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2021-11-27

【ボクシング】丸田陽七太が2度ダウン奪い3-0判定勝利。“変則”日野僚に苦しむもV1

日野が頭を下げたところへ丸田が右アッパーをどんぴしゃり

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 27日、東京・後楽園ホールで行われた日本フェザー級タイトルマッチ10回戦は、チャンピオンの丸田陽七太(まるた・ひなた、24歳=森岡)が挑戦者7位・日野僚(31歳=川崎新田)から2度ダウンを奪い、96対92、97対91、97対91の3-0判定勝利。2月に獲得した王座の初防衛に成功した。

写真_菊田義久

 3ラウンドには右アッパーからの連打で、5ラウンドには右フックからの追撃で。丸田は日野を2度キャンバスに倒した。いずれも自信を持っている右強打からのもので、これを決めたのは見事。ポイントもしっかりと押さえ、倒し切れなかったものの、4~6ポイント差の快勝と言いたいところだ。

流れの悪い中で奪った2度のダウンは見事だったが……
流れの悪い中で奪った2度のダウンは見事だったが……

 が、「まったく自分の動きをできなかった」とリング上でファンに詫び、試合後の会見でも反省の弁ばかりが口をついて出た。実際、“振り分ければ”王者につけざるをえないというラウンドも、挑戦者・日野の奮闘ぶりも目立っていたからだ。

 サウスポーで変則タイミングを持つ日野は、初回に左スイングからの右フックを丸田の顔面に叩きつける。見栄えは決してよくない前進ながら、3発4発と手を出し続け、決して威力を感じさせないものの、コツコツと丸田を捉えていく。特にだらりと腕を下げた状態から放つフリッカージャブは、丸田の顔面を再三再四、弾き続けた。

「効いたパンチは1発もなかった。タイミングが読みづらいということもなく、パンチを打ちながら体をぶつけてくるのがやりづらかった」(丸田)

相手を嫌がらせる戦い方。挑戦者は徹底的にそれを演じてみせた
相手を嫌がらせる戦い方。挑戦者は徹底的にそれを演じてみせた

 日野の右フックを警戒してなのか、丸田は左のリードブローをほとんど使わなかった。大雑把に言ってしまえば、右強打狙い一辺倒。「倒したい」という力みと“打とうという気”が丸出しで、自然とスイング気味になって、序盤から日野にダッキングで空を切らされる。上体で打ちにいっているから威力も半減。丸田らしからぬ空転が目立ったのも事実で、決してリズムはよくなかった。そんな中で生まれた2度のダウンは、両者の実力差を如実に表していたのだが、さらに強豪だったら、はたしてそれを許してくれたのか。

 日野にとってのベストは8ラウンド。接近戦でボディ連打から、左右ショートアッパーでアゴをかち上げる。さらに連打のテンポ、強度を上げていく。これは丸田を辟易とさせて下がらせる。だが、その後のパンチが力んで大きくなり、丸田はこれを回り込んだり、いなしたりでかわした。日野もビッグチャンスとわかっているからこその、力の入り様だった。

「倒そうという意識が強すぎて体が硬く、ようやくほぐれてきたと思ったところでダウンを取れて、また倒そうという意識が強くなって……。全然動けなくなってしまった」(丸田)
 ラウンドの立ち上がりは、フットワークでリズム立て直しを図ったものの、いつの間にか動きを止めてしまう。その繰り返しだった。

 不出来の要因は、サウスポーが苦手だからなのか。日野が特殊なサウスポーだったからなのか。丸田は「僕自身が動きを止めてしまったから」と総括したが、佐川遼(三迫)を倒して王座を獲得した試合でもアピールした「強打」のイメージが、自身の中で強すぎるのも一因だと感じる。

 軽快に動き、シャープで重いジャブ、速くて重い右ストレートを次々と決めていく。丸田のベースはあくまでもここにあると思う。この日限定で「強い右を当てたい」思いに憑りつかれたのならば、そこを修正すればいい。が、発想の根本にそれが根づいているのならば、この日の苦闘でぜひ見直してほしい。

 森岡和則会長は、「倒さなくていい」という指示を出し続け、「10ラウンドフルで戦ってほしい」と願っていたという。その想いの中に、“強打への執心を頭から除かせたい”気持ちが含まれていることは明らかだ。

チャンピオンカーニバルで対戦が内定した阿部と。もちろん互いに勝利宣言
チャンピオンカーニバルで対戦が内定した阿部と。もちろん互いに勝利宣言

 セミファイナルで挑戦者決定戦を勝ち上がった阿部麗也(KG大和)は、サウスポーのカウンターパンチャー。「正式に決まれば集中して考えるけれど、もし世界とか別の試合が決まったらそのときは……」と丸田。清水聡(大橋)が返上したWBOアジアパシフィック王座の存在も気になるが、非凡なプロスペクトをもう1度アピールするためにも、丸田対阿部の対戦はぜひ実現してほしい。

 丸田の戦績は14戦12勝(9KO)1敗1分。2度目の日本王座挑戦に敗れたものの、持ち味を存分に発揮して大健闘の日野は19戦14勝(9KO)3敗2分。

文_本間 暁

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