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2018-03-12

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adidas adizero Sub2商品企画担当者インタビュー アディダスの最速シューズは いかにして生まれたのか

世界記録を次々と塗り替えてきたアディダスのアディゼロシリーズにマラソンでの1時間台を視野に入れたシューズが加わった。アディゼロ史上最速のシューズはいかにして生まれたのか、商品企画担当者に聞いた。サブ2に向けて、最前線にいるウイルソン・キプサングは「条件が揃えば…」と自信をみせる。
構成/編集部

ランナーの自然な動きを妨げず、エネルギー効率のいい走りを実現しました

――まず、リチャードさんのポジションを教えてください。

マーティンズ・リチャード アディダスのランニングカテゴリー シニアプロダクトマネージャーです。アディゼロ、アディゼロの陸上関連商品、スパイクなどをデザイナー、ディベロッパーの3人のチームで開発しています。普段は、ドイツ本社があるヘルツォーゲンアウラッハに勤務しています。チーム3人で東京やアメリカに行って、きちんとベストな商品を提供できているかどうかを確認しています。自分たちでこういうものを作りたいというスタンスではなく、ランナーの皆さんのインサイト(思い)を吸い上げて製品にしています。


――アディゼロ サブ2はミッドソール素材のブースト ライトがポイントだと思います。今までのブーストとどこが違うのでしょうか。

マーティンズ・リチャード 私たちは2012年にブーストフォームに出会うことができました。この高反発素材を使って、アディダスで最速のシューズを作りたいと考えました。それがアディゼロ サブ2の始まりでした。ブーストフォームを見たときに、この高反発素材を搭載したレースの日に特化したシューズを作ろうと考えたのです。以前のブーストフォームは、レース用としては重すぎて硬さが足りませんでした。衝撃吸収性があったのですが、柔らかすぎたのです。 

ブーストで作られたアディゼロ サブ2の試作品。この後、ブースト ライトが開発された

 新しいブースト ライトは、もう少し硬くて、しっかりしたものになっています。反発力も高く、スナップも効きます。アディゼロのほかのシューズには、アウトソールの中央にプラスチック製のトルションバーがあるのですが、アディゼロ サブ2ではトルションバーがない設計になっています。 

 練習用ではなく、レース当日用のシューズを作ったのです。以前のブーストが搭載されたシューズの多くはトレーニングで使ったり、シティランで使ったりするものでしたが、アディゼロ サブ2は、10kmからフルマラソンのレース当日に使ってもらうシューズを目指して開発しました。

――オリジナルのブーストフォームは、BASF社と共同開発されました。ブーストライトもそうだと思うのですが、何が違うのでしょうか。製法が違うのか、配合が違うのか。

マーティンズ・リチャード 従来のブーストは、TPU(サーモプラスチック)という球状の素材を発泡させてPTE(発泡TPU)というものを作って、それを結合させました。ブースト ライトの開発にあたっては1から見直しました。TPUのごく小さい球状のものは、従来のものとは素材も違いますし、素材の配合も変えました。そうすることによって発泡したときにより硬く、より軽量にすることが可能になりました。

ブースト ライトは、TPU(サーモプラスチック)を発泡させた粒を固めて作られている

 グレーとシルバーのビーズを使っていますが、これは素材としてはまったく同じものです。一目でアディゼロ ジャパンやウルトラブーストのブーストと違うことがわかるようにしたのです。レース当日用だということが明らかになるようにこのようなカラーリングにしています。ちなみにこのグレーと白のカラーは、軽さをイメージする雲からインスパイヤーされて作っています。

アディゼロ サブ2に搭載されているブースト ライトのミッドソール。雲をイメージしている

――大きな特徴としてアッパーが非常に軽くなっています。通気性を確保しながら、あるいは軽さを確保しながら、サポート性を保つことは難しいことだと思います。どういう点を工夫しているのでしょうか。

マーティンズ・リチャード アッパーを作っているものは素材だけではありません。開発に当たっては、アラミスというモーションキャプチャーシステムを使い、走行時の足の動きを解析しました。そこから得られたデータをもとに、アキレスの部分を自然に動くようにしてあります。通常ならまっすぐになっているアキレス腱の部分のステッチにカーブをもたせているのはその一例です。 

