12日、東京・後楽園ホールで行われた日本フェザー級タイトルマッチ10回戦は、チャンピオンの佐川遼(25歳=三迫)が、同級1位の日野僚(29歳=川崎新田)を97対93、97対93、98対92の3-0判定で下し、初防衛に成功した。佐川の次戦は来年4月。『最強挑戦者決定戦』で勝ち上がった同級2位のホープ、丸田陽七太(22歳=森岡)と『チャンピオンカーニバル』(全階級の日本王者と最強挑戦者が激突する毎年恒例の対戦)で拳を交える。
上写真=変則タイミングを持つサウスポー日野(右)を、佐川は中盤以降、ボディブローで痛めつけた
初挑戦のサウスポー日野は、前足(右足)を入れるタイミング、角度を執拗に変えながら、左ストレート、右フックのタイミングもずらす「独特の動き」(佐川)の持ち主。立ち上がりの佐川は、それに戸惑っているように感じた。
しかし2回には佐川もフェイントを交えながら右を出すタイミング、角度を変えて、ペースを手繰り寄せたように思えた。
3回、多少、余裕の見えた佐川は右を出す素振りを見せて左フックを打とうとしたが、そこへ日野の右フックがカウンター気味にヒット。王者はグラついてしまった。
佐川がプレスを強めていく。日野はサークリングしながら、佐川を翻弄しようとする。だが、佐川の右ボディアッパーが、日野を苦しめる。「5回くらいにボディが効いてしまった」と日野は振り返った。
明らかに疲弊している表情の日野に対し、佐川は日野のブローを浴びてもポーカーフェイスをまったく変えない。このあたりも、ジャッジの心象に影響していく。
日野の変則タイミングの右フック、左ストレートに、佐川はカウンターを合わせにいっているように感じたが、その実は逆で「僕のパンチにすべて相打ちを狙ってこられた」(佐川)のだという。
佐川の右強振は、空振りが目立った。だが、ショートの右、さらに日野の入り際に放つ右ボディカウンター、顔面への右アッパーカットは、地味だが日野の体力、気力をどんどん削ぎ落していったようだ。8回にはボディにダメージを受けた日野の体は丸まり、動きも止まってしまった。
佐川はKOを狙って出る。しかし、日野も最後まで相打ち狙いの力強いブローを返す。
佐川は力んで空回るシーンもあったがボディブローに活路を見出し、日野は、「基礎の差。自分は体力もない」と本人が語るとおり、経験の浅さも露呈した。
ほぼ傷のない顔で試合を終えた佐川の次戦は、ホープ丸田との対戦。これまた大注目の一戦となる。
「強い選手とどんどんやっていく。そうしないと強くならないから」。三迫貴志会長の言葉は、選手を成長させると同時に、自信の表れでもあり、続々と結果を残している。
現在、日本・東洋太平洋・WBOアジアパシフィックの三冠を持つライト級の吉野修一郎を筆頭に、田中教仁(ミニマム級)、中川健太(スーパーフライ級)、鈴木悠介(バンタム級)と、5人のチャンピオンを抱える“隆盛”ぶりだ。
さらに“大番頭”の小原佳太、ベテラン堀川謙一も控えており、WBC世界ライトフライ級王者・寺地拳四朗(BMB)も同ジムでトレーニングを重ねて好影響を与えている。
世界チャンピオンこそ不在だが、名門・三迫ジムの攻勢は2020年も続いていきそうだ。
文_本間 暁
写真_菊田義久
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