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2022-08-09

【連載 泣き笑いどすこい劇場】第10回「ハプニング」その2

赤いランプが上にズラリ。初めて見た人なら意味がわからなかったかも。平成12年九州場所6日目

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勝負の神様はきっと、とてつもないイタズラ好きに違いない。その証拠に、思いもしないところに落とし穴や、隠しトビラを作り、フイをついて立ちすくませたり、足元をすくったりして、目の色を変えて闘っている力士たちを慌てさせたり、冷や汗をかかせたりして喜んでいるのだから。そうとしか思えないようなハプニングが土俵の周りではよく起こります。そんなとき、土俵上では見られない人間臭さが垣間見えるのもまた、事実です。そんなビックリドッキリの面白ハプニングを紹介しましょう。
※月刊『相撲』平成22年11月号から連載された「泣き笑いどすこい劇場」を一部編集。毎週火曜日に公開します。

快挙の裏に芸者あり
 
本場所に来場したことのあるファンの方ならばご存じのはずだが、館内には、その日の取組と勝負結果を示す電光掲示板が設置されており、勝った力士の上には赤色のランプが明々と点くシステムになっている。平成12(2000)年九州場所6日目、この電光掲示板の十両の西方力士全員に赤いランプが点いた。つまり12人(当時の十両取組は全12組)の西方力士がそろって勝ったのだ。
 
数字に強い人が計算したら、この西方力士がそっくり勝つ確率は2148分の1になるそうだ。もちろん、相撲協会にもこんな珍記録の例は残っていなかった。
 
この史上初の大記録達成を担って12番目に土俵に上がったのは金開山(現高崎親方)だった。結果は大至を押し出して見事、満願成就となるのだが、きっと相当なプレッシャーがかかったはず、と思いきや、引き揚げてきて金開山は頭をかいてこう言った。

「いやあ、そんな記録がかかっていたとは、全然知らなかった。いつもは塩を取りにいくとき、電光掲示板を見るんだけど、ちょうどあの下に博多の芸者さんたちが見えていたので、そっちに目を奪われて、電光掲示板は見なかったんです。もし知っていたら、硬くなって違った結果が出たかも。花道から戻ったところで若い衆に言われて初めて知りました」

まさに芸者サマサマ。時津風理事長(元大関豊山)も、

「初めて相撲を見にきた人は、勝った人が掲示板の片方になるシステムと勘違いしたんじゃないでしょうか」
 
と笑っていた。

月刊『相撲』平成23年8月号掲載

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