軽量でありながら、しっかりとホールドするアディゼロ サブ2のメッシュ

 快適さについては、拇指球より先の部分が、自由に自然に動かせるようにしてあります。不快感がないよう、この部分を工夫しました。

 アディゼロ サブ2のアッパーで最も重要な点は、土踏まずの内側側面の素材の切り替えです。シューズクリエーターでアディゼロの生みの親ともいえる大森敏明さんと緊密に連携をとって、パターンを起こしていただきました。とにかくタイトなフィット感、どんなに速く走っても中でぶれないようにということで、このような切り替えを入れました。

――アディゼロのフィットのよさの象徴でもあるマイクロフィットの進化形と思っていいのでしょうか。

マーティンズ・リチャード マイクロフィットは形としてあるものではありません。シューズづくりの考え方の1つの要素です。ボストン ブースト、ジャパン ブースト、タクミ ブーストはそれぞれフィット感は異なります。もちろんアディゼロ サブ2のフィット感もこれまでのシューズとは違います。ミクロの単位でのフィットを追求すること、それがマイクロフィットであり、アディゼロのシューズづくりを一本貫いている哲学のようなものです。

――マイクロフィットといえば、アディゼロのフィット感を象徴しているのが、踵のホールド性です。非常に軽いのですが、アディゼロ サブ2のヒールカウンターの工夫はあるのでしょうか。

マーティンズ・リチャード どのようなメーカーでもランニングの商品をつくるときに、素材を足していくと思うのです。ヒールカウンターは中だったり、外だったりしますが、アディゼロ サブ2では中に入れています。プラスチックの素材がメッシュから透けて見える。それほど、軽量だということです。工場での生産の過程でも、どうやったらよくなるだろうということを研究しています。

内蔵のヒールカウンターが透けて見えるほど、メッシュは薄い。踵のホールドのよさはアディゼロの血統だ

 通常、ヒールカウンターを構成するプラスチックのシートとメッシュは別工程になっています。それを一緒にすることで、より軽量の素材をつくることができました。プラスチックのシートのことをケム(CHEM)シーツといいます。このヒールを作る機械は、大森さんがつくってくれたラスト(木型)と全く同じ形状になるようになっています。

――最近はニット素材をアッパーに使うことが多いのですが、メッシュにした理由を教えてください。メッシュのよさはどのようなことなのでしょうか。

マーティンズ・リチャード 最高の通気性とベストのサポートを両立させようと考えて、メッシュを採用しています。ニット素材はどうしても厚くなってしまいます。また、編み物は伸縮性があるために緩みがでて指先が動いてしまいます。メッシュは伸縮性をコントロールできますから、メッシュを採用しました。また、今回はサブ2専用のメッシュを開発しました。高速走行中であってもブレない、動かないということを実現しました。

――従来のアウトソールは、硬い素材で地面をひっかくようにグリップしていましたが、アディゼロ サブ2のソールは、軟らかそうです。これは新しい考え方だと思います。素材はどういうものでできているでしょうか。

マーティンズ・リチャード 実はマイクロウェブのコンセプトは新しくありません。これまでウルトラ ブーストやソーラー ブーストに搭載されていたストレッチウェブの改善版です。ストレッチウェブを改善するにあたって、センチとかミリという単位ではなく、マイクロミリの単位で、どうやったらベストになるのかということを追求したのがマイクロウェブです。マイクロという言葉は、そこから来ています。素材はコンチネンタルラバーを使っています。

ストレッチウェブを改良したマイクロウェブ。どんな路面状況にも対応するグリップ力を誇る

――グリップ力がよく感じるのですが、普通のコンチネンタルラバーとどこが違うでしょうか。

マーティンズ・リチャード 自然な動きが可能でありつつ、グリップ力があるものを実現したいと考えました。通常のリブ(ソールのでっぱり)はカーブになっていますがまっすぐにしました。そうすることによって、トラックスパイクのような形で、細かく、地面に食い込んでいくことを可能にしました。

