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2022-01-24

【NFL】チーフスvsビルズ「史上最高のプレーオフゲーム」を全米に見せたのか  AFCディビジョナルラウンド

【チーフス vs ビルズ】チーフスTEケルシーがQBマホームズから、勝利を決めるTDパスをキャッチ=photo by Getty Images

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米プロフットボール・NFLは、現地1月23日(日本時間24日)、プレーオフのディビジョナルラウンドの2日目を迎えた。AFCのチーフス対ビルズの1戦は、試合最終盤の得点の応酬から延長オーバータイム(OT)にもつれ込み、チーフスがQBパトリック・マホームズのタッチダウン(TD)パスで試合を決めた。チーフスはAFCチャンピオンシップに4年連続で進出、すべてホームでのチャンピオンシップ出場はNFL史上初となった。
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 ディビジョナルプレーオフは、22日にベンガルズと49ERSが、23日にはラムズが、すべて試合最後のプレーでフィールドゴール(FG)を決めて勝っており、4試合すべてがラストプレーで勝敗が決まる劇的な幕切れとなった。米のメディアの間では「史上最高のプレーオフではないか」という議論が起きている。(写真はすべてGetty Images)



AFCディビジョナルプレーオフ

カンザスシティ・チーフス○42=延長OT=36●バッファロー・ビルズ 
(2022年1月23日 カンザスシティ アローヘッド スタジアム) 

 チーフスのパトリック・マホームズ26歳とビルズのジョシュ・アレン25歳。NFLを代表する2人のQBと、彼らが率いたオフェンスが、技と力と知恵とガッツの限りを尽くして戦ったゲームは、アメリカンフットボールの歴史に残る名勝負となった。

 序盤からTDの応酬が続いた。ビルズがRBデビン・シングレタリーのランで先制すれば、チーフスはマホームズのランTDで追いついた。2TDづつ奪った両チームは、同点で後半へ折り返した。しかし、後から思えばこれは「点の取り合い」のうちに入らなかった。
【チーフス14-14ビルズ】


 第3Qはチーフスが1TD(エクストラポイントは失敗)1FGで9点、ビルズは1TDで7点を加点し、第4Qに突入した。
【チーフス23-21ビルズ】

 第4QチーフスはWRタイリーク・ヒルが45ヤードのパントリターン。しかし、TDには結びつけられずFGで終わった。チーフスのリードは2点から5点に広がったが、ビルズにとっては痛くも痒くもなかった。QBアレンは、第2Qには1分15秒で、第3Qには、わずか10秒1プレーで75ヤードのTDを奪っていた。いずれもWRガブリエル・デービスにパスを決めていた。「その気になればいつでもTDを獲る」アレンはそんな顔をしていた。
【チーフス26-21ビルズ】
【チーフス vs ビルズ】=photo by Getty Images
 ビルズはじっくりと攻めた。7分1秒かけて17プレーでTDを奪って逆転した。WRデービスの、この試合3本目のTDレシーブだった。さらにアレンは2ポイントコンバージョンも決め、第1Q以来のリードを奪った。
【チーフス26-29ビルズ】

試合時間残り2分からのクライマックス

 この時点で残り時間は1分54秒。これがクライマックスの始まりだった。
 チーフスは、自陣36ヤードからの2ndダウンでマホームズが、アクロスルートを走ったWRヒルに12ヤードほどのパスを投げた。キャッチしたヒルはそのまま縦に切れ上がって悪魔のようなランアフターキャッチ。50ヤード以上を走り切って、TDとした。キックも決まってと、チーフスが再び逆転した。
【チーフス33-29ビルズ】
【チーフス vs ビルズ】=photo by Getty Images
 TDが必要な4点差だが、ビルズのアレンはまったく慌てなかった。残り時間1分2秒に加え、タイムアウトが丸々3回残っていた。 
 チーフスDB陣に完全にカバーされている本来のエースWRステフォン・ディグスに替えて、この日は徹底的にデービスをターゲットにした。
 デービスは28ヤード、19ヤードのパスをキャッチしビルズが前進。チーフスディフェンスは決して拱手傍観していたのではなく、何度も激しいパスラッシュでアレンを追いかけた。しかしアレンは驚異的な身のこなしでディフェンスをかわし、パスを決めた。
 ゴールまで19ヤード残り17秒。アレンはエンドゾーン奥に走り込んだデービスに、完璧なTDパスを決めた。再逆転。残り時間は13秒だった。
 ビルズとアレンに、もし悔恨があるとすれば、このエクストラポイントで2ポイントコンバージョンを狙わなかったことかもしれない。
【チーフス33-36ビルズ】
【チーフス vs ビルズ】=photo by Getty Images
 残り時間13秒。ビルズはエンドゾーンの奥に蹴り込んでタッチバックとした。

