悲願のトップリーグ「X1スーパー」昇格にあと1勝とした。創部50周年の今季のチームスローガンは「challenge & unity(挑戦と結束)」。新たに応援に加わった「警視庁チアリーダーズ」と、マスコットの「ピーポくん」も後押ししている。


警視庁イーグルス○21-16●富士フイルムミネルヴァAFC
(2021年11月7日、横浜スタジアム)

【得点経過】

富士フイルム 第1Q 8:37 K河津俊介 26ヤードFG
[3-0]

富士フイルム 第2Q 1:21 QB鈴木貴史 14ヤードTDラン(小松平太郎キック成功)
4プレー80ヤード 1:54 [10-0]

警視庁 第2Q 11:51 QB斎藤詩伸→WR桑原陸 4ヤードTDパス(山口達也キック成功)
4プレー4ヤード 0:26 [10-7]

警視庁 第4Q 9:53 QB斎藤詩伸 4ヤードTDラン(山口キック成功)
11プレー70ヤード 5:45 [10-14]

富士フイルム 第4Q 10:59 QB鈴木貴史→WR別府紘行 19ヤードTDパス(小松キック失敗)
8プレー65ヤード 1:06 [16-14]

警視庁 第4Q 11:47 WR中嶋純平 6ヤードTDラン(山口キック成功)
4プレー33ヤード 0:48 [16-21]
【警視庁 vs 富士フイルム】第4Q残り13秒で、逆転TDを挙げた警視庁WR中嶋=撮影:小座野容斉

第4Q終盤に、逆転、また逆転

 第4Q終盤にゲームが動いた。警視庁は自陣30ヤードからのドライブを、QB斎藤のランとパスで前進。ゴール前4ヤードの3rdダウンで、斎藤がエンドゾーン左隅に走り込んで、14-10と逆転した。しかし、富士フイルムはQB鈴木から、右サイドライン沿いを縦に走ったWR桑原に28ヤードのパスで一気に攻め込んだ。さらに鈴木は4thダウンギャンブルから逆転のTDパスをエンドゾーンのWR別府にヒットした。
【警視庁 vs 富士フィルム】第4Q10分、富士フイルムWR桑原がパスをキャッチし28ヤードのゲイン=撮影:小座野容斉

 残り1分1秒での再逆転、しかし警視庁はあきらめていなかった。この日のキーマンだった恒吉幸紀が40ヤードのビッグリターン。さらに富士フイルムのペナルティーで15ヤードを前進し、敵陣33ヤードからのオフェンスとなった。差は2点でFGで逆転だったが、警視庁はこの日、43ヤードと32ヤードのFGを失敗。少しでも前進しておきたかった。

 斎藤は冷静だった。残り30秒、3rdダウン9ヤードで、 WR清水翔太へ26ヤードのパスを決めて、エンドゾーンまで6ヤードと迫った。残り22秒。警視庁は最後まで攻める気持ちを失わなかった。WR中嶋へのモーションスイープ。中嶋がエンドゾーン左隅に走り込んで再逆転のTD、勝負を決めた。残り時間は13秒だった。
【警視庁 vs 富士フィルム】第4Q11分、警視庁WR清水26ヤードのパスでエンドゾーンに迫る=撮影:小座野容斉

パスで勝ち切った警視庁

 警視庁のフットボールが変わりつつある。この日のスタッツがそれを象徴している。ラン25回87ヤードに対し、パスは31回225ヤード。パスがランを2.5倍以上上回った。最後のオフェンスシリーズでも、タイムアウトは3回残っていたがパスで攻め続けた。

 警視庁といえば、スピードあふれるオプションベースのラン攻撃だ。しかし、この日は富士フイルムディフェンスのマークが厳しく思うようにランが出ない。警視庁は、途中からゲームプランを切り替え、斎藤のパスで勝負に出た。走力のある斎藤はパスにもそれを生かした。

 象徴的だったのは、第4Q残り4分、敵陣30ヤード、3rd&5のパスだ。3つ前のプレーで、ハードヒットを受けてサイドラインに下がっていた斎藤だが、このプレーからフィールドに戻った。ショットガンから左右にロールして、富士フイルムディフェンスのプレッシャーをかわすと、奥に走り込んだWR山下貴也に22ヤードのパスをヒットした。

【警視庁 vs 富士フィルム】第4Q8分、警視庁WR山下貴也に22ヤードのパスがヒット=撮影:小座野容斉

 2013年に警視庁が当時のX1に昇格した時、オフェンスは、ほぼパスが無かった。フィールド最上部のスポッター席にコーチやスタッフがいない試合もあったほどだ。その後、X1で試合をする中でパスも増えてきたが、この試合のようにパスで勝負して決め切るというゲームは無かった。今季一番の快勝だった、第2節のペンタオーシャンパイレーツ戦も、ランで相手を圧倒していた。

 斎藤は「今日の試合に向けて、ずっとパスを練習してきた。シーズンの後半に力は一番伸ばせると思うので。もちろん来年以降のことも見越しています」という。 「今日のパフォーマンスは、70点。序盤が攻めきれなかったところがある」という斎藤は、東京都市大出身の30歳、元々はオプションQBだが、今はパスを絡めたランパスオプションを磨いている。X1スーパーで、国内のトップチームと戦うことになれば、ランだけでは到底通用しないからだ。
【警視庁 vs 富士フィルム】富士フイルムディフェンスのパスラッシュをかわして、パスを投げる警視庁QB斎藤=撮影:小座野容斉

 警視庁の寺島宏一監督は「オフェンスは出ていたので、再逆転されても、活路は見いだせると思っていた」と振り返った。QB斎藤のポケットにとどまらずに左右に動いてパスを投げるスタイルは「練習からあの動き。今日は練習通りに動けていた」という。

 幹部を通じて、昇格の可能性があることを警視庁内にアピール、認知度はだいぶ上がってきた。警視庁の職員有志で発足した「警視庁チアリーダーズ」も、この日はリーグ戦2試合目の「出動」。ハーフタイムショーでも華麗なパフォーマンスを見せた。人気者の「ピーポくん」も一緒に応援した。寺島監督は「庁内で応援してくれる方も増えて、体制が確立してきています」という。
【警視庁 vs 富士フィルム】警視庁を応援するチアリーダーとピーポくん=撮影:小座野容斉

 最終節の名古屋サイクロンズに勝つか引き分ければ、他チームの結果に関係なく、X1スーパー昇格が決まる。寺島監督は「4年前(のリーグ戦で)、名古屋さんには負けているので、気を引き締めて全力で勝ちに行く」と誓った。

警視庁イーグルス

 選手全員が第九機動隊所属の警察官。人事異動で選手がチームからいなくなることも通常だ。警視庁の機動隊は第一から第九まであり、それぞれスポーツチームを持っている。第九機動隊の通り名は「疾風の九機」。隊訓は「至誠」「団結」「剛健」で、イーグルスのチーム名とロゴは、隊の象徴である「大空高く羽ばたく若鷲」に由来する。社会人アメフトチームとしての歴史は古く、1971年8月の創部。今年は50周年で、テーマソング「我ら警視庁イーグルス」も作った。
 2013年に、当時の最上位リーグ「X1」に初昇格したが全敗でX2降格。しかし、2015年に再びX1に昇格して1勝、2016年は2勝をあげた。2018年はX2で全勝してX1エリアに再昇格していた。X1、X1エリアでの通算成績は32戦6勝26敗。
【警視庁 vs 富士フィルム】X1スーパー昇格まであと1勝としてスタンドのファンにあいさつをする警視庁の富沢主将=撮影:小座野容斉
 

【小座野容斉】

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