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2020-08-17

いよいよ本格再開!? ドリームマッチの行方は?──世界編

パンデミックでも、黙して座していては干上がってしまう。世界のボクシングがいっせいに動き出した。実現が待望されるドリームマッチの数々。原則として無観客試合となる環境下で、どこまで実現できるのか。ボクシング・マガジン9月号では、ニューヨーク在住のスポーツライター、杉浦大介氏が膨大な資料を収集し、さらに独自の視点を交えながら今後の行方を読み解いていく。

上写真=アルバレス(左)対ゴロフキンの2年ぶりの対決は実現するのか

 アメリカ最大のスポーツチャンネル、『ESPN』に6月からカードを提供しているボブ・アラムのトップランク。自宅の裏庭に特設リングを組んで、8月から『DAZN』をベースに活発な活動を開始したのがエディ・ハーン率いるマッチルームだ。さらにオスカー・デラ・ホーヤのゴールデンボーイ、クィンズベリー・ボクシングのフランク・ウォーレンも動き出す。そして、ずっと沈黙してきたPBC(プレミ・アボクシング・チャンピオン)も7月下旬に、ペイステーション『Showtime』で放映する年末までのカードを一気に発表。もうひとつ契約する『FOX』での放映分も随時、明らかにしている。手ぐすねを引いて待ちわびていたスーパーチャンプたちも、近づく戦いの気配に身震いしているに違いない。

 ただし、すべてのカードは、観客を入れないというのが大前提。観客動員についてはやがて緩和されるにしろ、あくまで限定的になるはずだ。テレビ中継やネット配信で見る歓声なき戦いは、最初のうちは斬新にも思えたが、慣れてくるとどうにも殺伐とした空気も感じてしまう。選手とて、大観衆の前で戦いたいに決まっている。テレビ放映料とともに入場料も大きな収入源となるプロモーターとしても思いは同じだ。

 厳しい状況にあったとしても、ボクシングの火を消してはならぬ。ボクシング界のリーダーたちは、ビッグマッチの実現に懸命の努力を重ねている。記事では階級やその周辺エリアによって5つのテーマに分け、今後を占っていく。

●ヘビー級 
 タイソン・ヒューリー、アンソニー・ジョシュア(ともにイギリス)、デオンテイ・ワイルダー(アメリカ)の三すくみがとっても熱い。3者による実質リーグ戦に発展する可能性もありそうだ。地盤沈下がささやかれる昨今のヘビー級も、一般ファンも含めた注目度はやはりケタ違い。トップを行くフューリーには、ワイルダーとの再戦が待ち受けているが、ジョシュアもさかんに秋波を送っている。

痛烈にワイルダーを倒したフューリーだが、両者の再戦が義務付けられている

●ミドル級周辺
 メガ級の注目を集めるカネロ・アルバレス(メキシコ)とゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)によるラバーマッチ(第3戦)は前に向かって動き出した。ただし、実現までには『無観客』の高い壁がある。さらにジャモール、ジャーメルのチャーロ兄弟(アメリカ)がついに勝負に出る。9月、ジャモールはウクライナの技巧派ファイター、セルゲイ・デレビャンチェンコ(ウクライナ)、ジャーメルは若きスラッガー、ジェイソン・ロサリオ(ドミニカ共和国)と3団体の世界王座をかけて対決するのだ。カネロ対GGGはスーパーミドル級で行われる可能性が高く、ミドル級の主役を目指して。ともに大事な戦いになる。

孤高のロードを行くクロフォードだが、もちろん本人が望んだものではない

PBCの中央に仁王立ちのスペンスも、交通事故の影響が心配

●ウェルター級
 文字どおりの群雄割拠。ただし、トップ選手の大半はPBCの傘下にいる。野心を湛えながらも、トップランク所属ゆえ、孤独の尾根道行きを余儀なくされるテレンス・クロフォード(アメリカ)は、望むビッグマッチ実現への可能性を模索するが……。一方、今やクロフォード以上の実力者に育ったとされるエロール・スペンス(アメリカ)は、強打のダニー・ガルシア(アメリカ)との対戦が決まった。スペンスは選手生命も脅かされた交通事故からの復帰第一戦にもなる。あらゆる意味で注目される。そして、忘れてはならない。マニー・パッキャオ(フィリピン)の名前もちらほらと出てくる。

新鋭ロペスの挑戦を受けるロマチェンコは練習を欠かさない

デービスは、凄味なら現役ナンバーワンだ

●ライト級周辺
 無敵のスーパーテクニシャン、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)と、タイムリーなKOショットで人気急騰中のテオフィモ・ロペス(アメリカ)の対決は、当初5月に決定していたが、コロナ禍によって延期に。両者が所属するトップランクでは10月にリセットしようと画策するが、ここにも『無観客』の影がちらつく。一方、今もっとも危険なパンチャー、ジャーボンテ・デービス(アメリカ)は4階級制覇王者のレオ・サンタクルス(メキシコ)と対戦。スーパーフェザー級のメキシカン対決、ミゲール・ベルチェルト対オスカル・バルデスも実現への路線に乗っている。

井上尚弥を世界中が待ちわびている

●井上尚弥とその周辺

 井上尚弥(大橋)はもう日本だけの宝ではない。世界中から熱視線を浴びている。ただし、アメリカへの本格進出はCOVID-19に阻まれたまま。世界のファンは待ちぼうけを食わされている。その間に、4月に対決が決定していたジョンリール・カシメロ(フィリピン)戦は微妙な情勢になってきた。そこで、急浮上してきた相手候補の名前は……。

 情報は盛りだくさん。今後を読む杉浦氏の切り口も鋭利。6ページの特集も一気に読みきれる。

写真◎ゲッティ イメージズ

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