――軽量化を求めるのであれば、フルレングスにする必要はなかったのではないでしょうか。フルレングスにした理由はありますか。

マーティンズ・リチャード とにかく自然な動きを可能にしたいと、踵からつま先まで1枚のコンチネンタルラバーを貼ったフルレングスを採用しています。アウトソールの素材がどこかで切れてしまっていると、そこの部分で動きが滞るのです。なめらかな動きが重要であるというアスリートのインサイトがありました。キプサング選手や女子のトップランナーのメアリー・ケイタニー選手たちのインサイトを得て、そのようにしました。 

 建設現場で穴を掘っている人は、スコップの先など、鋭利な先端を地面に突っ込んで土を掘り上げています。それと同じような形で鋭利な突起を地面に食い込ませて、前に向かって推進していくような形状にしています。そうすることによって、ランナーがより少ないエネルギーで地面をとらえることができるのです。通常であれば、自分の指先を使って地面をつかんでいるのですが、このアウトソールはグリップ力あるので、余計な力を使わずに地面をとらえることができるのです。

――アディゼロ サブ2は平らなところに置くとウィンドラス形状というか、つま先が上がっています。通常のレーシングフラットに比べると、置いた時につま先が地面から離れています。これもエネルギーロスを防ぐことに関係しているのでしょうか。

マーティンズ・リチャード そうです。すべてのストライドで、一歩一歩のエネルギー消費を少しでも減らす工夫をしていますが、この形状もその1つです。1つ1つの改善は微量であっても、それを積み重ねることによって、より大きな改善につながります。エネルギー消費の小さな改善を積み重ねていくことを大切にしています。この形状によって、少しでも楽に前に出ることができれば、ランナーが使うエネルギーを減らすことができるからです。

自然な足の動きをサポートするウインドラス形状。つま先の上がり具合が蹴りだしの自然は動きを妨げない。

 アディゼロ サブ2の最も大きな特徴といえるのは、指先への体重移動を強制しないことです。自然な動きを実現するということです。強制的に前に体重移動をさせるような商品もありますが、アディゼロ サブ2はそういうことではありません。たとえば、ハイヒールを履いて走ることは不自然であるのと同じです。

――前後の重量バランスについてはどのように考えていますか。踵が軽いのではないかと思っています。

マーティンズ・リチャード おっしゃる通り、ヒールが軽くなっているのですが、全体的に軽量のシューズを作りたいと思っていました。アッパーについてもアウトソールについてもそのような努力をしたのですが、アウトソールに関しては、特に滑らかな形にすることで軽量化を実現しています。

 ジャパン ブーストやボストン ブーストでは、アウトソールの間から中のブースト素材が見えていましたが、アディゼロ サブ2では見えなくなっています。着地したときには、体重の2.5倍くらいの力がかかります。下までついてしまったとしてもきちんとグリップを発揮できるようにこの形状になっています。このソールはどのような状況においてもきちっとしたグリップ力を発揮します。

――設計が非常にうまくいったとしても、工場が求めているクオリティのものが作れないとうまくいかないと思うのですが、そういう点で苦労したことはありますか。

マーティンズ・リチャード まず、開発にあたってはシューズクリエーターの大森敏明さんとお仕事をさせていただくという素晴らしい形で進めています。工場に行って、製造工程の確認にも大森さんに来ていただいています。アディゼロ担当の少数精鋭のグループがあるのですが、そこにきちんと指導していただいて、大森さんが設計した通りのものがきちんと消費者に届くようにしています。

――ありがとうございました。

【使用用途で選ぶアディゼロシリーズ】
アディゼロのレース用シューズのポジショニング。サブ2とタクミセン ブーストは、レースに特化したシューズ。ジャパン ブースト3やボストン ブースト2は、トレーニングからレースまで使える。

アディダス ランニングカテゴリーシニアプロダクトマネージャー
マーティンズ・リチャード
ロード用のアディゼロだけでなく、アディゼロのスパイクなども手がけるアディゼロの商品企画責任者。デザイナーと開発の3人のチームで、通常はドイツの本社に勤務している。
「自分たちが作りたいものを作るのではなく、アスリートのインサイトを吸い上げるようにしています」

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