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2019-12-15

【海外ボクシング】スーパースター誕生か!? テオフィモ・ロペスが無傷のまま王座奪取

14日(日本時間15日)、アメリカ・ニューヨークのマディソンスクエア・ガーデンのテレンス・クロフォード対エギディウス・カバラウスカス戦のアンダーカードで行われたIBF世界ライト級タイトルマッチでは、不敗の挑戦者テオフィモ・ロペス(アメリカ)がチャンピオンのリチャード・コミー(ガーナ)を2回1分13秒TKOで破り、キャリア15戦(全勝12KO)で初の世界タイトルにたどりついた。

上写真=一瞬のチャンスを逃さず、世界奪取を果たしたロペス(右)

相打ちの右ストレート一撃ですべてが決まった

 こんなに早く、ドラマティックにニュースターが誕生するとは、多くのファンは思わなかったかもしれない。拮抗した展開に小刀でわずかなほころびを作ると、一気に壁を切り崩す。グアテマラ人の両親のもと、ブルックリンに育った22歳の俊才の才能こそがなしたものだ。

 静かな立ち上がりだった。身長、リーチで上回るコミーがその距離をキープしながら戦っていた。このチャンピオン、ここまで31戦(29勝26KO)で2度の黒星を喫しているが、いずれも1−2のスプリットデシジョンでのもの。いくら素質に恵まれているとはいえ、ロペスが攻略するためには、しっかりとした“手がかり”がほしい。それはボディ攻撃か、強弱を使い分けたコンビネーションか、それともロングレンジからの一気に加速させるステップインか。そんな見きわめもないまま、決着がつく。

 2ラウンドだった。ロペスの小さな左フック。強くはないが、タイムリーにプッシュされたこのパンチでコミーはバランスを崩す。わずかに焦るコミーがその直後に右を狙った瞬間だった。ロペスの右が相打ちのタイミングで飛び込んだ。たまらずヒザをついたコミーが立とうとすると、前につんのめる形でキャンバスに転げ落ちる。それでも立ったコミーだが、再開直後にロペスのつるべ打ちにあって反応できず、レフェリーがここで試合を止めた。

「どっちが勝っても不思議じゃない。それもKOで決着がつく。だから万全の準備をしてきたんだ」と語った。7月、中谷正義(井岡)に判定勝ちしてこのタイトルへの挑戦権を手に入れたが、中谷の粘りに苦しんだ。うなぎ上りだった評価も急停車だっただけに、ロペスにはこの会心の王座奪取劇がよけいにうれしい。

「夢がかなった。不可能なものなど、この世にないんだ」

 無敵ロマチェンコとの対戦を聞かれても、ロペスは威勢が良かった。

因縁のライバルを問題なく完封したコンラン(左)

因縁の対戦はコンランが快勝

 フェザー級10回戦では、アマチュア時代から引きずる因縁の対決が実現した。リオ五輪バンタム級準々決勝で、ウラジーミル・ニキティン(ロシア)に判定で敗れたマイケル・コンラン(アイルランド)は激怒した。シャツを脱ぎ捨て、なおかつ中指を立ててこの判定に抗議した。多くの観戦者、マスコミも大多数がコンランの勝ちとみた戦いだった。

 だから、コンランはニキティンのプロ転向と同時に対戦を熱望したし、勝ってボロクソに言われたニキティンとしても気持ちは同じ。プロキャリアで13戦目(全勝7KO)になるコンランに対し、自身は3戦、6回戦までの実績しかないが、この10回戦に果敢に挑んできた。ただし、試合は実力どおりの展開、結果に終わる。

 メインイベントに出場したクロフォード同様、本来の右構えと左構えを自在に使い分けるコンランが、クラウチングスタイルで迫るニキティンを難なくコントロールしていく。左ストレートに、小さな右フックが効果的。8ラウンドにはオーソドックススタイルからの右ストレートでぐらつかせるなど、憎きライバルにつけ入るスキを与えなかった。

 危なげなく厄払いをすませたコンランだが、この先を考えると、多くの課題を残したまま。決め手に欠き、手際のいいペースメイクもトップクラスに通用するかどうかは疑問。アイルランドの熱狂から、世界に響くボクサーに脱皮するためには、もっと積み上げていかなければいけない何かを探す必要がある。

 スーパーミドル級8回戦には、強打のエドガー・バーレンガ(アメリカ)が登場、セサール・ヌネス(スペイン)から2度のダウンを奪って、2分45秒でTKO勝ちした。バーレンガはデビュー戦から続けている連続ワンラウンドKO勝ちの記録を『13』に伸ばした。

 マイナータイトルながらも『世界挑戦』の実績を持つヌネスを問題なく片づけたバーレンガは、記録更新ばかりに心を埋没させてはいない。

「次からはもっと長いラウンドを戦いたい。ただ、今回だけは記録にこだわりたかった」

 実は試合に備えてのトレーニングキャンプの途中、トレーナーをつとめるいとこが何者かに殺害された。いとこの思い出をかみしめる意味でも、初回KOにこだわったという。

 イベンダー・ホリフィールドにスカウトされてプロ入り、今年4月にトップランク入りしたバーレンガの快進撃は、今後も続くのかどうか。

強打のバーレンガ(右)は13連続ワンラウンドKOをマーク

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