 自陣25ヤードから13秒でFGレンジに進まなければならない。マホームズが直面した最も難しい局面だった。救いは、チーフスもこの段階でタイムアウトが3回残っていたことだった。マホームズはヒルに19ヤード、TEトラビス・ケルシーに25ヤードのパスを決めた。そして残り3秒でKハリソン・バトカーに命運を託した。

 49ヤードのFGトライ。バトカーの蹴ったボールはバーを越えた。両チームによる、残り2分からのミラクルな得点の応酬の末、試合はオーバータイムとなった。
【チーフス36-36ビルズ】
【チーフス vs ビルズ】=photo by Getty Images
 コイントスの結果、先攻はチーフスだった。そして、マホームズもまた、ゾーンに入っていた。
 5回のパスをすべて成功させ、ゴール前に迫った。そして最後のレシーブはTEケルシー。カバーしていたビルズLBマット・ミラノの頭上を超える高いパスをしっかり捕球し、しっかり左右の足でエンドゾーンを蹴った後に外に倒れ込んだ。
 TDのためオフィシャルレビューが入ったが、チーフスのアンディ・リードヘッドコーチ(HC)は、審判に食いつかんばかりに近くに迫ってレビューの結果を待った。判定は覆ることなく、TDが成立。リードHCは両手を天に突き上げ喜びをあらわにした。
【チーフス42-36ビルズ】

 NFLポストシーズン史上最高の名勝負の一つに、幕が降ろされた瞬間だった。

2人のQBの成績は以下の通り。

チーフスQBマホームズ 
パス33/44、378ヤード、3TD、0INT、レーティング123.1 
ラン7回69ヤード1TD

ビルズQBアレン
パス27/37、329ヤード、4TD、0INT、レーティング136.0 
ラン11回68ヤード

ビルズのWRデービスは、スーパーボウルが始まって以降の時代で、プレーオフで1試合200ヤード以上、4TD以上のパスレシーブを記録した唯一の選手となった。
【チーフス vs ビルズ】=photo by Getty Images
マホームズへの言葉は「死神になって獲りに行け」

 米スポーツ専門局ESPNによると、チーフスが残り13秒で3点を追う自陣75ヤードからのオフェンス。リードHCはマホームズにこんな言葉をかけたという。
「厳しければ死神になって獲りに行け」

ESPNやAP通信が伝えたHCや選手のコメントは次の通り

チーフス リードHC
「彼(マホームズ)はまさにそれをやった。周りのみんなために。彼が得意とすることで、難なくやってのけた。厳しい状況になっても、彼はそこで戦ってくれる。」
「選手たちはひるまなかった。バッファローに多大な敬意を払い、戦いになることを知っていたからこそ、前進し続けたのだ。」

チーフス QBマホームズ
「あのチーム(ビルズ)との試合でこの瞬間を迎えられたこと、アローヘッドでサヨナラ勝ちするためのプレーができたこと、この試合を一生忘れないだろう」
「アローヘッドでこのような試合に勝てたことは、間違いなく特別なことだ。もちろんスーパーボウルは私にとって一番だが、今回の試合はその次だ。何度も逆転し、必要なときにポイントを取り、タッチダウンを決め、FGレンジまで進むことができた。一生忘れないだろう」
【チーフス vs ビルズ】=photo by Getty Images
チーフス WRヒル
「両チームのオフェンス、ディフェンス、スペシャルチームに素晴らしいリーダーがそろっていた。(最後の13秒は)誰もがパニックに陥らなかった。『ああ、ゲームが終わってしまった、あと13秒しかない』とは思わなかった。我々はただプレーをしただけだ。」
「これは間違いなくマホームズにとってに殿堂入りへの一つのステップだ。 彼は、このリーグのQBの中で、自分がトップであることを改めて証明する機会を得た。」

ビルズ マクダーモットHC
 「チーフスは良いフットボールチームだ。ここに来るには大変な努力が必要なことはわかっていた。ジョシュ(・アレン)をはじめ、すべての選手がその努力をしてくれたと思う。しかし、彼らは傷ついているし、我々も失望している。前に進み、そこから学ぼうとはするが、心に刺されたような痛みがある。痛い。砂糖でコーティングしてごまかすことはできない。心が痛いのだ。」

ビルズ QBアレン
「ただ、辛いだけだ。(プレーオフで敗れるという)あの瞬間に再び立ち会うのは。起こってしまったことは最悪だ。あの試合には勝ちたかった。チャンスはあった。ただ、すべてを受け入れ、その気持ちを持ち続け、二度とこのような思いをしないようにするしかない。」

【チーフス vs ビルズ】=photo by Getty Images

【チーフス vs ビルズ】=photo by Getty Images

【小座野容斉】

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