帝京大の遠藤をお忘れなく!――続いて注目選手を。萩原さんが前回挙げた佐伯涼選手(東京国際大)は7区区間賞を獲得しました。
萩原:佐伯選手から「名前を挙げてくれてありがとうございます」と言われて良かったなと。2年連続当てたらすごいですよね。若干プレッシャーではありますが、法大の鎌田航生選手(4年)。前回、1区区間賞で緊張した感じのインタビューも良かった。あとは早稲田はって話じゃん。ベストメンバー組んだら相当強いよ。そのなかでも井川龍人選手(3年)。九州縦断の旅で井川選手のお父さんにお世話になって、それ以来注目しています。
たむじょー:全日本の1区で一緒に走ったことがあって、井川選手が確かケガ明けで僕は万全だったんですけど負けてしまいました。そこから強い選手だなと。
萩原:どこら辺で強いと感じるの? フォームとか、圧とか?
たむじょー:集団のなかで走っていると、誰がどんな感じで走っているかはだいたい分かります。1年生でも体が大きくてダイナミックな走りをするなと。僕は4年生なのにビビっちゃいました。
――Mさん、たむじょーさんの注目選手は?
M高史:国士大のライモイ君のほうのヴィンセント選手(4年)。先日、国士大にうかがったのですが、添田正美監督によると、日本人よりも日本人らしいケニア人だそうで、気配りとか周りの人への心遣いがすごいらしいんですね。日本語も勉強していて、チームメイト思い。ただ、優しすぎるので、他の留学生の風よけにされちゃったりで、最後の箱根は花を咲かせてほしいと添田監督も仰っていました。ナイスガイなヴィンセント選手に現状打破してほしいなと思っています。
たむじょー:帝京大の先輩として挙げたい選手がいまして。遠藤大地選手(4年)をご存じでしょうか。1年のころから3年連続3区。3区の日本人最高記録(2年時、1時間01分23秒)を持っています。毎年、3区で日本人トップ争いをしているんですが、これがあんまり目立っていなくて。箱根ファンは「なぜ帝京の遠藤をもっと取り上げてくれないのか」って思っているそうなんです。前回も14位でタスキをもらって区間4位、8人抜きで6位に。2年生のときは田澤選手にも勝っています。遠藤選手のすごいところは厚底シューズを履かないんですよ。3年連続ミズノの「薄底」で快走し続けている。実業団に進まないと聞いているので、最後は大いに目立ってほしいです。
萩原:さすが元箱根ランナー。かぶっている選手の情報は濃いね。
たむじょー:普段は静かで、めちゃくちゃ緊張しいで合宿のご飯のあとに指名されて一言、という帝京大のルールがあるのですが、冬でも毎回、汗をかくくらい緊張してたんですよ。でも走りでは先輩を置いていくぞ、という感じでめちゃくちゃ強い。区間賞を取ってもらって遠藤のインタビューが聞きたいな。
M高史:たむじょーさんは一言のときはベラベラしゃべっていたんですか?
たむじょー:監督の表情をうかがいながら、監督が笑っていたらオッケーだなと。笑っていなかったらすぐ戻りました。
一同:笑。
左から鎌田航生(法大4年)、ライモイ・ヴィンセント(国士大4年)、遠藤大地(帝京大4年)
4区が強いところが往路優勝へ近付く――今までのトークを踏まえて、箱根2022はどんな傾向になると予想しますか。
M高史:5区、6区で順位が大きく変わるのかなと思います。萩原さんもたむじょーさんも分からないと仰っていたとおり、各大学の戦力が拮抗していて、故障者が出たら優勝争いからシード争いまで落ちるようなこともあり得ます。逆に、状態が万全だったら、戦前にそこまで注目されていなかったチームが一気に上位にくるかもしれない。箱根の醍醐味は山だと思っているので、4区までと山区間が終わってからの7区からでは、レース展開が全然変わってくるのかなと。ハイペースになるかは、コンディション次第ではありますが、向かい風のときに選手がどんなシューズを選ぶのかも気になります。
萩原:今ってスーパースターがいないですよね。今までは10000m27分台だとスーパースターで5000m13分台出したらすごいという認識だったけど、今は27分台が結構いて13分台もみんな出している。こうやっていろいろ力が拮抗している状態で、三浦選手もスーパースターではありますが、一段上を飛び抜けた選手がスーパースターと呼ばれていくんじゃないかな。誰かは分からないけど、それが生まれる駅伝になるのではないかと思いますね。僕、1年生から出てくる気がするんですよ。シンデレラストーリー出てほしいなと。
たむじょー:「ミスしたところが負ける」と、ある監督が仰っていて、一人でもミスをしてしまうと優勝からシード権争いだったり、圏外になってしまったり。一人ひとりが、誰かに頼るのではなく、絶対にミスをしないという気持ちで、「自分が区間賞を取る」ぐらいのつもりで行ってもらいたいです。レベルが高いなかで、ミスしなかったところが貯金をためて上位に行くのかなと思います。
萩原:たむじょー君的にミスしたら一番やばい区間は?
