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2022-05-13

【NFL】殿堂入り名RBベティス、50歳にして名門ノートルダム大学を卒業 母との約束を果たす

米プロフットボール・NFLやその周辺で、オフシーズンに生じるニュースは、事故や事件に関連するネガティブなものも多い。しかし、5月13日にアメリカから伝わってきたニュースは、前向きで明るい話題だった。

 ピッツバーグ・スティーラーズの元RBで、プロフットボールの殿堂入りを果たした名選手ジェロ―ム・ベティスが、現地5月12日、50歳にして名門ノートルダム大学を卒業したという。ピッツバーグの地元紙「ポスト・ガゼット」が伝えた。

 ベティスは、自身のTwitterで、「約束をした。約束を守った」と投稿し、1993年にNFL入りして以来、30年近く経ってからの卒業を喜んだ。

A promise made, a promise kept. 28 years after leaving @NotreDame,  I’ve completed my degree from the Mendoza School of Business. I hope my journey serves as reminder that education is the true equalizer in life and it is never too late to start.

約束をした。約束を守った。
ノートルダムを去ってから28年、私はメンドーサ・ビジネススクールの学位を取得しました。私の旅が、教育とは人生において真の平等をもたらすものであり、教育を受け始めるのに遅すぎることはないということを、(世の中の人々に)想起させることを願っています。

ノートルダム大学を卒業したジェローム・ベティス=本人のTwitterから

 ベティスは、1972年2月生まれ。生まれ育ったのは、ミシガン州デトロイト。生活は貧しく、犯罪や麻薬が身の回りに溢れていたという。高校に入って初めてフットボールを始めたベティスは直ぐに傑出したRB兼LBとなり、ノートルダム大からスカラシップのオファーを受けた。
ノートルダム大学時代、ディフェンスを跳ね飛ばして突進するRBベティス。下で倒れているのはミシガン大のハッチンソンで、2022年ドラフト2位だったエイダン・ハッチンソンの父=Photo by Getty Images
 ノートルダム大で、大型RBとして活躍したベティスはNFLのロサンゼルス・ラムズから1巡指名を受けて入団、ルーキー年に1429ヤードを走る活躍で一躍スターとなった。しかし、ラムズでの成績は2年目以降徐々に落ち込んだ。3年目を終えたオフ、ベティスに転機が訪れた。スティーラーズへのトレード移籍だった。

 ビル・カウワーヘッドコーチに率いられ、強力なディフェンスを有していたスティーラーズだが、RBは故障やトラブル続きで、エースを固定できていなかった。パワフルな走りで、まさに試合をコントロールできるベティスはスティーラーズにうってつけ。双方に「ウィンウィン」のトレードとなった。

 いったんはフットボールから気持ちが離れていたベティスだったが、水を得た魚のように走りまくった。180センチで公称116キロ、実際には120キロ以上ではないかと思われる体躯で、ディフェンスをなぎ倒し、タックルを跳ね飛ばして走った。あだ名は「バス」。

 スティーラーズでは6年連続1000ヤードラッシャーとなるなど、チームの柱として活躍した。そして、3回、AFCチャンピオンシップに進出しながらスーパーボウルに届かなかった。
現役最後の試合となった、第40回スーパーボウルでプレーするスティーラーズのRBベティス=Photo by Getty Images
 しかし、2005年シーズン、2年目のQBベン・ロスリスバーガーの活躍で、ついにスーパーボウルにたどり着いた。会場は奇しくも、故郷のデトロイトだった。
 シアトル・シーホークスを破ったスティーラーズ。ベティスは、試合後にビンス・ロンバルディトロフィーを手に「バスは、ここデトロイトで止まる」と、トルーマン大統領の座右の銘をもじった名言を残した。そして、現役生活に別れを告げたのだった。
現役最後の試合となった、第40回スーパーボウル。ベティスは「バスはここデトロイトで止まる」と語って引退した=Photo by Getty Images
 通算成績は12シーズン192試合出場、ラン13362ヤード、91TD。2015年には、プロフットボール栄誉の殿堂入りも果たした。

 ベティスが、NFLドラフトにアーリーエントリーした時、母グレイディスさんと
「いつか必ず大学を卒業する」と約束したという。実は、1996年、ラムズでの3年目を終えた時にフットボールから引退するつもりで、ノートルダム大に通って本格的な勉強を再開した。その直後にスティーラーズへの移籍が決まり、ベティスはNFLに復帰していた。

 2021年、ベティスは母との約束を守るため、ノートルダムに復学した。そして5月12日卒業を迎えたのだった。

 ベティスは、米NBCの番組に出演した際に「私は、直系の親族の中で最初に大学を卒業する人間になる」と話し、母の期待が大きかったことを話した。

 さらに、「最も重要なのは、私には2人の子供がいるということだ。自分の父親が、27年前に決めた約束を、やり遂げるのを見るというのは、彼らにとってとても良いことだと思う」と語っていた。

 アーリーエントリーが制度化されて以来、卒業しないままNFLでプレーする選手は多い。他方で、経済的に困窮した層からスカラシップで進学した選手も多く、家族、特に母親は、選手の大学卒業・学位取得を強く希望するという。

 スティーラーズでは、ロスリスバーガーがNFL入り後8年経ってから母校のマイアミ大学オックスフォード校(マイアミオハイオ)を卒業したのは知られているが、ベティスのように30年近く経ってからの卒業は珍しい。

 ノートルダム大学は、インディアナ州サウスベンドにある、キリスト教系の私立総合大学。フットボールの強豪校として有名だが、学業水準も非常に高く、全米屈指の名門大学として知られている。
ヨーロッパをもわせる美しいノートルダム大のキャンパス=Photo by Getty Images

【小座野容斉】

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