試合に勝利するため、あるいはパフォーマンスを向上させるためのプレー分析は、競技・レベル・年代を問わずに行われている。その方法は多岐にわたるが、映像を撮影、分析することもその1つだが、そのメリットはどの辺りにあるのだろうか。また、撮影機材に欠かせない機能とは。エイジェック傘下の野球チームでアナライザーを務める木山琢登氏に聞く。映像によって、自分を客観視する癖をつける――試合やプレーを分析する手法はさまざまありますが、映像分析のよさや重要性は、どのあたりにあるでしょうか。木山 まず、自分の動きは客観的に見ることができないものの、映像ではそれが可能になるという点です。ほかの人の動きと自分の動きを比較することができるのも、映像の強みです。最近の若い人たちは映像を見ることに慣れているため、打率やストライク率などのように数字で説明するよりも、映像を見せながら話したほうが、すんなり受け入れてくれます。
木山琢登 きやま・たくと/筑波大学大学院野球コーチング論研究室を修了し、2022年4月に株式会社エイジェックスポーツマネジメント入社。事業運営部スクールアカデ ミーチーム アナライザー。エイジェック傘下の男子・ 女子硬式野球部、およびBCリーグ・栃木ゴールデ ンブレーブスの 3 チームで、映像を活用した情報収 集やデータ提供のサポートを行う。
――撮影機材を選ぶ際に、外せない要素はありますか。木山 野球は雨天でも試合や練習が行われますから、防水機能と防塵機能はマストです。「teamnote CAM」は防水・防塵の上、カメラを丸洗いすることもできます。また、選手が衝突してカメラを倒してしまうこともあるのですが、衝撃耐性も高いので心強いです。ぶつかった選手は焦っていますけどね(笑)。あと、今の時期は暑さ対策。なかでも直射日光は気にかけていますが、タブレット端末などに比べると、「teamnote CAM」は暑さにも強いと感じています。
――「teamnote CAM」といえば特長の1つに、遅延再生による即時フィードバックがあります。木山 撮影した映像をその日のうちにチェックできるよう、YouTubeにアップすることでも選手たちは喜んでくれますが、見る癖がついていない選手はなかなか見ません。そのため、練習しながら映像を確認できるのは大きな魅力です。
着眼点を磨くことで上達に拍車をかける――映像による即時フィードバックで、気をつけるべきことは。木山 高校や大学を卒業した後も野球を続けている選手というのは、前提として能力が高く、自分がチェックすべきポイントや改善すべき課題をきちんと理解しているので、映像も自分で的を絞って見ることができます。一方で、中高生くらいだと映像にばかり気を取られてしまう恐れがあります。せっかく映像を見ても、何がよくて、何が悪いのかがわからないのでは意味がありません。ですから、育成年代のチームで導入する場合には、監督やコーチが見るべきポイントを示す形で活用するのがよいのではないかと思います。
――そうすることで、徐々に見るべきポイントや動きの感覚がつかめてくる、と。木山 自分がどう動いたのか、という感覚がない選手は少なくありません。例えば、実際にボールを打つわけではないので、打球の行方がわからない素振りでは、そのスイングがいいのか悪いのかがわからないケースは、育成年代や女子の選手にはままあります。そのような場合も、コーチと一緒に振り返ることで、感覚は高まっていくと思います。そうして自分のなかの感覚が研ぎ澄まされていけば、コーチのアドバイスがなくても、自分だけで映像を見て上達していくことができるはずです。
▲1〜7秒間の遅延再生機能は任意で設定が可能。 感覚を忘れないうちに、その場でプレーを振り返ること ができる
「teamnote CAM」を使用した選手の声
◎吉田えり選手(投手)
「いつもはスマートフォンで1回1回動画を撮影して見返していたので、とても手間がかかっていました。投げた後、ボールをもらってモニターに目を移すと、直前に投げた映像を見られるのがとてもいいですね。頭のなかで『もう少し足を高く上げてみよう』『もうちょっと手を上げたほうがいいかな』などと思い描いたことが、実際にうまくいったか、いかなかったのかを、感覚が残っているうちに確認できるので、とてもわかりやすいです。1球も無駄にすることなく修正が可能で、よい感覚をつかめると感じました。
映像があると自分を客観的に見ることができるので、1人で考えながら練習を重ねるよりも安心です。私はそんなにセンスのあるピッチャーではないので、ああでもない、こうでもないと考えているうちに違う方向にいってしまったり、ケガをしてしまったりすることも経験してきました。今日は最初こそあまりよくなかったのですが、1球1球映像を確認しながら修正を加えていくことで、最後はいい感じで投げることができたと思います。
カメラに蓄積された過去のデータと比較することもできるということなので、ぜひそういった機能も活用してみたいですね」
◎京橋幸多郎選手(外野手)
「自分が意識していることやチェックしたいことをすぐに見られるのがいいですね。映像を撮影するとわかるのですが、意外に自分が思っている通りに動けていないものです。それも、遅延再生機能のおかげで『この意識でやるとこういう動きになるんだな』と、感覚と実際との誤差がすぐにチェックできます。これまでは、何か確認したいことがあると誰かに動画を撮ってもらって見ていましたが、どうしても間が空いてしまっていました。これは圧倒的にフィードバックが早くて便利です。
今回はバットの軌道に注目して映像を見返しました。自分がイメージしている軌道とのズレがどのくらいあるのかな、と。実際にやってみて、若干ズレがありましたが、同時に『それなら、もう少しこうしたらいいかも』というのを、すぐに感じることができたのでよかったです。
今後も練習で活用したいですね。それこそ打撃だけではなく、走塁でも自分がどのようなスタートをしているかを確認できると思いますし、送球も見てみたい。幅広く使えそうなので、練習が楽しくなりそうです」