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2022-05-15

【ボクシング】阿部麗也が2冠獲得! 丸田陽七太からダウン奪い3-0勝利

阿部の左が丸田を捉える!

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 15日、東京・墨田区総合体育館で行われたWBOアジアパシフィック王座決定戦&日本フェザー級タイトルマッチ12回戦は、WBO・AP3位で日本1位の阿部麗也(29歳=KG大和)が、WBO・AP1位で日本王者の丸田陽七太(25歳=森岡)を115対112、116対111、118対109の3-0判定で破り、両王座を獲得した。

文_本間 暁 写真_馬場高志

 4回に、丸田の打撃で右目上をカットし出血した阿部は、「血もけっこう出ているし、焦りがあった」とそのときの心境を語った。
 1、2回とオーソドックスの丸田、サウスポーの阿部は、互いに前の手、前足でフェイントをかけまくり、ひりひりするような駆け引きの応酬でスタートしたが、その間合いをスッと切り裂いて、浅くだが左を合わせた阿部が先行。3、4回は丸田が刻みの速いリズムを取り戻し、押し返し始めた矢先の出来事だった。

「心も折れかけていた」という阿部に息を吹き返させたのは、片渕剛太会長だった。「会長が『絶対に(血を)止めてやるから、気にせずやってこい!』って」(阿部)

ロープを背負わせての力強い連打を見せた阿部。かつてない迫力だった
ロープを背負わせての力強い連打を見せた阿部。かつてない迫力だった

 インターバル中の叱咤を受けて始まった5回が、流れを決定づけた。飛び込むタイミングをより早く、より強くした阿部は、丸田にロープを背負わせる。ガードを掲げてやりすごそうとする丸田の両腕を横殴りにし、さらに右アッパーカットを突き上げる。丸田の大きな体がロープ伝いに揺らぐ。今度は丸田が左目上をカットしていた。

 リング中央でのやり取りで、丸田は阿部の左のタイミングを計れない様子だった。深いスウェーバックでかわそうとしても、細かいツーステップから左のダブルがちょこちょこと飛んでくる。だからロープを自ら背負い、左フック、あるいは右ストレートのカウンターを狙うものの、阿部の圧力がそれらを粉砕してしまう。

 相手の殺気を感じると、決してその間合いには入らない。それが阿部のセンスの高さでもあり、もう1枚殻を破りきれないところでもあったが、この日の阿部は危険領域を勇気をもって突破した。そればかりか、かつてない気迫をほとばしらせて連打をぶち込んでいく。気がつけば、丸田はカウンターを打つ余裕を失っていた。

阿部の左ストレートで丸田がダウン。試合の流れを強固なものにしたシーンだ
阿部の左ストレートで丸田がダウン。試合の流れを強固なものにしたシーンだ

 7回、リング中央で阿部がいきなり放った左ストレートで丸田がダウン。阿部の主導権は、これでいっそう強固なものになった。

 阿部も決して右ジャブを多用したわけではない。だが、打たずとも多彩なフェイントをかけて、丸田に左を打たせない。元々サウスポー相手には右リードを多用する丸田は、さらに右ストレート、右フック狙いに狭められ、それを阿部の集中力に絡め取られた。また、タイミングの読みづらい阿部の左が、丸田の右をも抑止してしまった。

一気に2本のベルトを手に入れた阿部
一気に2本のベルトを手に入れた阿部

 自ら「天才」を名乗り、早くから才能を認められていたものの、2度の日本王座挑戦は、いずれも失敗(引き分け、判定負け)。敏感なセンサーを働かせすぎて自らの動きを制限してしまった結果だったが、この3度目の挑戦に賭けていた阿部は、丸田という強豪王者を相手に、奔放に振る舞ってみせた。

「もっと感情が溢れ出すかと思ったけど」と片渕会長。創設15年目。ジム初の王者誕生に、ホッとする気持ちが強かったのかもしれない
「もっと感情が溢れ出すかと思ったけど」と片渕会長。創設15年目。ジム初の王者誕生に、ホッとする気持ちが強かったのかもしれない

 この試合は世界ランカー対決(丸田=WBC8位、WBO10位、IBF6位/阿部=IBF10位)だったが、片渕会長、阿部は、ともに「国内のフェザー級は猛者揃いだから」と、すぐに返上してさらに上、とは考えていない。会場にいたOPBF王者・清水聡(大橋)、元日本王者・佐川遼(三迫)も、もちろん世界ランカーで、彼らとの絡みが俄然注目される。阿部の戦績は27戦23勝(10KO)3敗1分。

 日本王座2度目の防衛がならなかった丸田の戦績は15戦12勝(9KO)2敗1分。「ダウンしたときから目が見えなかった」という言葉を残して会場を去ったが、しっかりと負傷箇所を治し、ふたたび戦線に加わるべき存在だ。

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