4月17日、石川県輪島市で開催された日本選手権35km競歩を2時間45分48秒で制し、初代女王となった園田世玲奈(NTN)。派遣設定記録を突破し、オレゴン世界選手権代表に内定した。世界選手権で35km競歩が実施されるのは、今夏が初。この種目自体の歴史は浅いながらも、世界歴代9位相当の持ちタイムで初の世界大会へと乗り込む。自身初の日本代表に内定した喜びの声をお伝えする。
――優勝した今の気持ちは?
園田 日の丸を背負って、日本代表として世界と戦うことを目標として取り組んできたので、今日、オレゴンへの切符をつかめたことを心からうれしく思います。
50km競歩の日本選手権初代チャンピオン(2018年)になることができ、種目が35km競歩になると聞いて、もう一度私が初代チャンピオンを勝ち取りたいと強く思って、35km競歩に取り組んできました。
練習が積めても貧血になったり、大事な試合前にケガをしたりして、思ったようなプランでは来られませんでしたが、今回は積み上げてきたことを力として無事に発揮できました。それもうれしく思っています。こうしてこの場にいられるのも、良いときだけでなく悪いときも支えてくれた所属の皆さんや、家族のみんな、一緒に練習してくれたり応援してくれたりしてくださった方々のおかげです。本当に感謝しています。
力はまだまだですが、挑戦したことのない世界の舞台で、自分がどこまで力を発揮できるのか、残り3カ月間、精いっぱいの準備をして挑戦したいと思います。
――NTN入社後は三重県で練習されているとうかがっています。常に指導者に見てもらえる環境ではないなかで力を伸ばせた要因や、工夫されていることは?
園田 練習は1人で行うことも多いのですが、会社の方やスタッフさんに手伝ってもらって毎日取り組めています。陸連派遣の合宿やいろんな機会をいただいて、練習環境も整えさせてもらっています。
今回の試合前も母校の中京大に強化練習としてお世話になりました。たくさんの方と一緒に練習させてもらえる環境などをいただいて、だんだんと練習が積めてきたと思っています。
――ご自身の歩きのどんなところが35km競歩に生きると考えましたか。
園田 長くゆっくり歩くことは、50km競歩も経験してきて得意でしたが、スピードという部分がなかなか出せず、一つの課題ととらえて去年1年みがいて準備してきた感じです。35kmの距離になるとスピードと距離の両方で実績を出さないと戦えないと思っていました。去年1年でスピードにつながる練習ができたのかな、と思っています。
――どういう練習に力を入れて、スピードに対して効果があったのでしょうか。
園田 去年1年、今年もですが、肉離れをしてしまって、本当に苦しんできましたが、そのなかでも大きな筋肉を、歩きではできないトレーニングだったり、補強として行うことで、歩きだけでは鍛えられない部分の練習が身になっていたのかもしれません。ウェイトトレーニングもちょっとしています。
――全日本競歩能美大会(20km競歩に1時間32分12秒で優勝)の後、どういうことをプラスしてきましたか。また世界選手権で戦うために、もう少しこうしたい、ということは何でしょうか。
園田 能美で自己新が出て喜びたいところでしたが、35km競歩という一番自分が勝負したい大会があったので全然喜べませんでした。
何としても35kmの大会に、能美以上のコンディションで臨めるように合わせないといけない。それを考えるとプレッシャーもありましたが、やってきたことに自信がつくようなことを、もう一度確認という形で、距離の練習をもう一度積み重ねました。そのなかでもスピードの取り組みも再確認してきました。
世界選手権はまだ経験したことのない世界なので、未知な場面が多くなると思いますが、世界も35km競歩への取り組みはまだ少ないと思います。誰もが探り探りの状態だと思いますが、私も今以上に淡々と距離を歩く練習を重ねて、自信という部分で誰にも負けないようにして、そのなかでもやっぱりスピードとして、勝負できる速さをもう一度みがいていけたらいいな、と思っています。
●プロフィール
そのだ・せれな◎1996年9月10日、滋賀県生まれ。草津東高(滋賀)→中京大→NTN。中京大4年時の2018年、日本選手権50km競歩、全日本50km競歩高畠大会で優勝。今年3月の全日本競歩能美大会(20km)を1時間32分12秒の自己ベストで制すると、4月17日開催の日本選手権35㎞競歩を2時間45分48秒で優勝し、オレゴン世界選手権の代表に内定した。10000m競歩の自己ベストは44分57秒55(2021年)。