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2022-05-09

【ボクシング】元世界王者・木村翔、再起戦は辛くもドロー

疲れた顔でドローの判定を聞く木村(右)

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元WBO世界フライ級チャンピオン木村翔(33歳=花形)は9日、東京・後楽園ホールで堀川龍(22歳=三迫)と8回戦を行い、引き分けた。

 下された判定はジャッジ1者が77対75で堀川としたが、2者は76対76。ドローで辛くも敗北を免れた木村だが、その表情は敗者に等しかった。「判定がどうこうよりも、自分のボクシングができなかった。ハングリーさを失っていると思う」。本人の言葉が、2年3か月ぶりに迎えた試合のすべてを物語っていた。

 がむしゃらなまでに自分をいじめ抜く練習と、そこで蓄えた無尽蔵のスタミナを武器に頂点を極めた木村。この日も練習量、コンディションは納得いくものだったと振り返るが、思った動きはできなかった。スピードで勝負する堀川と一進一退。1階級下の堀川に相打ちではパワーの違いを見せるが、軽快に動く堀川の細かいパンチを防ぎきれない。

 6回、木村がようやくチャンスをつかんだ。左ボディを効かせ、コーナーに詰めて猛攻。ストップ寸前まで追い込んだが、ここを耐えた堀川がボディ攻撃で逆襲すると、今度は木村の足が止まる。息を吹き返した堀川に、木村は7、8回と防戦一方を強いられた。「効いたとは思わなかったが、疲れたんですかね。足がしんどかった」と木村。今までにない姿だった。

「どんな形でも勝ちたかった。悔しい」と堀川は唇を噛んだ。インターハイ王者からプロに転じ、6戦目で挑んだ元世界王者との戦い。「全然緊張もなく、楽しかった」と言うとおり、若さと追うものの強みを存分に発揮した。

 試合前は井岡一翔(志成)への挑戦をアピールしていた木村だが「ずっと追いかけてきたけれど、今はそこにいませんね」と落胆を隠さず、今後については「どう燃えるのか。何かがないと……」と目を伏せた。あの頃に戻るためには、高い目標設定が必要になりそうだ。

文/藤木邦昭 写真/小河原友信

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