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2022-05-01

【ボクシング】KO負け寸前しのぎ勝利。歴史的女王対決をケイティ・テイラーが制す

歴史的ファイトに勝利したテイラー

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 4月30日(日本時間5月1日)、アメリカ・ニューヨークのマジソン・スクエアガーデンで行われた女子世界ライト級4団体統一タイトルマッチ10回戦は、チャンピオンのケイティ・テイラー(35歳=アイルランド)が、挑戦者で世界7階級制覇のアマンダ・セラノ(33歳=プエルトリコ)を97対93、96対93、94対96の2ー1判定で破り、WBA王座13度目、IBF王座11度目、WBO王座7度目、WBC王座6度目の防衛に成功した。

 1ラウンド2分。女子ボクシングの試合は、あっという間に時が過ぎ去っていくが、両者の“質”が最高峰ならば、やはりその中身は濃密になる。両者ともバランスに優れ、細かいフェイントを入れながら相手を誘い、手を出させ、それをかわしてカウンターを狙い合う。誰もがシビれるギリギリのせめぎ合い。“殿堂”に詰めかけた19187人の大歓声に、3ラウンド終了ゴングが両選手、レフェリーに聞こえなかったほどだ。

5ラウンド、セラノは強打でテイラーをダウン寸前にまで追い込んだ
5ラウンド、セラノは強打でテイラーをダウン寸前にまで追い込んだ

 ショッキングにしてエキサイティングなラウンドは5回だった。4ラウンドから足を止め、強打でセラノを跳ね返す様相にあったテイラーを、セラノはコーナーに詰めて猛連打。それまでは、あっさりと回り込んで反撃していたテイラーも、ムキになって打ち返す。明らかに空気が変わった。
 サウスポーのセラノが右ジャブ、右フックを突き刺すと、テイラーは鼻から出血。続けて放った左ストレートがクリーンヒットすると、王者の足が棒立ちになったのだ。
 ここぞとばかりに左右の連打を繰り出していくセラノ。ダメージ濃厚のテイラーは、反撃しながらクリンチで逃れる。続く6ラウンドも、ダメージを感じさせたテイラーだったが、セラノは一気に勝負を決めることはできなかった。セラノにとっては悔やまれる2ラウンドだった。

大ピンチをしのぎ切り、空間支配を再開したテイラー
大ピンチをしのぎ切り、空間支配を再開したテイラー

 距離を取って、ダメージを回復させたテイラーは、ふたたび空間支配のボクシングを展開する。セラノは、徐々に追い足を欠いていく。それでも、テイラーの右から左フックのコンビネーションに、右フックから左ストレートを重ねていくセラノ。最終10回は、連打でリードしたセラノに対し、終了間際、気力を振り絞ったテイラーが、力の入ったラッシュをかけてゴング。大観衆は、熱狂をもって両選手を讃えた。

 読み上げられた採点は、ジャッジ1者がセラノを支持したものの、2者はテイラー優勢に。ともに右目上をカットし、テイラーは鼻血も流しながらの戦いとなったが、空間掌握と巧みなヒットでテイラーが上回った形。軸をしっかりと立てて放つ右フック、左ストレートの威力でテイラーを苦しめたセラノだが、空振りも多く、テイラーの上手さを感じながらの戦いだったろう。

 互いの能力を認め合い、抱き合った両者は、試合後に再戦の可能性も示唆した。さらに新たな歴史、ストーリーが生まれるのかもしれないが、今はこの大熱戦の余韻に浸っていたい。
 テイラーの戦績は21戦21勝(6KO)。セラノの戦績は45戦42勝(30KO)2敗1分。

正確な左ボディブローでバルデスを追い込むスミス
正確な左ボディブローでバルデスを追い込むスミス

 セミファイナルで行われたWBOインターナショナル・スーパーウェルター級王座決定戦12回戦(日本未公認)は、元WBO同級王者リアム・スミス(33歳=イギリス)が、元WBA世界スーパーライト級&WBO世界ウェルター級王者ジェシー・バルガス(32歳=アメリカ)を10回41秒TKOで破った。
 3回からスミスの前進をもてあまし始めたバルガスに、スミスは右クロス、左ボディブローを正確に決めていった。フィジカルで押され、ボディも効いたバルガスは、終始ロープを背負う苦しい展開。スミスは地味ながら堅いガードとヘッドスリップを有効に使ってバルガスを追い込んでいった。
 スミスは35戦31勝(18KO)3敗1分。6月7日、さいたまスーパーアリーナで井上尚弥(大橋)と再戦するWBC世界バンタム級王者ノニト・ドネア(フィリピン)がセコンドについて、アドバイスを送り続けた甲斐もむなしく敗れたバルガスは35戦29勝(11KO)4敗2分。

オーバーハンドライトが目立ったデザーンだが、ジャブなど基本技術でも上回った
オーバーハンドライトが目立ったデザーンだが、ジャブなど基本技術でも上回った

 もう一つの“女子世界4団体統一戦”となったスーパーミドル級タイトルマッチは、WBC&WBO王者フランチョン・クルーズ・デザーン(34歳=アメリカ)が、IBF&WBA王者エリン・シドルース(37歳=スウェーデン)を99対91、99対91、97対93の3-0判定で破り、4本のベルトを手中に収めた。

4団体王座統一を果たしたデザーン
4団体王座統一を果たしたデザーン

 デザーンは左右フックで迫り、シドルースはその合間に左右ストレートを差し込もうとするが、デザーンのジャブ、右ストレートでのボディ攻撃も利いた。
 デザーンは10戦8勝(2KO)1敗1無効試合。シドルースは9戦8勝(4KO)1敗。

文_本間 暁(DAZN視聴) 写真_Getty Images

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