close

2021-11-29

【ボクシング】なんという大番狂わせ。テオフィモ・ロペスがダウン応酬の末に敗れる

カンボソスの右ストレートがヒット。クールでクレバーな試合運びが光った

全ての画像を見る
 こんな結末が待っていようとはだれもが思わなかったろう。27日(日本時間28日)、アメリカ・ニューヨークのマディソンスクエア・ガーデン内シアター“Hulu”で行われた4団体統一世界ライト級タイトルマッチ(WBCはフランチャイズ王座)12回戦、チャンピオンのテオフィモ・ロペス(アメリカ)対ジョージ・カンボソス・ジュニア(オーストラリア)の一戦は、戦前の予想を大きく覆し、カンボソスが現役トップスターの一角、ロペスを2-1の判定で破り、新チャンピオンとなった。昨年10月、最強のテクニシャンであるワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)を破り、頂点に駆け上がったロペスはわずか1年で在野につき落とされることになった。

驚きの連続が初回から連なった

 2021年のアップセット(番狂わせ)は、この10月、中量級ピカ一のオールラウンダー、マイキー・ガルシア(アメリカ)がサンドル・マルティン(スペイン)に苦杯を喫した戦いで決まりだと思っていた。それが、だ。なんとロペスまで負けてしまう。ロペス自身の責任とは言えないにしても延期に次ぐ延期、放映するメディアの変更などの騒ぎに巻き込まれ、あるいはプライベートでもさまざまなな言われ方をするロペスだが、まさかカンボソスに足元をすくわれるとは思わなかった。この日の前まで19戦全勝10KOながら、ここ最近2試合は2-1判定勝ちともたつくことも多い。切れ味抜群のロペスなら簡単に倒してしまうのではないか、というのが誰しもの結論だった。

 ところが、驚きの始まりはオープニングラウンドからやってくる。2年ぶりに地元のリングに立ったロペスはいきなりのビッグライト、さらに左フックと飛ばしていく。さらに右2発の好打して、さあ、これからというときだ。オーストラリア人の切り返しの右を浴びて、なんとダウンしてしまうのだ。
強烈な右を浴びたロペスがダウン。これが驚きの始まりだった
強烈な右を浴びたロペスがダウン。これが驚きの始まりだった

 これでリズムを見失ったか、若きKOスターの攻撃はすっかり単調になってしまう。踏み込みが浅く、パンチがほとんど届かない。また、カンボソスがうまく戦った。ゆっくりと後退して距離をとり、その後は左右にサークルする。ロペスはこのターゲットを追いかけきれなかった。カンボソスは機を見て素早く飛び込むと、鋭い右クロス、さらにこれに左フックを加えた短いコンビネーションを打ち込む。その攻撃のほとんどがラウンド終盤だから。また見栄えもよかった。ロペスは次々にラウンドを失っていった。
10ラウンド、ロペスが右2発でダウンを奪い返す。逆転の気配が漂ったが…
10ラウンド、ロペスが右2発でダウンを奪い返す。逆転の気配が漂ったが…

終盤の反撃も流血で寸断される

 8ラウンドに入って、カンボソスに疲れの色が見えた。ロペスはほんの片りんながらその本領を見せ始める。ロペスの連打で挑戦者が弾き飛ばされ、さらに左のボディブローからのコンビネーションが決まる。ロペスの手数は上がらないが、強打が光り、9ラウンドにカウンターで決めた右アッパーも光った。さらに10回、強烈な右ストレート2発で、ついにカンボソスからダウンを奪った。

 逆転劇の期待感にシアターが包まれた11ラウンド。だが、一瞬のうちに期待感の糸は切れてしまう。ロペスは左目を大きくカットし、大流血してしまうのだ。すると、その攻撃はまるで精彩がなくなった。カンボソスは無難に残り時間を消化していった。

 採点は意外にも1者が114対113でロペスの勝ちとしていたが、残る2者は115対112で順当にカンボソスを支持していた。

 ロペスは以前より減量苦が伝えられており、この後はスーパーライト級に転じる可能性がある。17戦目(16勝12KO)の初黒星だが、まだ可能性の底を見せたわけではない。また人気王者の陥落で、ロマチェンコを始め、ジャーボンテ・デービス、ライアン・ガルシア、デビン・ヘイニー(いずれもアメリカ)らスターひしめくライト級がどうなっていくのか。1年後の勢力図は予想さえできない。

文◎宮崎正博(DAZN観戦) 写真◎ゲッティ イメージズ

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事