10日、東京・後楽園ホールで行われた日本ユース・ミニマム級タイトルマッチ8回戦は、挑戦者で日本4位の森且貴(22歳=大橋)が、王者・伊佐春輔(24歳=川崎新田)をジャッジ三者が77対75をつける2-1判定で勝利した。文_本間 暁(森対伊佐)
宮崎正博(湯川対櫻井、中井対高畑)
写真_菊田義久
1月の日本王座決定戦で、石澤開(M.T)に8回TKOで敗れた森。石澤はそのままWBO王者・谷口将隆(ワタナベ)に挑むチャンスを得ており、森の悔しさは生半可ではなかったろう。この試合は、仕切り直しと同時に国内トップを狙うための1戦でもあった。
対する伊佐は、昨年8月にこのユース王座を獲得しており、森の持つ日本ランクとネームバリューを得る絶好の機会だった。
大柄な伊佐は、フットワークを使いながら、森の入り際、ジャブの伸ばし際に右ストレートを合わせる。森は距離が縮まると頭の位置をずらして左右アッパーを突き上げる。アウトボクシングをしたい伊佐を、じわじわと追いこんでいく姿勢は、かつてない“気持ちの抑え様”だった。
被弾すると、むきになって力んで打ち返す。焦る気持ち、強く打ちたい気持ちが全面に出すぎ、上体が突っ込みすぎて自らリズムを崩す。それが森のかつての姿だったが、そこをぐっと堪え、決して無理なバランス、距離で打っていかない。4回からは難なく距離を詰めると、左右ボディブローを次々と叩き込んでいく。フットワークをベースにした伊佐は、軽打の連打で対抗したが、上体が高く、一撃の効果では森が上回った。手数と効果でジャッジの見方が分かれたかもしれない。
足を踏ん張っての伊佐の右は威力を秘めていた 終盤7、8回と、森が力感を出して前へ出たが、伊佐は近距離で重心を落としての右ショートを返す。足の踏ん張りが利いたブローは、やはり効果的。フットワークに固執しすぎないスタイルを、もっと早く使えたら、また違った展開を生んだかもしれない。
初のベルトを得た森だが、もちろんこれでは満足できない「勝ちも負けも引き分けという結果もありえた内容」と大橋秀行会長はホッと胸をなで下ろし、「でも、ほんのわずか分けたのは、(苦しい場面で)顔に出るところ。伊佐くんは表情に出していた」。それこそ、かつて森が見せていた部分。結果的に僅差だったが、森の成長と、伊佐とのキャリアの差を感じさせたところだ。
森の戦績は11戦10勝(2KO)1敗。伊佐の戦績は14戦9勝(1KO)4敗1分。
右スイングを放つ湯川 セミファイナルのスーパーライト級8回戦には、アマチュアからプロに転向して4連勝(3KO)を続ける湯川成美(26歳=駿河男児)が、櫻井孝樹(34歳=SRS)を6回35秒TKOで破り、不敗のレコードを守った。
初回、オーソドックススタイルでスタートを切った湯川は左フックで櫻井をぐらつかせたが、その後はラフな攻めに終始した。サウスポーにチェンジしながら、左フック、右アッパーとボディブローばかり。右目上に続いて、左目上をカットしながらも粘っていた櫻井だが、回を追うごとに動きが落ちる。そして6回、その櫻井にドクターチェックが入った直後、湯川が左フックを連打したところで、レフェリーが試合を止めた。湯川の戦績は5戦5勝(4KO)。櫻井の戦績は18戦8勝(3KO)9敗1分。
中井(右)はテクニシャン対決で圧倒して勝った もうひとつの8回戦には、43歳にして日本スーパーフェザー級12位にランクされる高畑里望(ドリーム)が登場したが、これもアマ出身のサウスポー、中井龍(24歳=角海老宝石)に5回2分10秒TKO負けを喫した。
高畑が長いリーチと、タイミングを操った攻めで中井を惑わせたのは初回だけ。2回以降、細かく動いてペースを奪った中井が高畑を圧倒していく。5回、6回と高畑はコーナーにくぎ付けになって防戦一方。中井のパンチも正確さを欠いたが、6回の2度目のチャンスに右フックから左を連打したところで、レフェリーがストップをかけた。中井の戦績は6戦4勝(2KO)1敗1分。高畑の戦績は28戦17勝(7KO)10敗1分。