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2021-11-21

【相撲編集部が選ぶ九州場所8日目の一番】貴景勝、反則勝ちで全勝を守る

貴景勝のマゲをつかんでしまった逸ノ城。勝負に直接関係しなかったが、これによって組む形となり、貴景勝が不利になったとの判断なのか

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貴景勝(反則)逸ノ城

結び前の一番で全勝の貴景勝は逸ノ城と顔が合った。名古屋場所の対戦で貴景勝は首を痛め途中休場。秋場所は頭から当たらず、モロ手突きでいったが、はね上げられて上体が起き、廻しを取られて上手投げで敗れている。貴景勝にとっては中盤戦のヤマとなる一番。

立ち合い、頭から当たって突き放す貴景勝。逸ノ城も突き返すと、貴景勝は張り手も交えて激しく突っ張る。逸ノ城も懸命に回り込んで残し、窮屈な体勢ながら右で前廻しをつかんだ。貴景勝は左からおっつけ、蹴返しで脅かすが、逸ノ城は崩れず、ここから膠着状態となった。

貴景勝は左をおっつけて、右は相手の手首をつかんで、左を使わせないようにしている。逸ノ城は200キロを超える体重を相手に預けてスタミナを奪う作戦。機を見て、逸ノ城が左を差し込むと、貴景勝は右を巻き返す。そこを逸ノ城が一気に前進。必死に左へ回り込んでしのぐ貴景勝だが、最後は力尽きて押し倒されて、土俵下に転落した。

軍配は逸ノ城に上がったが、なぜか物言い。逸ノ城の左足が出るのも早かったが、そのとき貴景勝の体は完全に吹っ飛んでいた。しかし、物言いは最後の場面ではなかった。

協議が終わり、伊勢ケ濱審判長(元横綱旭富士)が館内に説明。

「行司軍配は逸ノ城に上がりましたが、逸ノ城が貴景勝のマゲをつかんで引っ張っており、反則とし貴景勝の勝ちといたします」

スローで見ると、膠着状態になる前の突き合いのとき、たしかに逸ノ城がマゲをつかんで引っ張っている。それが原因で組み合ったとも考えられる。勝負が決する場面以外でのマゲつかみ反則は非常に珍しい。貴景勝が普通に勝っていれば、そのままスルーしたのだろうか。ラグビーのアドバンテージのようなものなのか。

マゲをつかまれた感触はあったのかと聞かれた貴景勝は、「それはありましたよ。でも、相撲は負けているので。負けるよりも勝ったほうがいいけど、内容が大事なので、何が悪かったか見直したい」と振り返った。

因縁の相手に頭から当たったように首痛の心配はなさそうだ。恐怖心はないか?と聞かれると、「怖かったら、相撲をやめたほうがいい」ときっぱり。

照ノ富士と並んで全勝で中日を折り返した貴景勝。優勝を争う意味でも大きな白星となった。

文=山口亜土

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