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2022-06-26

【ボクシング】井上尚弥のライバル候補が地力を見せつけた! アフマダリエフが最終回TKOで2冠守る

最終ラウンド、痛烈なボディブローでダウンを奪うと、アフマダリエフは一気に勝負を決めた

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 WBAスーパー・IBF世界スーパーバンタム級タイトルマッチ、チャンピオンのムロジョン・アフマダリエフ(27歳=ウズベキスタン)対ランキング4位の挑戦者ロニー・リオス(32歳=アメリカ)の12回戦は、25日(日本時間26日)、アメリカ・テキサス州サンアントニオで行われ、序盤から自在に戦いをコントロールしたアフマダリエフが、最終12回2分6秒でTKO勝ちした。アフマダリエフは2020年、ダニエル・ローマン(アメリカ)に勝って一気に世界のダブル王座を獲得して以来3度目の防衛に成功した。

 この男、かなりの曲者である。今はカリフォルニアに拠点を置くリオ五輪銅メダリストは、そのサウスポースタンスを対戦者とパンチが当たるか当たらないかのぎりぎりのラインに置き、右ジャブで間合いを測る。そして鋭いステップインから左ストレート、アッパーカット、あるいは力強い右フックを狙っていく。自分から攻めてもシャープ、相手に攻めさせてもすかさずカウンターアタックを仕掛けてスキを作らない。初の世界戦に敗れ、さらに痛恨のKO負けから這い上がった苦労人リオスも、やがて攻撃の手立てを失って、なされるがままのファイトに耐えるしかなくなっていった。

 最初のヤマは4回だった。鋭い攻防感覚で立ち上がりから無難に戦ってきたアフマダリエフの左ボディブローで、リオスが腹を抱え込んでしまう。チャンピオンは追撃打をたたみかけ、これで完全に流れをつかみ取った。
鋭く、的確なパンチでチャンピオンはリオスをコントロールし続けた
鋭く、的確なパンチでチャンピオンはリオスをコントロールし続けた

 中盤戦はアフマダリエフが自在のボクシングを展開していく。鋭いワンツーで攻撃機会の芽を摘み取られたリオスは防戦主体に回らざるをえない。大きく距離をとって、左右にステップを踏んで惑わせる。鋭い右ジャブで刻んでから、いつの間にか近づいて打ち込む左アッパーも効果的だ。リオスの強引な反撃も、すぐにウズベキスタン人の深く掘り込んだ流れの中に飲み込まれていった。

 11回から大きく振り回すスイング(パンチ)も使うようになったアフマダリエフは、ついにKO決着に向けて走り出す。そして、その決意はラストラウンドに実を結ぶ。強烈な左アッパーが2発ボディを捉えて、挑戦者はこらえきれずにリングに崩れる。苦悶の表情を浮かべながらも何とか立ったリオスだったが、アフマダリエフのフォローのアタックに反応できず、レフェリーのラファエル・ラモスがここでストップをコールした。

 WBAスーパー・WBC・IBF世界バンタム級チャンピオン、井上尚弥(大橋)はバンタム級で4団体統一を果たした後、スーパーバンタム級転向を明言している。だからこそ、アフマダリエフはなおさら注目に値する存在だ。抜群の距離感覚、一瞬にして攻撃に移るクイックネスは、井上の持ち味と重なる。井上がもっと攻撃的で破壊力に富んでいるのに対し、アフマダリエフは『攻』と『防』の比重がほぼ同じ。井上がどんな形で、ウズベキスタン人との間合いを取ったペース争いを打ち破っていくのか。今から楽しみになる。

 ただし、アフマダリエフはその前に大仕事を計画している。IBFの指名挑戦者マーロン・タパレス(フィリピン)との防衛戦後、スーパーバンタム級の世界王座を二分する一級の技巧派スティーブン・フルトン(アメリカ=WBC・WBOチャンピオン)とのこのクラスでの4団体統一戦の実現だ。「どんな相手でも戦う準備はできている。ただ、ボス(エディ・ハーン・プロモーター)の方針に従うだけ」。アフマダリエフは言外にビッグマッチへの待望を口にしている。

 アフマダリエフは11戦11勝(8KO)。リオスは37戦33勝(16KO)4敗。

文◎宮崎正博(DAZN観戦) 写真◎Ed Mulholland/Matchroom

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