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2022-08-31

【ボクシング】壮絶打撃戦! 木村吉光が最終回に中川兼玄をストップしWBO・AP王座獲得

木村の右カウンターが決まると、中川は崩れ落ちた

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 30日、東京・後楽園ホールで行われたWBOアジアパシフィック・スーパーフェザー級王座決定戦12回戦は、同級1位の木村吉光(26歳=志成)が同級4位・中川兼玄(なかがわ・かねひろ、27歳=角海老宝石)を最終12回2分29秒TKOで下し、空位の王座に就いた。木村は昨年12月に獲得(今年3月返上)したOPBF東洋太平洋同級王座に続き、2本目のベルトを手に入れた。

文_本間 暁
写真_山口裕朗

 最終回も木村の手数は加速し続けた。6連打、8連打と左右のストレートがガードを突き破り、中川の顔面を弾き続ける。溜まりに溜まったダメージは明らかだった。けれども、中川は鬼気迫る形相で左フック、右と返していく。しかし、フックを打ち出そうと左腕が開いた刹那、木村の右がカウンターとなって突き刺さると、中川はこの試合3度目のダウン。レフェリーは即座に試合をストップしたのだった。

木村は強度を上げていく連打で、中川のガードを打ち破った
木村は強度を上げていく連打で、中川のガードを打ち破った

 序盤から中盤にかけて、木村が下がりながら中川を引きつけるという作戦を取ったものの、後半に入ると、動きを止めた攻防が繰り返された。足を使わない、ステップを刻まない両者の戦い。中川は得意の右を打ち込むのに好都合。木村は上体を上げ下げするボディワークを使って、かわしにかかる。だが、中川が左ボディブローを差し込むと、明らかに動きも集中力も欠き、続けて放たれる右を再三再四直撃された。

得意の右強打で、最後まで粘り続けた中川
得意の右強打で、最後まで粘り続けた中川

 大きく動いていた木村が動きを止めたのは、後半に披露し続けた止まない連打に繋がった。が、半面、動かなかったことで少なからず被弾したという言い方もできる。中川の連打は2発までは効果的だったが、3発以上になると“間”が生じてしまうため、木村は回り込んだりサイドへ動いたりしてかわすことができた。対して木村の手数は圧倒的で、中川はしっかりとガードを上げているものの、3発以上になるとそこを破られる。最終的にはここの差が勝敗を決した。

 退く木村に右を出させ、そこを待ち構えていた中川の右ショートカウンターのタイミングが序盤は合っていた。けれども、スピード、回転力で徐々に木村が少しずつリード。中川も左フック、左アッパーを見せておき、威力ある右をヒットさせたものの、5回に右のカウンター、9回にはワンツーで木村が中川からダウンを奪い、主導権を握り続けた。
 完全にポイントをリードされ、心が削られても不思議ではなかったが、中川は最後まで木村を追い続けた。対して木村も真っ向勝負を挑み、倒し切った。互いに立派な戦いだったが、その代償は大きく、木村は試合後の会見をキャンセルし、念のため、病院へ直行した。
 木村の戦績は17戦14勝(9KO)2敗1分。中川の戦績は18戦11勝(5KO)7敗となった。

2つ目のベルトを手に入れた木村だが、ダメージは大きかった
2つ目のベルトを手に入れた木村だが、ダメージは大きかった

大差判定勝ちの大湾は「記憶がない」

左フックをヒットする大湾

左フックをヒットする大湾

 セミファイナルで行われたスーパーバンタム級8回戦は、日本同級9位の大湾硫斗(おおわん・りゅうと、24歳=志成)がOPBF同級13位マーク・アンソニー・ヘラルド(31歳=フィリピン)を79対72、79対72、79対72の大差3-0判定で退けたものの、6回に食った反則打でダウンを喫し、ダメージを引きずったまま戦う冷や冷やの勝利だった。

 距離、スタンス、打ち終わりのバランス。大湾はそれらをキープして、サウスポーのヘラルドと丁寧に戦うことを終始心がけ、黙々と実践。右ストレート、左フックと随時決めてポイントを確実にものにしていた。

