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2021-04-04

【ボクシング】ストップが早すぎる? 岩佐亮佑、ウズベキスタンでTKO負け

前日計量では互いに必勝を誓った岩佐(右)とアフマダリエフ(Photo:Ezekiel Thomas/Matchroom Boxing)

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 IBF世界スーパーバンタム級暫定チャンピオンの岩佐亮佑(セレス)が敵地に乗り込んでWBAスーパー・IBF世界同級王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)に挑んだ12回戦は3日(日本時間4日未明)、ウズベキスタン・タシュケントのウーモ・アリーナで行われ、岩佐は5回1分30秒、レフェリーストップによるTKOに敗れた。

「あまりに早すぎるストップではなかったか」。海外サイトの速報にはそうあった。そうなのかもしれない。最初のピンチでのいきなりの終結である。アフマダリエフの細かい連打を浴びながら、まっすぐにロープまで後退したところで、レフェリーが両者の間に飛び込んだ。抱きかかえられ、試合終了を告げられた岩佐の表情には、驚きからか、苦笑いばかりが広がった。

 確かにそれまでの展開に、IBF暫定チャンピオンの持ち味で色付けされた場面はなかった。身長で6センチ上回る岩佐は、出足こそ、同じサウスポーのウズベキスタン人にしつこく右を突いたが、逆に力強いジャブを返され、鼻の頭が紅くなる。初回の終盤には距離を縮められ、右フックから左のオーバーハンドブローを打ち込まれた。

 2ラウンドに入っても、左右に細かく動きを刻み、鋭く切れ込んでくるアフマダリエフを岩佐は押しとどめることができない。決して強打されたわけではないが、アウトサイドからねじ込むように打ち込む左右のフック、インサイドからも細かい連打をまとめられ、顔全体が赤みを帯びてくる。

 岩佐はその後も流れをつかめない。3ラウンドには左ストレートを浴びて体が揺れる。岩佐の単発の反撃は大きく空を切った。まずは当てる感触からつかみたい。続く4ラウンド、岩佐はそう思ったのだろう。追いかけるように左右を伸ばすが、それもなかなか届かなかった。アフマダリエフに鼻血を流させるのがやっとだ。それでも、まだまだ岩佐には余力が見てとれた。厳しい状況下でも、得意の左ストレートがタイムリーにヒットすれば、流れを急転させるチャンスはあるはず。だが、その希望は直後に遮られる。

 5ラウンドが開始してすぐのこと。岩佐が一瞬、気を抜いたように見えた。そこに2団体統一チャンピオンの左アッパーカットが炸裂する。“挑戦者”の体に動揺が走る、一気のフォローアップに30秒以上もさらされた。

 チャンピオンの追撃がややおとなしくなり、なんとか体勢を立て直した岩佐は反撃のパンチを二つ三つ。しかし、そこにまたしても左アッパーをカウンターで喰らう。ダメージを被った岩佐はまっすぐにロープまで後退。その間に、10発ほどのパンチを被弾した。ロシア人レフェリーのユーリ・コプツェフは、ここでいきなり試合を終わらせた。

 冒頭の記述のとおり、海外のメディアでも、岩佐に対して同情的な声は多い。ただ、序盤からペースを奪われ、決定的ではないにしろ、同じラウンドに2度までピンチにさらされれば、こういう判断をされることもあると覚悟しないとならないのかもしれない。

 なお、コプツェフはレフェリー歴15年のベテランで、メジャーな世界タイトル戦のレフェリーをつとめるのは2週間前、モスクワで行われたWBC・IBF世界ライトヘビー級戦に続いて2度目だった。

「スーパーバンタム級の4団体統一チャンピオンを狙いたい。だが、今は岩佐との試合に集中している」と試合前に語っていた26歳のアフマダリエフは、リオ五輪の銅メダリストからプロに転向し、8戦目でタイトルを獲得。今回が初防衛戦だった。9戦9勝(7KO)。31歳の岩佐は31戦27勝(17KO)4敗。あるいは、IBF暫定タイトルを獲得したマーロン・タパレス(フィリピン)戦から16ヵ月も空いたブランクも影響したのかもしれない。

文◎宮崎正博

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