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2021-12-06

スマイルスポーツ・アスリートインタビュー 【ノルディック複合】渡部暁斗が語る北京2022冬季オリンピック 「金メダルを獲ることが最大の目標」

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渡部暁斗選手は2021年3月、世界選手権の個人ラージヒルで銅メダルを獲得。長きにわたりトップレベルで結果を残してきた(photo/GettyImages)

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渡部暁斗選手は2014年ソチオリンピック、2018年平昌オリンピックと、2大会連続でノルディック複合個人ノーマルヒルで銀メダルを獲得している。ワールドカップでは2017-18シーズンに総合優勝を果たすなど、長きにわたって世界のトップで活躍。悲願の金メダルを目指す北京オリンピックを前に、その胸の内をスマイルスポーツのインタビューで語ってもらった。


※取材は2021年9月9日にオンラインで行いました

――小学生の時に地元の長野でオリンピックを見たことが競技を始めたきっかけだそうですね。

「そうです。地元の小学生は招待を受けて観戦することができたので、白馬村で行われた競技はほとんど観に行きました。そのなかでも特に印象的だったのがジャンプです。ジャンプは競技としても面白いと思って見ていたのですが、金メダルを獲得したスキージャンプの団体戦を見たことが競技を始めるきっかけになりました」


――世界やオリンピックを視野に入れるようになったのはいつ頃からですか?

「世界レベルで戦うということは、常に頭に入れていました。視野に入ってきたから意識したのではなくて、最初から意識していたと思います」

――きっかけが長野オリンピックだっただけに、最初から目指す舞台は世界だったのですね。

「長野オリンピックのジャンプ団体の日は、映像で見る以上に現地はすごい吹雪でした。あの日はブレーキングトラックと呼ばれるストップする場所、日の丸飛行隊が抱き合っていたジャンプ台の正面の場所で見ていたんです。そこは吹雪の時には一番不向きな何も見えない場所なので、僕のオリンピックの印象はあの歓声と熱気だけなんです。実際のジャンプは見ていないのですが、あの歓声と熱気が僕の中の何かのスイッチを押した形になりました。オリンピックの雰囲気を肌で感じたことによって、この舞台に立ちたいという気持ちが芽生えたので、最初から世界の舞台への憧れがありました」


ノルディック複合はジャンプとクロスカントリーとで必要とされる能力が異なるため、総合的な身体能力が求められる(photo/GettyImages)

――ここまでのキャリアで、数多くの大会で優勝してきていますが、印象に残っている大会を教えてください。

「いろいろありますが、一つ挙げるとしたら2018年の平昌オリンピックで銀メダルを獲ったノーマルヒルのレースですね。順位やメダルの色よりも、自分が掲げた目標に対してプロセスもしっかり踏んで、一歩手前までいくことができた。金メダルにはたどり着けなかったのですが、あの時点ではすべてを出し切ったレースでした。負けた相手のエリック・フレンツェル選手(ドイツ)は、同級生でもあり、彼の所属クラブがある都市と白馬村が姉妹都市だったり、いろいろ繋がりがあって仲良くしている選手です。そんな彼とソチオリンピックに続いて優勝争いができて、より仲も深まった感じもしますし、自分のなかではベストに近いレースだったかなと思っています」

――昨年からコロナ禍によって、生活環境に変化が生まれています。試合に臨む上で、ご自身の中に何か変化はありましたか?

