日本スーパーバンタム級2位、大森将平(ウォズ)が12日、東京・後楽園ホールでダニー・タムピピ(フィリピン)に5回1分18秒TKO勝ち。昨年8月、勅使河原弘晶(輪島スポーツ)に敗れて以来の再起戦を飾った。
写真上=守りの固いフィリピン人に手を焼きながらも、大森(右)は戦いをコントロールし続けた
この日、大森が出場したのは賞金マッチ5回戦。初回KOが5万円。あとはラウンドを重ねるごとに1万ずつ減っていく。つまり、手にした賞金は1万円になる。もちろん、大森にとっては取るに足らない余禄に過ぎない。
かつて世界王座にも挑んだこともあるこの26歳には、何が何でも勝って、次につなげないテーマがある。
「どう考えても、前の試合、負ける相手(勅使河原)ではなかったと今でも思います。それを証明していくには自信を積み重ねるしかありません」
昨年8月の勅使河原との戦いは、サバイバル戦とも言われた。初の世界挑戦、2017年4月のWBO世界バンタム級タイトルマッチ、自身は苦しい減量に耐え抜いて臨みながら、ウェイトオーバーしたチャンピオンにさんざんに打ち込まれてのTKO負け。そんな大森がもう一度、世界挑戦への手がかりをつかむには、絶対に落とせない戦いだった。
一方の勅使河原は長い下積みを抜け出して、ようやくキャリアに勢いがついたころ。ただ、世界への手がかりは一向に見えない。過去の実績で上回る大森に敗れることがあれば、もう這い上がることはできなかったはず。
そんな両者の戦いに大森は負けた。内容も悪い。勅使河原のプレッシャーに飲まれ、ボクシングのバランスを失い、疲弊した末にレフェリーストップを食らった。だれもが、大森の今後に大きな疑問符をふった戦いではあった。
それでも再び戦うというのなら、大森はだれをも納得させられる内容を提示しなければならない。
対戦者との関係でフェザー級の体でリングに上がった大森の動きは、前戦とは格段に切れていた。サウスポースタンスからの右フックで、初回からタムピピをたじろがせる。だが、仕留めきれない。やはりサウスポーのタムピピが意外にやりずらかった。徹底したカウンターアタックで対してきたのだ。両腕でがっちりとガードを固め、対戦者に打たせながら、間欠的にビッグパンチをねらってくる。その守りも固い。ボディを効かせ、手数で圧倒しながら、だんだんと展開は淡泊になっていった。
迎えたラストラウンド。大森は逆に攻めさせる。タムピピにスキができるのを待った。そして、左ストレートのダブル。フィリピン人が後退するのを追って、左ストレート、さらに深く体を沈めて突き上げる右フック。コーナーにくぎ付けになったタムピピにレフェリーがストップをかけた。
「負けたら終わりという意識が強すぎて、それが出てしまいました。どうしても安全策をとってしまって。それに相手も打たれ強かった。いい左が入ったのに倒せませんでした」
手早く取材対応を切り上げた大森はシャワーも浴びずに、午後9時東京駅発の新幹線で自宅とジムのある京都に帰っていった。
反省の弁に塗られたコメントだったが、大森の表情に屈託はなかった。慎重にでもしっかりと勝ち切れば明日はきっと拓けると信じているのだろう。それだけの手ごたえがあったということだ。24戦21勝(16KO)3敗。タムピピは22戦9勝(5KO)11敗2分。
文◎宮崎正博 写真◎馬場高志
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