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2022-09-18

【ボクシング】井岡一翔のライバル王者ロドリゲスがV2。無敗レコードを17に

ボディブローをブロックした右腕で、リターンのアッパーを突き上げるロドリゲス

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 世界の軽量級シーンの新スター候補、WBC世界スーパーフライ級チャンピオンのジェシー・ロドリゲス(22歳=アメリカ)が17日(日本時間18日)、アメリカ・ネバダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで同級11位のイスラエル・ゴンサレス(25歳=メキシコ)を3-0の判定で下し、2度目のタイトル防衛に成功した。

取材・文_宮田有理子
Text by Yuriko Miyata
写真_ゲッティイメージズ
Photos by Getty Images

 カネロ・アルバレス対ゲンナジー・ゴロフキン第3戦のセミファイナル。やさしい童顔に似合わぬ胆力と機動力で、ライトフライ級の新鋭から急展開でスーパーフライ級のトップシーンに躍り出てきた22歳のサウスポー、ロドリゲスが今回、その大役に抜擢された。今年2月に、試合6日前の代役を引き受けてWBC王座決定戦に臨み、元王者カルロス・クアドラス(メキシコ)からダウンを奪って判定勝ち。6月の初防衛戦ですぐさま指名試合の義務を果たし、かつてこの115ポンド階級の脅威となった古豪シーサケット・ソールンビサイ(タイ)をも撃破。ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)やファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)ら名だたる“小さな巨人”たちに立ちはだかった屈強なタイ人からダウンを奪い、8回にストップした勝利には大きなインパクトがあった。「リスクがある戦いこそ、スーパースターになる条件」と言い切り、名のある元王者たちを自在のボクシングで切り刻んできたロドリゲスだから、今回、中堅ボクサーのゴンサレスが相手となれば、主催発表の賭け率15対1と圧倒的有利の予想がついたこともうなずけた。

右ボディアッパーのリターンをはじめ、手数で対抗したゴンサレス
右ボディアッパーのリターンをはじめ、手数で対抗したゴンサレス

 しかし、その期待は22歳の若いチャンピオンに重圧となってのしかかっていたのかもしれない。試合が始まってみるとロドリゲスは初回に右ロングアッパーで先攻されたあと、なかなかリズムに乗ることができなかった。プレスをかけ、ジャブから、左ストレートから得意のアッパーと、切り口を変えながら長身のチャレンジャーに迫るのだが、持ち前のコンビネーションがスムーズにつながらないのである。そこには、4度目のチャンスに賭ける挑戦者ゴンサレスによる研究と、思いの強さもあっただろう。

 ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)のIBF王座、カリド・ヤファイ(イギリス)のWBA王座への挑戦に失敗した後、3年前に日本で石田匠(井岡)を判定で下して再浮上。2020年秋にはローマン・ゴンサレスがヤファイから奪ったWBA王座に挑んで大健闘した、粘りが身上の25歳の挑戦者は、機をみて上下に長いパンチをまとめ打ち、チャンピオンの攻撃を寸断するのだ。

ロドリゲスは、力みなくスムーズに、モーションのない左をヒットした
ロドリゲスは、力みなくスムーズに、モーションのない左をヒットした

 チャンピオンは3回からピッチを上げて速い攻防に持ち込み、5回にはサイドに回って右アッパー。左ストレートと、見栄えのいいパンチをコツコツと差し込んで、振り分けの難しいラウンドを拾っていく。8回にローブローで減点1を科された分を取り返すように、終盤も下がらず大柄なチャレンジャーに向かい、ハイピッチのままフルラウンドは終了した。

 118対109、117対110、114対113というジャッジの採点よりも競り合った印象があった戦いだが、ロドリゲスの勝利に議論はなし。緑のベルトを肩に、満面に安堵をひろげて、「思った以上にタフで、やりにくい相手だった。ローブローは、ボディを打ったらそうなってしまったもの。思い描いたとおりのパフォーマンスにはならなかったけれど、ボクシングとはそういうスポーツなのだと思う」と話したチャンピオンは、全勝記録を17戦17勝(11KO)に伸ばした。

熾烈なスーパーフライ級ウォーズの中で、将来性を感じさせる王者
熾烈なスーパーフライ級ウォーズの中で、将来性を感じさせる王者

 スーパーフライ級の頂は活発に動ている。WBA王者エストラーダと“ロマゴン”がついに12月3日、3度目の対戦を迎えるだけでなく、現IBF王者フェルナンド・マルティネス(アルゼンチン)と前王者アンカハスの再戦が10月8日に、大晦日には、WBO王座を5度守っている井岡一翔(志成)が恒例の舞台に立つはず。チャンピオンたちの最強対決が、楽しみである。

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