柔軟で思い切りのいいヘラルドは怖い相手だった
柔軟で思い切りのいいヘラルドは怖い相手だった

 しかし6回にバッティングが起きた際、レフェリーがストップをかけたところ、ヘラルドが右フックを放ち、これがまともに大湾のアゴを捉えてダウン。ヘラルドには減点1が科され、大湾には休息が与えられたが、「試合のことは断片的にしか憶えてない」と試合後に語ったとおり、ダメージを引きずる戦いを強いられた。
 これで勢いを増したヘラルドの攻撃に対し、決定打を食らわずに試合を終えた大湾は本能だけで戦っていたのだろう。
「気を抜いたところで貰ってしまった。集中力があれば貰わなかった」と反省しきりの大湾。生き残るために反則を辞さず、それに乗じて戦う選手は世界中に山ほどいる。勝って反省できたことは大きな経験だ。
 大湾の戦績は10戦9勝(6KO)1敗。ヘラルドの戦績は52戦38勝(19KO)11敗3分。

★その他の試合結果

右でコントロールする中井
右でコントロールする中井

◆スーパーフェザー級8回戦◆
中井龍(なかい・りょう、24歳=角海老宝石)日本スーパーフェザー級12位
ジェス・レイ・ワミナル(27歳=フィリピン)WBOアジアパシフィック・フェザー級15位
判定3-0(80対72、80対72、80対72)
 一見、体全体の動きが鈍重に見えるワミナルだが、瞬間に放つ右は速くかつ、威力もある。この“ズレ”に惑わされがちだが、サウスポーの中井は早々にそれを感じ取り、左右への速いサークリングで“貰わない”ボクシングを実践。テンポの上げ下げを繰り返し、右ジャブ、左ストレートでポイントを重ねていった。
 しかし、ワミナルは体も強く、不器用に見えて少しずつ被弾を回避する技術もあった。そしてぬるりと距離を詰めて強弱の利いた連打を繰り出す。中井が巻き込まれそうなシーンもあったが、彼は決して飲み込まれなかった。
 場内の雰囲気にも動じなかった。それに気圧されて、自分の距離を自ら崩していたら、落とし穴が待っていただろう。この芯の強さは中井の大きな武器だ。
 中井は7戦5勝(2KO)1敗1分。ワミナルは21戦14勝(8KO)6敗1分。

右の連打でスリカオを倒した渡邊
右の連打でスリカオを倒した渡邊

◆スーパーフェザー級6回戦◆
渡邊海(19歳=ライオンズ)日本フェザー級15位
アティップボディ・スリカオ(18歳=タイ)
TKO4回1分7秒
 いわゆる定石どおり、渡邊はサウスポーのスリカオに対し、左へ回っていく動きにこだわった。しかし、足が絡まり、右を打ちこむ距離から遠ざかり、時折勢いよく攻め込むスリカオに戸惑いを見せた。左フック、右と空振りも多く、自らのリズムも崩しかけていた。
 だが4回、スリカオの左を外しざま、回り込んでワンツーをヒット。ボディを混ぜて、右アッパー、右ストレートを直撃するとスリカオはバッタリとダウン。レフェリーが即座にストップした。
 渡邊の戦績は8勝(4KO)1分。スリカオの戦績は6戦4勝(2KO)2敗。

速いターンで背中を取る。渡邊はこれでリズムを取り戻した
速いターンで背中を取る。渡邊はこれでリズムを取り戻した


恐ろしい速さで2度倒した鈴木
恐ろしい速さで2度倒した鈴木

◆ライト級6回戦◆
鈴木稔弘(すずき・としひろ、25歳=志成)
ポーンセップ・ワドンガム(20歳=タイ)
TKO1回25秒
 兄は元日本スーパーライト級王者・雅弘(角海老宝石)。駿台学園高校から日本大学と名門出身で“大器”と前評判の高い弟が、満を持してのプロデビュー戦を迎え、衝撃の速攻劇を遂げた。
 ゴングが鳴るやいなや、スルスルッと相手に接近し、切れ味鋭い左フックからのコンビネーションを見舞い、右ストレートで倒すと、立ち上がったポーンセップにワンツーから左ボディを突き刺し、左フックでなぎ倒す。これで大の字になったポーンセップは誰が見ても起き上がれない。レフェリーももちろんノーカウントで試合を止めた。
 相手との力量差うんぬん以前に、シャープでしなやかに伸びる攻撃は、対戦相手選びが困難となりそうだ。ポーンセップは7戦4勝(3KO 3敗。

KOパンチはこの左フック!
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