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2020-02-15

リナレスが完璧KO勝ち。超人気ライアン・ガルシアとの対決へ!?

3階級世界王者ホルヘ・リナレス(ベネズエラ/帝拳)は14日(日本時間15日)、アメリカ・カリフォルニア州アナハイムでカルロス・モラレス(メキシコ)とライト級12回戦を行い、4回2分9秒KO勝ちした。

ものの見事なKO勝ちのリナレスには次に大一番が控えている

完全復活を告げるリナレスの右ショート

 右ショートの切れ味、抜群だった。これ以上にないタイミングで、急所をピンポイントでピタっと叩く。究極のスピードスターだったベネズエラの“ゴールデンボーイ”もキャリア52戦目(47勝29KO5敗)、年齢は34。幾多の栄光ととともに試練の時間を潜り抜け、精緻に急所をさぐり取る熟練の名手になったのだ。

 リナレスにはこの日、後ろはなかった。敗れたとは言え、最強の技巧派ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)からダウンを奪い、存在感を大きくアピールしたのもつかの間、4階級制覇を目指したスーパーライト級での戦いで、格下パブロ・セサール・カノ(メキシコ)に初回KO負け。その株は大きく下落した。昨年9月、再びライト級に落とした日本での再起戦を白星(アル・トヨゴン=フィリピン=に判定勝ち)で飾ったものの、まずまずという以上の評価は出せなかった。この日、同じリングに登場した超人気の若手KOスター、ライアン・ガルシア(アメリカ)との次戦での対決を前提にリングに立ったリナレスには、印象的な勝利という以外、トップボクサーとして生き残る道は残されていなかった。

 対戦するモラレスはスパーリングでも手合わせしており、手の内は知っている。だが、一時16連勝で急上昇してきたメキシカンは30歳。このところやや足踏みが続く。ここでリナレスを食わなければ、もう大きなチャンスがやってこないのは承知していた。だからやみくもに出てきた。初回、バッティングで左まぶたをカットしたリナレスも、やや慌てたのかもしれない。2回にはモラレスの右アッパーを打ち込まれて、足もとが揺らいだ。

 リナレスは、しかし、すぐに体勢を立て直す。3回以降はジャブを効果的に決めて、モラレスを追い回す。そしてこの回終盤、無理やり押し込んできたモラレスに右ショートをカウンターしてダウンを奪う。モラレスはここまで27戦(19勝8KO4敗4分)で一度のストップ負けがないタフネス自慢だったが、ダメージは大きかった。つんのめるように倒れ込み、立ち上がるのもやっとだ。

 そして4回のフィニッシュはなお鮮烈だ。ロープ際に追い込んでおいて打ち込んだ右ショート。フォローの左フックがかすめると、モラレスはピンと体を硬直させた後、ぐしゃりと崩れ落ちた。何とか立とうとしたが、レフェリーのトーマス・テイラーはそのままカウントアウトして、戦いは終わった。

「左まぶたの傷は大したことない。今日は勝ち方がよかった。日本でのトレーニングが生きた。右のタイミングを思い出せたのが一番の収穫。大きなチャンスが来そうなので、頑張ってまた世界チャンピオンになる」

 リナレスは久々に会心の笑顔を見せた。

まだ無冠ながら、ガルシアの人気は爆発的だ

ガルシアは1万超観客総立ちのワンパンチKO勝ち

 リナレスとの対決が噂されるライアン・ガルシアは、あるいはリナレス以上のセンセーショナルなKO勝ちだった。2度の世界挑戦の経験を持つフランシスコ・フォンセカ(ニカラグア)とのライト級12回戦を、わずか80秒、一撃パンチで片づけた。

 好戦的なフォンセカに対して、長身のガルシアは慎重に距離を取って、右のオーバーハンド、左ヒックを狙う。それでも頭を下げ、右を打ちながら距離を潰してくるニカラグア人に、何発目かの左フックが直撃。インサイドからきれいにアゴを打ち抜いたこの一発で、フォンセカは大きくはじけ飛んで大の字に。駆け寄ったレフェリーのラウル・カイズ・シニアは、フォンセカのうつろな目を見て、即座に試合終了を宣言した。

 会場のホンダセンターに詰めかけた1万310人の観客も熱狂させた21歳のガルシアはこれで20戦全勝17KO。右パンチのフォーム、全体のバランス感にやや頼りなさは残るが、それがまた人気を呼ぶのか、女性ファンの支持率も圧倒的だという。言うことも、すでに大物だ。

「最初から、そんなに時間がかかる(戦い)とは思わなかった。最後のパンチはシュガー・レイ・ロビンソンのビデオを見て研究したんだ。小さなフェイントをかけておいての左フックだよね」

 ロビンソンは20世紀最高とも言われる大ボクサー。1940年だから50年代に42連勝、88連勝と勝ちまくって世界ウェルター級、ミドル級のチャンピオンになっている。伝説の英雄が作り出したその境地に手が届いたと言わんばかりだガルシアのコメントだった。

 リナレスの負傷で、5月にも実現かと言われた両雄の対決は微妙になったが、いずれにしろ、この両者に戦いに勝ち抜いたほうが、ライト級の頂点に大きく近づくことになる。

文◎宮崎正博 写真◎ゲッティ イメージズ

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