たむじょー:5区は定番ですが、意外と4区ですね。1区は遅れられない、2区はエースを置く、3区はその勢いで行って、5区が山。4区は忘れがちなんですけど、実は大事な区間だと思っていて、4区が強いところが往路優勝に近付きます。ここにどれだけ強い選手を置けるかがポイントなのかと。
――前回は往路優勝した創価大が4区でトップに立っています。
たむじょー:あそこで流れが変わりましたね。
M高史:嶋津選手の走り良かったですよね。細かいアップダウンの多い区間でもあります。最近の傾向だと、往路からガンガン攻めた上で、残りも粘り切るというのもありそうです。
勝負の分かれ目となりそうな4区に注目。前回の4区で首位に立った嶋津雄大(創価大4年)――最後に、OBとして選手へのエールをお願いします。
M高史:僕はマネジャー出身ということもあって、メンバーに入れなかった部員、マネジャーの皆さんへ。コロナ禍で一生懸命、部活を続けてきたと思うので、ぜひ誇りを持って、チームのために、一人ひとりが自分の役割を「打破」してほしいなと思います。それが、選手の1秒1秒の頑張りにつながるので。特にマネジャーさん。運営管理車で監督が飛ばす檄の元となる「何秒差、区間何位、過去の先輩と何秒差」という情報はマネジャーさんが主体となって、なるべく早く、正確に収集しています。いかに細かい情報を仕入れるか、一致団結して現状打破してほしいと思っています。
萩原:各チームの力が拮抗している今回の箱根は、スーパースターが生まれる予感がするんですよ。注目を浴びるチャンスだから、突っ込んで走ってほしい。それに耐えられる靴もあるし、走力もある。無責任だけど、ガンガン突っ込めだね。
たむじょー:せっかくの大きな舞台なので悔いは残してほしくないです。「僕のせいで順位を落としてしまった」と言っている選手も多いのですが、箱根を走ること自体がすごいこと。順位はどうしてもついてしまうものなので、自分の思った順位ではなくても、全国の人が楽しみにしている舞台を走ること自体が、ありがたいことだと最後は思ってほしいです。一人ひとりが主役ということで、皆さんに目立ってほしいなと思います。
神奈川大OB萩原拓也(ポップライン)はぎわら・たくや◎秋田経法大附高(現・明桜高)→神奈川大。大学4年時に付き添いで箱根駅伝8位に貢献。卒業後は俳優を志し、のちに芸人に転身。NHK大河ドラマ『いだてん』出演。ポップラインとして活動し、設楽悠太選手のそっくり芸人“もしか設楽”としても活躍。コロナ禍で母校に行けておらず、今回はあえて神奈川大トークなし。
駒澤大OBM高史えむ・たかし◎世田谷学園高→駒大。駅伝主務として4年時に全日本大学駅伝優勝を経験。福祉の仕事を経て、川内優輝選手(あいおいニッセイ同和損保)のものまねで人気に。ものまねアスリート芸人としてレースに出場。WEBメディア4years.で陸上関連の連載を執筆。前々回の箱根では駒大の4区と8区の給水を担当。
帝京大OBたむじょーたむじょー◎市船橋高→帝京大。大学2年時に箱根8区を走り、区間11位(チームは総合9位)。卒業後の20年3月にYouTubeで「たむじょーチャンネル」を開設。YouTuberとしての自己ベストは800m1分51秒37、1500m3分48秒51、フルマラソン2時間26分09秒(共に2021年)。
箱根駅伝2022完全ガイド(陸上競技マガジン1月号増刊)