「すごくいろいろなことを考える時間になりました。スポーツの存在意義を疑ったり、自分の原点を見つめ直してみたり、根っこの部分を振り返ることができたかなと思います。少し前までは結果を出したい気持ちがどんどん強くなっていて、競技にのめり込むうちにスポーツを楽しむ気持ちを忘れていました。考える時間が増えたことで、忘れていた大切なことを思い出すことができました。それが一番の変化だと思います」

――ネガティブになりがちな状況もポジティブにとらえられたのですね。

「はい。コロナ禍ではスポーツよりも優先しなければいけないものがたくさんあって、世の中がうまく回っているからこそ、スポーツは存在してもいいんだと思ったときに、自分に何ができるかと考えました。スポーツ選手としての自分ができることはスポーツしかない。せっかくそれをやらせてもらえているのだから、暗い気持ちでやっても仕方ない、せめて楽しくやりたいと思いました。スキーを始めた頃は、ただ滑るのが楽しくて、うまくなるのも楽しくて、“楽しい”という気持ちで突き動かされていたはずなのに、どこかでそれを忘れてしまっていたんだなと思いました」


渡部選手は「自分は一発勝負のオリンピックよりも長丁場のワールドカップ向きの選手」と分析する(photo/GettyImages)

――渡部選手自身、これまでオリンピックには4度出場しています。世界選手権やワールドカップとの違いはどんな部分ですか?

「4年に一度のラッキーボーイを決める日という感じですかね」

――ワールドカップは長い期間戦いながらチャンピオンを決めます。オリンピックは一発勝負の難しさがありますね。

「それはすごく身に染みて感じています。長野の県民性の話にも通じますが、時には『なから(大体)こんなもんでいい』と切り替えながらやっていく部分があるので、僕はワールドカップ向きの選手だと思います。逆にそれがオリンピックでは詰めの甘さになってしまっているのかなと感じます。ワールドカップの総合優勝は獲れて、競技のキャリアとしてすごく誇りに思っています。でもオリンピックではまだ金メダルを獲れていない。準備の仕方や心構えなど、どうやってそこに照準を合わせていくかを今は考えています」


オリンピックは2014年ソチ、2018年平昌と2大会連続銀メダル。2022年の北京では悲願の金メダルを狙う(photo/GettyImages)

――北京オリンピックに向けて重点的に取り組んでいるのはどのようなことですか?

「低酸素での高所順化に取り組んでいます。北京の選手村とレース会場の標高が少し高めなので、同じような標高下でトレーニングをして、その標高で動ける体に慣れていくということを実践しています。あとは睡眠時に、低酸素テントなどを利用して、その標高でどれだけ回復できるかという、回復力を高めることにも取り組んでいます」

 ――競技の技術だけではなく、調整の部分に取り組んでいるのですね。

「それが一番足りなかった部分と言いますか、今までは“これくらいの準備でいい”という感じでオリンピックに向かっていました。それでは金メダルを獲れなかったので、詰めの甘さをどうしたら解消できるかと考えて、こうしたことに取り組んでいます」

――では最後にこれからの目標を聞かせてください。

「北京オリンピックで金メダルを獲ること。これが最大の目標です。2大会連続銀メダルの借りを返すという気持ちではなくて、シンプルにやったことがないことをやりたい。だからオリンピックの金メダルを獲りたいと思っています」


こちらのインタビューのほか、地元長野県での幼少期のスキー・ジャンプ事情や、ジャンプから複合にシフトしたきっかけ、複合競技の面白さ、長くモチベーションを保つ秘訣、ルーティンについてなどカラー4ページにわたるインタビューは、12月1日に(公財)東京都スポーツ文化事業団が発行した『スマイルスポーツVol.88』に掲載されています。


わたべ・あきと
1988年5月26日、長野県白馬村出身。白馬高校在学中の2006年にトリノオリンピック出場を果たし、2009年世界選手権団体(湊祐介、加藤大平、小林範仁)では日本の14年ぶりの金メダル獲得に貢献。2014年ソチオリンピック、2018年の平昌オリンピックにて、ノルディック複合個人ノーマルヒルで2大会連続の銀メダルに輝いた。ワールドカップでは2017-18シーズンに総合優勝を飾るなど、通算19勝をあげている。

 

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スマイルスポーツ誌のインタビュー特別編!
渡部暁斗選手の素顔が分かるQ&Aインタビュー動画と読者の皆様へのメッセージはこちら
https://youtu.be/2qMNepG4vWo

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