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2020-03-17

井上尚弥だけじゃない。4月の海外ボクシングが次々に中止

 井上尚弥(大橋)の本格的アメリカ進出は既報のとおり延期になった。新型コロナウイルス流行の影響は甚大で、4月中のビッグマッチはすべてキャンセル。五輪ヨーロッパ予選も中断となっている。

上写真=「カシメロを倒す準備を続けます」と井上

さまざま対策が模索されたが、パンデミックには勝てず

 井上尚弥(大橋)が出場するはずだった4月25日、アメリカ・ネバダ州ラスベガスのWBAスーパー・IBF・WBO世界バンタム級タイトルマッチ(対戦相手はジョンリエル・カシメロ)の延期が正式に発表されたのは、日本時間の今日17日の朝のことだった。

 大方が予想していたシナリオでもあった。さまざまなメディアが報じているとおり、会場のマンダレイベイ・リゾーツを傘下に置くMGMリゾーツが、従業員のコロナウイルス感染の報を受けて、17日以降、5月1日まで、カジノ、ホテルなどすべての事業を停止することを発表したのが最後の引き金になった。MGMリゾーツが持つカジノホテルで、この期間に開催される予定だったボクシングカードを、プロモーションが次々に撤退を表明。28日に予定されていたルイス・ネリ対アーロン・アラメダの不敗メキシカン対決も中止になっている。ネバダ州に限らずメリーランド州のMGMナショナルハーバーのスーパーライト級の好カード、レジス・プログレイス対モーリス・フッカー戦(ともにアメリカ)もキャンセルされている。

 プロモーターのボブ・アラムは、放映するESPN+用に無観客、特設スタディオでの開催の線も模索したが、アメリカの国家非常事態によって出された禁止項目に『50人以上の集会』が盛り込まれており、それも断念。ネバダ州アスレティックコミッションが25日に開く委員会での決定を待たずに決断したもの。

 トップランク、PBC、DAZNなど有力プロモーションが延期したカードの新日程は不明のまま。ESPNの報道では、IBF世界ミドル級チャンピオンのゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)が4月11日から6月6日にスライドさせた防衛戦(相手カミル・シェルメタ)が再開後、最初のビッグカードになるとしている。

 COVID-19によるパンデミックの影響から、当然のように行き着いた結論だった。3月6日にタイ・バンコクのルンピニースタジアムのムエタイ興行で集団感染が起こっており、ボクシングが何ごともなくここまでなどりついたのは、幸運だったのかもしれない。

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五輪までに予選は消化できるのか

 五輪の予選にも各競技に大きな影響が出ているが、ボクシングも例外ではない。あるいは、最も深刻かもしれない。14日にイギリス・ロンドンで開幕したヨーロッパ予選は、無観客で実施されてきたが、ついに中断の判断が下された。

 50ヵ国、340人の参加選手が、男子50、女子27の代表権を争うトーナメントには、本番の五輪での金メダル有力候補が数多く参加していただけに残念だった。ただ、24日までというロングラン開催だけに、どこまで消化できるのか、最初から懐疑的な声も出ていた。結局、序盤戦で撤退を余儀なくされた。

 代替の大会は5月か6月の方針で、中断前までの試合結果は、覆ることはない。26に日に開幕予定だったアメリカ大陸予選、5月の世界最終予選はすでに延期が決まっている。代表枠の決定がいつまでずれ込むのか。五輪が予定どおりに開幕するのなら、のっぴきならない状況にある。

文◎宮崎正博 写真◎山口裕朗 ゲッティ イメージズ

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